「リトー、一緒にご飯食べよ!!」
昼休みになってすぐ、お弁当を抱えたララが現れた。
「おう。そこら辺の席借りてこい」
「あ、おにいちゃん、私たちも一緒に食べるよ。ほら、リサも」
「わかってるけど……」
いつものメンバーが集まってきたが、リサのテンションがかなり低い。
三時間目まではいつも通りだったのに。
「リサ、どうしたの?」
「体調でも悪いのか?」
「あー、二人とも、今はそっとしといてあげて。一時的なものだから」
ミオがそう言うなら大丈夫なんだろうけど……。
ふむ。
「ひゃあ!?」
「あ、冷たかったか?ならすまん」
「そんなことはないけど…って近い近い!」
「いや、顔が赤くなってきたから。頬も熱いし」
リサの頬にあてた手から、だんだんと熱くなっているのがよくわかる。
ほんとに大丈夫なのか?
「う〜〜〜!」
「こらこらララちぃ、落ち着いて」
「だってぇ〜」
「ここは我慢して、後でお願いした方が…」
「…! わかったよミオ!」
後ろで何か言っているけど気にしない。
下手に触れればどうなるか何度も経験した。
「そういえば春菜は?」
いつもはそろそろ止めに入ってくるのに、教室には見あたらない。
「春菜なら、さっき佐清先生と一緒に部室の方へ歩いていくの見たよ」
見渡して探していると、親切なクラスメートが教えてくれた。
まぁ、部活関係の用事だろう。
とりあえず昼飯の準備をしていると、ケータイが震えだした。
「すまん。ちょっと席外す。遅かったら先に食べてていいから」
「頼まれ事? がんばってねー」
「い、いってらっしゃい…」
「いってらっしゃーい!」
三人に見送られながら廊下へ。
昼飯、食えないかもしれないな。
「もしもし」
「こんにちは、結城リト君」
「佐清?なんの用だよ」
「おや、よく声だけでわかったね。でも、そんなことはどうでもいいんだ」
「用件は?」
佐清とは、電話で話すほどの仲じゃないと思っていたんだが。
他の教師と同じで、たまに用事を頼まれる事はあるが、それ以外は接点が少ない。
「デビルーク星の姫君の事で話がある…。今すぐ会えるかな…。断ったら君の大切な彼女が大変な事に…」
…なるほど。
「ああ、わかった。すぐに行く」
「待ってるよ」
来ることがわかっていた面倒事がやってきた。
溜め息をついて、逃げた幸せを逃さないために深呼吸。
重い足で、いつもより少し早く歩いて部室へ向かった。