小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

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「ただいまー」

「ただいま」

「おかえり!」

ドタバタと音を立てながら、ララが突っ込んできた。
いつも元気だよな、お前は。
ついでに頭を撫でまわす。

「…お兄ちゃん」

袖を美柑に引っ張られた。

「ん、えへへ」

頭を差し出す美柑も撫でる。
ずいぶんと嬉しそうな顔しちゃって。

「ララ、これから晩飯の準備だ」

「リトの手料理?」

「ああ。だから大人しく待ってろよ」

「うん!あ、ゲームやってていい?」

「待っているならな。じゃあ美柑、取りかかろうか」

「まかせて!」

久しぶりになるが、腕が鈍ってなかったらいいなぁ。





「おいしい!ほんとにリトって料理上手なんだ!」

次々と胃に収めていくララ。
よく噛んで、しっかり味わえ。

「むぅ。相変わらずおいしい」

対照的に、じっくりと噛み締める美柑。
そんなに差があるとは思えないが……いつか完全に追い越されるんだろうけどさ。

「そんな難しい顔して食べるなよ。始めて数年に負けたら流石にショックだ」

「でも、母さんは…」

「あれは無し。それに、あれには美柑も関係してるだろ」

今では母さんはよく出張に行っているが、昔は親父が家にいられる時しか行ってなかった。
それでも二人の予定がズレるときもあるわけで。
親父はリトがいるなら大丈夫だ!って笑ってたけど、母さんは子供たちだけで留守番なんかさせれない!なんて言ってるから、子供に家事で負けてるのに?って本音をこぼしてしまったのが悪かった。
さらに隣で美柑も頷いていたのが決め手だったらしく、半泣きで出かけて行った。

「何の話?お母さんって、リトと美柑の?」

「実はね、お兄ちゃんが…」

「美柑、これ上手く出来たと思うから食べてくれ」

「んぐ!?」

しゃべられる前に口封じ。適当に箸で掴んだ料理を美柑に食べさせる。
あまり人様に話せる内容じゃないぞ。

「ずるーい!リト、私には?」

「わかったわかった。どれが食べたい?」

「えーとねぇ…」

「お兄ちゃん、私ももう一回!」

「はいはい」

なんとなく親鳥がヒナにエサをやる気分……親鳥って飯食えないのか?
コウテイペンギンの雄の子育ては過酷らしいし。

「お兄ちゃんにもやってあげる。はい、あーん」

「リト!私のもあーん!」

「なぁ、出来ればバラバラに食べたいんだが」

モノにもよるけど、味の違う二つは不味いと思うぞ。

「ならこれは?」

「これなら大丈夫でしょ?」

同じおかずを箸で摘みながら迫ってくる二人。

「そうだな。大丈夫だから、そんなに迫ってくるなムグ!」

しゃべってる途中に入れるのは危ない。
そう学んだ晩飯だった。

-10-
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