「SF的にいう高周波ブレードってヤツですね」
「紫苑、また戻ってきたのか…」
翡翠の横には薄紫色に輝く小型カメラが宙に浮いていた。
翡翠はというと、彼が駆けつけた時には既に琥珀は20機のDAと戦闘中だったのだ。
しかも彼女は連中を圧倒していたので参戦する気が失せたのだった。
「戦術は悪く無いのですが、どうやらDAに関しては素人だったみたいですね」
「…それにしても、近頃の技術の進歩は凄まじいな」
翡翠はDAが装備している高周波ブレードに目をつける。
約1年前に初めてアメリカのDAと対峙した時はただの刀剣だった。
それが今では刀剣に高周波という付加がついているのだ。
いくら琥珀のプロテクトスーツでも一撃喰らったら掠り傷だけでは済まなそうだ。
戦争が世界の科学技術を促進させるというのも強ち間違いではないのかもしれない。
「このままだと、世界からSFというジャンルが消える日も近いかもしれませんね」
紫苑はしみじみと呟きながら琥珀の健闘ぶりを見つめている。
「GG計画…」
翡翠は徐に呟く。
それに反応する様にカメラの焦点が琥珀から翡翠へと移る。
「奴らの計画の目的は世界の科学技術の進歩だけなのか?」
GG計画は翡翠や琥珀などの存在を生み出した組織が企てている計画である。
本州明け渡しの原因となったテロや在日中国人10人の犯行などという事実の捏造などは彼らの仕業であると翡翠は考えていた。
幼少時代に彼らの研究所で過ごした翡翠には彼ら思想が分かっている。
とにかく彼らは戦争を支持する一派だったのだ。
「翡翠様、それは単純すぎると思います」
難しい表情を浮かべる翡翠に紫苑は自分の疑問を彼にぶつける。
「彼らは翡翠様や琥珀大姉様…そして私達、Glaivezのような今の世にとって規格外な存在を生み出す程の技術を持っています。科学技術の進歩だけなら彼らは既に今の段階で目標を達成できている筈です。それなのに何故…」
「世界征服とかだったら単純でいいのに…」
琥珀の声に翡翠と紫苑は後ろを振り向く。
「憂さ晴らしは終わったのか?」
琥珀は夥しい量の返り血を受けている。
「人聞きの悪い事を言わないでくれるかな」
琥珀が仮面をとると琥珀の髪の色が元の黒へと戻る。
「お疲れ様です、琥珀大姉様」
「うむ…」
琥珀はもう紫苑に対して怒っていないが、何だか浮かばれない顔をしている。
「早く基地内の探査を済ませて帰るぞ」
翡翠は琥珀の背中を軽く叩くと基地内へと歩いていった。