小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「いちについてー。よーい」

パーン!、とピストルがなった瞬間、ララさんがすごい速さで走り出した。
と、思ったらゴール。

「………は、速すぎて、わからなかった」

測定係の子が計れないのも無理無いよ。
本当にあっという間だったから。

「すっごーい!流石宇宙人!」

「宇宙人ってみんなこんななの?」

「世界一だね!」

100メートルを世界記録なんて目じゃないくらいのタイムで走りきったララさん。
…やっぱり宇宙人なんだね。

「おー!ララちぃすごーい!」

「おにいちゃんといい勝負じゃない?」

「あれ、リサミオ。リトくん見に行ってたんじゃなかったの?」

この前のサッカーで活躍していたリトくんを見逃したから、今度は絶対に見る!って言ってたのに。

「あー…、それがさ……」

「ゴール前から動くなって、センセーにおにいちゃん言われたんだって」

前回の活躍を見れば仕方ない、かな?
終わるころには、相手チームの目が虚ろだったし。

「それでもゴール決めてたけどな」

「たぶん、どこからでも決めちゃうね!」

サッカーの方を見てみると、遠目でも分かる人の固まり。
攻めてきた猿山くんからリトくんがあっさりとボールを取っているところ。
それをシュートした後は、空を見上げて動かない。

「…やる気、無いね」

「「うん」」

キーンコーンカーン

「お!やっと授業終わったか」

「もうお腹ペコペコだよ〜」

「二人とも、早く片付けてリトくんとご飯食べよう」

今日のお弁当のおかずはいつもより手間をかけたから、リトくんも美味しいって言ってくれるはず。
……それでも、リトくんや美柑ちゃんには敵わないんだけどね。

「はぁ…」

「どうした?いきなりため息ついて」

「幸せが逃げていくよ?」

「ちょっと、ある兄妹の料理の腕がすごく良いなって……」

女の子としては好きな人にご飯を作ってあげたいけど、好きな人の方が料理が上手だと自信なくすよ…。
釣り合わないんじゃないかなって思えてきて。

「確かに落ち込んでくるけど、おにいちゃんは気にしてないと思うよ?」

「そうだけど…」

「それに、リサなんて前に失敗した料理をおにいちゃんに食べさせたんだから!」

「ちょっとまって!何で知ってんの!?」

きゃー!なんて言いながら逃げ回るミオを追いかけるリサ。
それは初耳。

「なんで隠してたの?」

「そのあと〜、おにいちゃんに二人っきりでわっぷ!?」

「言わなくていいから!」

「んーんー!」

あのリサがミオを止めてまで言いたくない事……すっごく気になる。
リトくんが関係してることなら尚更。

「ほらミオ、私が抑えてる間に!」

「春菜!?待った待った!ホントにダメなんだって!」

「ぷはっ。春菜って、おにいちゃんが絡むとおかしくなるよね」

「そんなことはいいから、早く教えて!」

「はいはい。リサはねぇ、おにいちゃんに二人っきりで料理を教えてもらってるんだってー」

「二人っきり……」

「し・か・も、出来た料理をおにいちゃんに『あーん』までしてもらってるんだよね!」

「『あーん』」

「な…あ…うあ…」

耳まで真っ赤になりながらパクパク口を動かすだけのリサ。
へー、私知らなかったなー。

「は、春菜、くるし…」

「締まってる!すっごく締まってる!リサが危ないから!?」

「え?あわわ!?ごめんねリサ!」

「けほっけほっ。大丈夫大丈夫。っていうかミオ!何で知ってんの!」

「何でって…おにいちゃんに聞いたら素直に答えてくれたよ。リサと何してるの?って」

「あー…」

リトくんらしいけど、もうちょっと乙女心を…。
でも、ライバルがこれ以上増えるのは困っちゃうし。

「フフ、フフフフフ……」

突然笑い出したリサからすぐに離れる。
今までの経験上、こういう時は即刻退避。

「リサさん?その笑い方は流石に引いてしまいますよ?」

「うるさーーい!!人の幸せを暴いた報いを受けろーーー!」

「きゃーーーーーーー!?」

あ、みんな集まってるから行かないと。
それにしても、リトくんと二人っきりでお料理かぁ…恥ずかしいけど、新婚さんみたいでいいなぁ。
……よし、今日は特訓しよう!早く追いつくためにも。
そのためには、帰りに材料を買わないと。
まだ騒いでる二人を置いて、少し足早に集合場所へ。
何を作ろうかなぁ〜。

-26-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




To LOVEる -とらぶる- アニメイラスト集 Cuties! (To LOVEる -とらぶる- アニメイラスト集) (愛蔵版コミックス) (ジャンプコミックス)
新品 \2400
中古 \253
(参考価格:\2400)