小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

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「じゃじゃーん!ひろびろバスタイムくん!!」

本当にちょっとで帰ってきたララが持っていたのは、球体のメカ。
名前からして、空間を広げるんだろう。

「三人で入れる広さならいいんだよね?」

「…わかったわかった。三人で入ろう」

嬉しそうに「「いえーい!」」とハイタッチをしている二人。
風呂のためにそんなに頑張れるか…。

「ほら、風呂の準備してこい」

「うん!お兄ちゃん、先に入ってもいいけど、出たらダメだからね」

「絶対だよ!」

「わかってるって」

繰り返し念を押してくるほど、俺は信用ないのか。
まぁ、広い風呂に入れるなら何でもいいや。






「「おおー」」

浴室に入った途端、つい兄妹そろって感嘆の声を上げてしまった。
見慣れた我が家の風呂が、驚くほど広がっている。

「どう?これなら問題ないよね?」

「そうだな。三人では余裕すぎる位だ。すごいなララ」

「うんうん!ララさんすごーい!!」

今回は失敗しているところも無さそう。
ララを誉めちぎるのも仕方ない。

「さて、さっさと体を洗ってしまおう」

「あ、リト?その、あ、洗って欲しいなー、と…」

断られるだろうと思っているのか、歯切れが悪い。
変なところで遠慮するやつだな。

「……いいよ。ほら、椅子に座れ。美柑も洗ってやるから」

「…ホントに?髪だけとかなしだよ?」

「ホントに」

「珍しい…。お兄ちゃんがいつもより優しくなるなんて」

「うん。いつもなら、絶対に断ってるよね」

「たまにはな。今は溢れんばかりの優しさを持っている」

久しぶりの広い風呂で、テンションが上がってるんだ。
最近は、温泉や銭湯に行ってなかったからな。

「目、瞑ってろよ」

「うん」

まずはララから。
長い髪を、なるべく丁寧に洗っていく。

「ふふ」

「どうした?笑い出して」

「人に洗ってもらうのって気持ちいいね」

「それは良かった。どこかかゆいところは?」

「んーん。だいじょーぶだよー」

ララがとろけてきたから、そろそろ終了かな。

「流すぞ。ちゃんと目を閉じてるか?」

「ん」

ざばー、と頭からお湯をかけると、艶が増した綺麗な髪に。
さぁ、次だ。

「お兄ちゃん、こっちも」

ララほどでないが、長めの美柑の髪を洗う。

「どうだ?」

「ん〜。気持ちいいよ。久しぶりかな?お兄ちゃんに洗ってもらうの」

「そういえばそうだな。一緒に入るのはあったのに」

たぶん、数年前になるんじゃないか?
美柑が一人で入りだしてからは、自分で洗うようになってたし。

「よし。流すぞー」

「うん」

さっきと一緒で、頭からお湯をざばー。
綺麗になった髪を見て、満足げな気持ちになってくる。

「次は…」

「私たちでリトを洗ってあげる!」

「お兄ちゃんも座って」

「いや、俺は…」

「いいからいいから。リトは座っててね」

「任せてよ。ほら、目を閉じてー」

お湯をかけられると、そのまま美柑に頭を洗われる。
…確かに、人にやって貰うと気持ちいいかもしれない。

「じゃあ、私は体を洗う!」

目を閉じていてわからないが、ララが前に立っている気配はする。
少しずつ距離が近づいて……。

「ララ」

「なに?」

「タオルならそこに置いてあるハズだが?」

「えー。これなら私も洗えて、いっせきにちょーだよ」

「…そうだよね。なら、私は背中も洗おうかな」

椅子に座りながら、前後から挟まれる。
…二人がいいなら、別にいいか。

「あ、リト。ちょっと立って」

「…そのまま続けるのか?」

「「もちろん」」

………洗われました。

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