小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「あー…」

浴槽で手足を伸ばして、体が癒されていく。
暑い日でも、熱い風呂はホッとする。

「お兄ちゃん、入るよ?」

ぼー…としてると、タオルを巻いた美柑が入ってきた。
まだ少し顔が赤い。

「ほら、立ってないで美柑も浸かろう」

「う、うん…」

かけ湯をしてから、おずおずと美柑が浸かっていく。
なぜか真正面から抱きつくように。

「なぁ、美柑。この体制は…」

「……ダメ、かな?」

流石に、ちょっと戸惑われる。
でもまあ。

「特別だ」

今日は家族サービスのための日。
我が儘くらいきいてやる。

「…いつもなら、断るのに」

「今日はそういう日だl。なんでもきいてやるぞ?」

「なら…」

「…美柑さん?お顔が近いです」

「お兄ちゃん……」

「やべぇ。顔が動かない」

両手でがっちりと掴んで固定されている
言った手前、無理矢理ほどく訳にもいかない。

「そうだ、こういうときに言うことがあったんだ」

赤くなっている顔を近づけたまま、美柑が止まった。
こんな状況で何を言うつもりだ。

「お兄ちゃん」

「はい」

一拍おいて一言。

「いただきます」





「あれ?リト、美柑どうかしたの?」

「限界を越えたんだろ」

「どういうこと?ペケはわかる?」

「私に聞かれましても…」

美柑は、ソファに伏してぴくりとも動かない。
あのあと、風呂から上がってすぐに倒れ込んだ。
始めは手足をバタバタさせていたが、もう力尽きてしまったようだ。

「美柑は俺がやっとくから、ララはもう寝なさい」

「はーい!おやすみ!」

「おやすみ」

寝る前なのにテンションの高い。
まあ、お淑やかなララってのも違和感があるか。

「さて」

ララが上がるのを見送った後、美柑に向き直る。

「おーい、美柑さん。いつまでそうしてんだ」

「………」

無反応。
今回はよっぽど応えたらしい。
仕方ないな。

「よっ」

「ひゃ!?」

強制連行といきますか。
ひっくり返して持ち上げる。
お姫様抱っこっていうんだっけ?

「こらこら。暴れると落ちる」

無言でジタバタ暴れるな。
抱えたまま、美柑の部屋まで連れて行く。
階段は危ないと諦めたのか、赤い顔をそらして大人しくなった。

「着いたぞ。ベットまで運ぶか?」

「大丈夫…」

「そうか。ならおやすみなさい」

「…おやすみなさい」

逃げるように部屋に消えていった。
明日には戻ってるだろう。

-12-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




To LOVEる -とらぶる- アニメイラスト集 Cuties! (To LOVEる -とらぶる- アニメイラスト集) (愛蔵版コミックス) (ジャンプコミックス)
新品 \2400
中古 \253
(参考価格:\2400)