小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

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「リトー!」

放課後、挨拶が終わってすぐにララが向かってきた。

「ガッコ、案内して?」

子供のように、キラキラと輝く瞳。
溢れ出ている好奇心が、より一層子供っぽい。

「ララ、残念だが予定が入った。他の誰かに……」

「え〜〜〜!」

むくれるララの頭に手を置きながら、周りを見渡す。
男子はもちろん選択肢にあり得ない。
鼻息荒く、虎視眈々と狙っている阿呆共に任せられるか。
まともな所に連れて行かないだろう。
女子は数人だけ。
春菜、リサ、ミオ。
他にもいるが、筆頭はこの三人。

「春菜、頼めるか?」

「うん、大丈夫。それに、学級委員だから」

学級委員の仕事に、転校生の学校案内は入って無いだろううに。
真面目なのか優しいのか……両方だな。

「じゃあ早く行こう!いってきまーす!!

「ら、ララさん!そんなに引っ張ったら…きゃっ!?」

「気をつけていってらっしゃい」

わかったー、と春菜を引きずるように走り出すララ。
…春菜、がんばれ。

「ねぇ〜リト〜?」

「なんで私たちの方を見なかったのかな〜?」

後ろからリサミオがのしかかってきた。
重くはないが、動きにくいぞ。

「深い意味はない。あえて言うなら日頃の行いだ」

場をかき回すリサ、悪乗りするミオ、二人を止める春菜。
十中八九、春菜を選ぶだろう。

「そりゃあ、良いとは言えないけどさ…。少しは迷ってくれたって……」

「そうだよね…。こんなにおにいちゃんを思ってるのに!」

「こんなに愛してるのに!」

背後から突然の告白。
だが、まぁ…

「そういう台詞は、笑いを堪えながら言うものじゃない。昨日のドラマか?」

「あったりー!もう少しリアクションしろよ〜」

「反応薄い!…ていうか、おにいちゃんも見てたんだ」

「美柑に付き合わされてな」

主人公を巡って、義妹と女友達が争う修羅場ドラマ。
昨日の内容は、主人公が二人以外の人を好きになるという、どうしようもない話。
美柑に悪影響がないか心配しながら、結局は全部見てしまった。

「っと。そろそろ行ってくる。二人とも早く帰れよ」

「わかってるって。いってらっしゃい」

「いってらっしゃ〜い!」

軽く手を振り返して、目的の場所へ。
いつもの頼まれごとだけどな。

-19-
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