そんなことがあった五分後。
迫りくる巨腕を避け、捕らわれている春菜を救うべく何度も立ち向かっていく、謎の宇宙人との死闘……なんてのはなかった。
「他に仲間は?」
「………」
「黙るな。喋れ」
「…いま…せん」
結構はやく行動した割に、期待はずれもいいとこだ。
最初に遭った婚約者候補だから、少しだけ、ほんの少しだけ期待していたのに。
部室に着いたらドアを蹴り破って入り、さっさと縛られていた人質の春菜を救出。
ついでに呆気にとられていた宇宙人を、不意打ち気味に蹴りつける。
そのままグリグリと踏みつけると、巨体が正体らしき小柄な姿に変わったが、それでも踏み続ける。
「おい、言い残す事はあるか?」
「あ…り……ま…せ……ん…」
わざわざ探す手間がなくなったし、ザスティンにでも届けておくか。
ポケットから紐を取り出して縛り付ける。
後は連絡入れておけば持っていってくれるだろう。
さて、抱えたままの春菜を保健室に運ばないと。
で、春菜をベッドに寝かして保険の先生とお話。
「つまり、眠り姫を理由に授業をサボった訳ね」
「あーあー、聞こえません」
「子供っぽい真似をするなら、せめて表情をつけなさい。無表情は変よ」
「以後気をつける」
だからその手の掛かる子供を見る目をやめろ。
頭をなでようとするな。
「避けなくてもいいじゃない。あなたと私の中でしょ?」
「中じゃなくて仲だ。どんな中だよ」
「それは……」
「頬を赤らめるな。服をはだけるな。近寄ってくるな」
「もう、注文が多いのね。それとも、そういうプレイかしら?」
「未来永劫あり得ない」
「わかったわ……ノーマルがいいのね?さあ、今すぐにまぐわいましょう」
「ちょっとそこに座れ桃色思考」
いつからこんな風になったんだ。
最初は…………2時間ぐらいまともだった。
「これでいいかしら?」
「ああ、それで首輪をしてなかったら完璧だ」
どっから取り出した。さっきまで付けてなかっただろ。
ご丁寧に、ネームプレートまで付いてるし。
「はい、リードよ」
「いらん」
「つれないご主人様ね」
「…あぁ、そう」
疲れる。
久しぶりの再会だってのに、なんでこんなにテンション高いんだよ。
「いいから仕事してろ。それと首輪も外しとけ、俺が誤解をうける」
「……ほんと、つれないわね」
伏し目がちで呟く声が聞こえてしまった。
……はぁ。
「なぁ」
「なによ、その気になったかしら?」
「あー…、今更なんだが」
「どうしたの?」
「また会えて良かったよ」
「………」
「せめて何か言ってくれないか」
気恥ずかしくなってくるから。
「え、ええ。その、私も、また会えて嬉しいわよ」
「そっか」
「だから…」
「ん?」
いきなり真剣な顔になってどうした。
座り込んだままの見上げる目とし視線を合わせる。
「まぐわいましょう」
「いやだ」
こいつもへこたれない奴だな。
「きゃう!?」
せっかくの再会なんだから、今回はデコピンで許してやる。