小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

そんなことがあった五分後。
迫りくる巨腕を避け、捕らわれている春菜を救うべく何度も立ち向かっていく、謎の宇宙人との死闘……なんてのはなかった。

「他に仲間は?」

「………」

「黙るな。喋れ」

「…いま…せん」

結構はやく行動した割に、期待はずれもいいとこだ。
最初に遭った婚約者候補だから、少しだけ、ほんの少しだけ期待していたのに。
部室に着いたらドアを蹴り破って入り、さっさと縛られていた人質の春菜を救出。
ついでに呆気にとられていた宇宙人を、不意打ち気味に蹴りつける。
そのままグリグリと踏みつけると、巨体が正体らしき小柄な姿に変わったが、それでも踏み続ける。

「おい、言い残す事はあるか?」

「あ…り……ま…せ……ん…」

わざわざ探す手間がなくなったし、ザスティンにでも届けておくか。
ポケットから紐を取り出して縛り付ける。
後は連絡入れておけば持っていってくれるだろう。
さて、抱えたままの春菜を保健室に運ばないと。





で、春菜をベッドに寝かして保険の先生とお話。

「つまり、眠り姫を理由に授業をサボった訳ね」

「あーあー、聞こえません」

「子供っぽい真似をするなら、せめて表情をつけなさい。無表情は変よ」

「以後気をつける」

だからその手の掛かる子供を見る目をやめろ。
頭をなでようとするな。

「避けなくてもいいじゃない。あなたと私の中でしょ?」

「中じゃなくて仲だ。どんな中だよ」

「それは……」

「頬を赤らめるな。服をはだけるな。近寄ってくるな」

「もう、注文が多いのね。それとも、そういうプレイかしら?」

「未来永劫あり得ない」

「わかったわ……ノーマルがいいのね?さあ、今すぐにまぐわいましょう」

「ちょっとそこに座れ桃色思考」

いつからこんな風になったんだ。
最初は…………2時間ぐらいまともだった。

「これでいいかしら?」

「ああ、それで首輪をしてなかったら完璧だ」

どっから取り出した。さっきまで付けてなかっただろ。
ご丁寧に、ネームプレートまで付いてるし。

「はい、リードよ」

「いらん」

「つれないご主人様ね」

「…あぁ、そう」

疲れる。
久しぶりの再会だってのに、なんでこんなにテンション高いんだよ。

「いいから仕事してろ。それと首輪も外しとけ、俺が誤解をうける」

「……ほんと、つれないわね」

伏し目がちで呟く声が聞こえてしまった。
……はぁ。

「なぁ」

「なによ、その気になったかしら?」

「あー…、今更なんだが」

「どうしたの?」

「また会えて良かったよ」

「………」

「せめて何か言ってくれないか」

気恥ずかしくなってくるから。

「え、ええ。その、私も、また会えて嬉しいわよ」

「そっか」

「だから…」

「ん?」

いきなり真剣な顔になってどうした。
座り込んだままの見上げる目とし視線を合わせる。

「まぐわいましょう」

「いやだ」

こいつもへこたれない奴だな。

「きゃう!?」

せっかくの再会なんだから、今回はデコピンで許してやる。

-28-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ToLOVEる 金色の闇 (1/8スケールPVC塗装済み完成品)
新品 \17480
中古 \12980
(参考価格:\6500)