小説『がんばって短編『光』『殺人鬼の…』『この道は…』』
作者:maruzhiye(aaa)

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 ガラクタは広がりきった。ガラクタの荒野が広がり、ほこりが風に吹かれている。
 ガラクタの山の中から、一匹の小動物のようにひょっこりと助手が顔を出した。
「はかせ―――――!はかせ―――――……う、うう、ぐすん……」
 やぶれた袖口で涙を拭いながら、助手はガラクタの中から這いだした。遠くに傾いた四角い箱がある。だらだらと昆虫の触手のようなものが垂れ下がっている。見覚えのある箱だった。助手は血の流れ落ちる足を引きづって箱に近づいた。
「う、嘘発見器だ!」
「……み、みつけたのか?」
「は、はかせ!?どこです!?どこにいるんです!?」
「ここだ」
 博士は嘘発見器の下敷きになっていた。
「さあ、早くここから出してくれ」
「博士、よかった……!」
 助手は嘘発見器を力いっぱい持ち上げた。博士はなんとか這い出ると、懐から地理の教科書を出した。
「さあ、この地理の教科書を嘘発見器にかけてみるぞ」
「はい!うれしい!」
 おいおい……。助手の彼女がうれしさのあまり博士に抱きつくことは今までに何度となくあったことだった。そのたびに博士は彼女のバストのサイズはいくつなんだろう?と思う、聞くに聞けないこの思いをせっかくだから聞いてみるのもいいだろう。
「き、君のバストのサイズはいったいいくつなんだ?」
「え、そ、そんなの恥ずかしくって言えるわけないじゃありませんか、しいていうなら後のお楽しみです」
 なるほど……、お楽しみは後ほどだ。
 博士は嘘発見器の触手を地理の教科書に撒きつけるとスイッチを押した。
「いいか、この地理の教科書が焦る、冷や汗をかく、脈拍がいじょうに早くなる。そうなればこっちのもだ、ここのところの針が異様に振れるはずなんだ」
「……ふれませんね」助手はいぶかしげに博士をみつめた。
「……お、おかしいな。……わ、わたしは嘘などついていないぞ!!」
「そ、そんな!博士が嘘だなんて!!きっと嘘発見器が嘘を!」
「そうだな、教科書が嘘をつく時代だ!嘘発見器が嘘をついてもなんの不思議もない!このガラクタめ!」
 博士は嘘発見器を蹴り上げた。火花が飛びちり、針が異様に振れ始める。
「博士!嘘発見器が白状しています!」
「やっぱりそうだったか!この嘘つき嘘発見器め!!」
 博士が最後に力いっぱい蹴り上げると、奇妙な電子音とともに嘘発見器は停止した。
「はあ……行こうか、百聞は一見にしかずだ。マルコ・ポーロも旅をした。ローマにいってみようじゃないか……、見ろ、くだらない。ガラクタばかりの世界だ。……わたしが作った世界なのだよ。行き着く先などありはしない……。もし、あるとすれば……、そこは行き止まりだ……」

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