小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「ただいま」

午後からはいつも通りに寝過ごして放課後。三人娘はそれぞれ部活やアルバイトがあるらしいが、特に用事の無い俺は帰宅。
しかし、ミオの呼び方は変わらないんだろうか。懐かれていると思って受け入れるべきなのかなー。

「おかえりお兄ちゃん。お父さんは、今日も帰り遅くなるんだって」

「おーう」

リビングのソファに座っていた美柑に、手を振りながら答える。
相変わらず締め切りギリギリなのか、あの親父は。また暇見つけて手伝いに行こう。部屋も汚くなってそうだし。

「そうだ美柑、今日は一緒にご飯作るか」

「ほんとに!?」

「あぁ、いつも弁当作ってもらってるからな。それに、久しぶりだろ?」

「うん!」

随分と嬉しそうな顔しちゃって。家族サービスが足りてなかったのか?
これからは気をつけよう。

「先に風呂入ってくる」

「いってらっしゃい」





「ふぅ」

あー、一日の疲れが取れるー。
風呂は人生の洗濯。これが無ければ明日を迎えられない……のは、言いすぎか。
高校生だって、疲れることがあるんだ、ほとんど寝てただけだけど。

「晩飯、何作ろう」

美柑に台所を取られてから久しぶりの料理だ、気合入れないと。
確か、冷蔵庫の中には…あー…近いうちに買い物行かないとダメだな。
美柑を連れて商店街回ってみるのもいいな。ついさっき、家族サービスが足りてないと反省したばかりだ、好きな物買ってあげよう。

「んあ?」

そう考えていると、風呂から泡が出てきた。
家の風呂に泡が出る機能は無かったはずなのに、なぜかボコボコ泡が出てくる。
…なんか、こんなのを昔に見たことがあるような気がする。
いつだったっけ。中学の時か、もうちょっと前だったような…小学生の頃、風呂場で……。
あぁ、思い出した。

爆音

とっさに耳を塞いだが、風呂場に反響してうるさい。爆発の衝撃で風呂のお湯がこぼれてしまった、勿体ないな。

「んーーっ。脱出成功っ!」

「ララか」

「あ、リトだーっ!」

風呂の中から現れたのは、なぜか全裸な女の子。ワープでも使ったか。
名前はララ・サタリン・デビルーク。銀河系を統べるデビルーク星の第一王女…だったはず。
小学校高学年の時のことだから、あんまり覚えてない。いろいろ慌ただしかったし。

「久しぶりだな」

「ほんとだね。いきなり帰っちゃうんだもん」

「お前の発明品の失敗で、だ」

「でも、また会えてよかった!」

豪快に抱きついてくるララ。
服を着なさ……風呂なら別にいいか。
でも、そんなに広くない浴槽がいっぱいだ。

「何で来たんだ?」

「え?そりゃあ、えーと…」

「家出」

「うっ!?……あたり」

「脱出って言ってたからな」

相変わらずのバカ親みたいだ。あれだけ変なことはするなと言い聞かせたのに。
早く奥さんと隠居生活したいのか?

「お兄ちゃんっ!?さっき…の音……は…」

爆発した音が聞こえたのか、慌しく美柑が風呂場に飛び込んできた。なぜか服を脱ぎかけだけど。

「美柑は始めましてだな。こいつはララ。宇宙人だ」

「よろしくね!」

ララの頭に手を乗せながら自己紹介。元気いっぱいの挨拶には花丸をあげよう。

「………」

「美柑?」

「?」

無反応は寂しいぞー。俯いてて表情が伺えないのがちょっと怖いし。

「「?」」

ララと顔を見合わせて首を傾げる。
こいつが分かるワケないよな。

「えへへ〜」

乗せたままの手で頭をなでてみる。
おぉ!サラサラして、良い感じの撫で心地。

「………こ」

「こ」

「こ?」

「この泥棒猫っ!!!」

風呂場に美柑の叫びが響いた。
……テレビ以外で初めて聞いたよ、そのセリフ。実際に言われたララは、意味がわかってない顔しているけど。

「お兄ちゃんから離れて!!」

「えっ、ちょっ、まって!?」

「早く離れてよ!」

癇癪をおこしたように、ララを力尽くで引き剥がそうとしている美柑。
久しぶりにそんな美柑を見たなぁ。懐かしい。

「美柑、落ち着け」

「でもっ!!」

「とりあえず、リビングに移ろう」

風呂場は狭い。

-3-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




もっと To LOVEる-とらぶる- Blu-ray BOX〈初回限定生産〉
新品 \18453
中古 \13960
(参考価格:\25200)