「で?貴女は、お兄ちゃんと、どういう関係なの?」
風呂から出たあと服を着て、全員リビングに移動。ララは服が無いので、とりあえずバスタオルを巻いている。
んで、着いた第一声が美柑。いつもより数段低い美柑の声は、ちょっとした恐怖を感じてしまう。
「私とリトは〜…」
そんなことをララは全く気にしていない。図太いのか、ノーテンキなのか。
……後者だな。
「将来を誓い合った仲だよ!」
炎を油で消火しようとしたようだ。煽りも追加しながら。
「そんな!?」
「一方的な、が抜けている」
ショックでまた美柑が暴れる前に修正を入れておく。
俺から言ったことは…たぶん無い。勢いとか、流れとかで言ってしまった気もするけど。
言い訳させてもらうと、当時は小学生だったんだ。
「よかった。お兄ちゃんにそんな人がいるわけ無いよね」
ホッと、胸をなで下ろす美柑。若干失礼な発言だ。
そりゃあ、事実だけど。
「え〜!?『三人とも俺が貰ってやるぜー!』って言ってくれたのに」
「お兄ちゃんはそんなこと言わない!ていうか、三人って誰!?」
こちらに火の粉が飛んできた。切羽詰った美柑が迫ってくる。
あ〜、何かの発明品で喋ったような、喋ってないような。
「三人ってのはだな、こいつとその」
「ララ様ー!」
人のセリフをぶった切って、いきなり白い物体が乱入。
どっから…あぁ、窓開けっ放しじゃ無いか。
「ペケ!良かった、無事に脱出できたんだ!」
「ハイ。地球と聞いて、すぐにリト様の家を探しましたよ」
「わー!流石ペケだね!」
再会を喜ぶ二人……一人と一体。
いろいろと言いたいが…まぁ、話の流れを変えてくれて助かった。
「お兄ちゃん、なんか変なのが…」
怒りが収まったらしい美柑が、警戒したような声で傍によって来た。
「あれは、ララが造った『万能コスチュームロボット』。まぁ、動くタンス程度の認識でいい」
「んぅ。お兄ちゃんがそう言うなら」
安心させようと、頭を撫でながら説明。
おぉ!美柑もララに引けをとらない撫で心地……知ってたけど。
「じゃあペケ、よろしくー」
「了解!」
タオルを投げ捨て、ペケを発動。恥じらいの欠片も無い。
便利だよな、ペケ。服代かからないし、着替える必要ないし。でも、充電切れたら裸なんだよな。
「じゃーん!!」
いつものドレスらしい物に早変わり。
恥ずかしくないのだろうか、あの服は。
「かわいー!そんな服になるんだ!」
「他にもいろんなのがあるよ!どう?リト、似合ってる?」
「ああ、似合ってるよ」
似合ってるには似合ってる。でも、町中を歩けなさそうなのはいただけない。
美柑とファッション話をしだしたララを見て、一抹の不安が頭をよぎった。
ララって、地球のこと全然分かってないんじゃ…?
「時にララ様。これからどうなさるおつもりで?」
「え?パパに言って、リトの家に住めるようにしてもらうよ?」
いつ決まったんだと言おうとしたときに、窓から再度の侵入者。しかも二人。
やっぱり窓は閉めておかないと。虫が入るかもしれないし。
「…全く、困ったお方だ。地球を出るまでは、手足を縛ってでもあなたの自由を封じておくべきだった」
困った奴の所は同意。自分勝手なのは遺伝だろうけど。
「お兄ちゃん、また変な人たちが……」
こいつら、美柑を怖がらせやがって。
あのバカには、またお仕置きしないと。
「おい、部下AとB。いろいろ言いたいことはあるが、まず一つ」
「なんだ、地球人」
「邪魔するならば……」
「お兄ちゃん?」
隊長さん、部下の教育ぐらいちゃんとしろよ。バカ親よりは、ちょっとまともなんだから。
五十歩と百歩は、差が無いようでも意外とあるもんだ。
「人様の家に土足で上がるな」
簡潔にいうと、近寄って殴る。這入ってきた窓から部下二人を殴り飛ばす。
あーあ、リビングに砂が入ってるじゃないか。落としてから来いよ。
「この地球人が!!」
「まさか……おい、まて!あの方は…」
キレた部下Aがまた這入ってくる。
人の話を聞かん連中だ。あの星の特徴か?
「靴を脱げと」
アッパーで体を浮かせ。
「言ってるだろ」
腹に回し蹴りをたたき込む。庭へ逆戻り。
ありゃ、のびちゃってるよ、部下A改めマウル。
「大変、ご無礼をいたしました!」
部下B改めブワッツが、綺麗な直角で頭を下げる。
思い出してもらえてなにより。思い出すまで話し合う気でいたけど、拳で。