小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

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「んで、遅れた訳だ。このシスコン」

「妹思いと言ってくれ。それか家族思い」

「美柑ちゃんが……かな?」

「兄思いの妹を持って嬉しい限りだ」

「おにいちゃん、一般的には無いよ」

「なっ!?」

カルチャーショック。
放課後、三人娘に朝の一コマを話したら孤立無援になってしまった。

「それより」

「あ、話題変えた」

「うるさいリサ。それより、さっさと仕事終わらそう」

「うん」

「じゃあ日誌書いてくれ。俺は……花の水替えかな」

なんとなく目についた花瓶。
替えて損もしないし、気になったからな。

「リトもマメだねぇ」

「クラスで水替えやってる男子って、おにいちゃんくらいじゃない?」

「…中学の時もよくしてたね」

中学か……忙しくてあんまり学校に行ってなかったな。
変な知り合いが増えだした時だし。
流石に、星を巡ってますなんて学校に言えなかったが。

「あっれ〜春菜ぁ?」

「おにいちゃんのこと、そんな時から見てたの?」

からかうネタを目敏く見つけ出した二人。
仲裁に入るのも藪蛇になりそうなので聞こえないふりをしておこう。

「そ、そういう訳じゃ…」

「なら、どういう訳なのかなぁ?」

「それは…その…」

「ほらほら、言っちゃいなよ」

「たまたま、偶然見ただけで…」

「へぇ〜たまたま…ねぇ?」

「偶然で、『よく』なんて…ねぇ?」

「あ、うー……」

赤くなってオーバーヒート寸前の春菜。

「ストーップ。そこまでが限界だ」

「ちぇ。もう少しで…」

「うんうん。惜しかったね」

「〜〜〜!私ゴミ捨ててくる!!」

顔を耳まで赤くしたまま、ゴミ箱を掴んで走り出す。
そんなに慌てると……。

「あっ」

「っと。危ないだろ?」

自分の足に引っかかって転けそうになるとは思わなかった。
ドジだなぁと思いながら、倒れる前に回り込んで受け止める。

「あ、ありがとう」

「どういたしまして。落ち着いてやろうな?」

「…うん」

まぁ、怪我をしなくて良かった。
俯いた春菜の頭を、つい撫でてしまった。
最近、ララの影響で美柑も撫でていたからか?

「いつまで二人は抱き合ってるの!」

「おにいちゃん、離れよう?」

「あ、ああ。春菜、ゴミを集めないと」

「………」

無反応?
俯いて顔が見えないが、赤い耳は見えている。

「あ〜…リト、箒持ってきて」

「春菜は?」

「おにいちゃん、今はそっとしといてあげて」

よくわからんが、言われた通りにロッカーに向かう。
二人がそう言ってるならそうしたほうがいいんだろう。

「はぁ。幸せそうな顔しちゃって」

「悪く言えば、だらしない顔だけどね」

「……羨ましい」

「ホントに」

後ろからの会話は聞こえなかった。
その後、再起動した春菜と仕事を終わらせ下校。
リサに今度の休み買い物に付き合えと言われたり、ミオにはバイトに来いと誘いのような命令が。
二人の機嫌が治るならお安いご用だな。
他愛もない話を分かれ道まで喋り合った。

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