一人になった僕は思索にふける。勿論、かのなっきーを籠絡する為に必要な経費についてである。
例えば、彼女に豪華なプレセントを毎日送りつけるという作戦。これには多大な費用がかかるだろう。僕の懐事情では諦めざるを得ない。
あるいは、彼女に一日中付きまとい、印象を擦り込むという作戦。これはなかなか経済的だ。素知らぬ顔をして彼女と同じ乗り物に乗り込んでしまえば、移動費用はほとんどかからない筈。
だがしかし、僕は彼女の家を知らない。探偵に調べてもらう方法もなくはないのだが、それでは結局費用がかかってしまう。
ううん、中々難しい。僕はどうすれば彼女を籠絡できるのか。
「なにを難しい顔しとんねん」
「あ、中村さん」
考え込んでいた僕に声をかけたのは、中村レイさん。驚くぐらい胸のない彼女は、よく男に間違われている。中村くんとかに。
「自分、こんな言葉しっとるか? 下手の考え休むに似たりってな。まさに今の自分にぴったりやな」
「失礼だな。自分だって胸がないくせに」
「なんやそれ、今関係あらへんやろ」
彼女が目角を立てて怒るのを、僕は目を皿にして返した。彼女の胸を探してあげようというのだ。優しい僕に彼女はもうめろめろである。
「そうか」
僕は誰にともなく呟く。目の前では彼女が訝しげな表情をしてこちらを見ているが、どうでもいい。中村さんなんて所詮、なっきーの足元にも及ばない人間なのだ。
そう。
なっきーに僕の優しい部分をとことん見せてあげればいい。僕はそんな簡単なことにたった今気付いた。赤い羽根換算で約二千枚の僕の優しさをとめどなく見せ続ければ、彼女も僕にめろめろになるに違いない。