小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

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「ただいまー」

「おじゃましまーす」

買い物が恙無く終わり、帰ろうとしたところで春菜にお呼ばれした。
なんでも、保健室に運んでくれたり買い物に付き合って貰ったお礼がしたいとのこと。
相変わらず律儀なことで。

「お姉ちゃん?……いないのかな」

「秋穂さんなら、たぶん仕事だろ」

「そうなんだ。…あれ? 何でリトくんがお姉ちゃん知ってるの?」

「ああ、前に来たときに知り合ったんだ。ファッション雑誌の仕事だろ? うちの母親も似たような事してるから、たまに相談受けてる」

付け足しておくと、相談だけじゃなく愚痴も聞かされているんだが。
妹に弱い所を見られたくないんだろうけど、仕事終わりの時間に電話してくるのは勘弁して欲しい。
もういい大人なんだから、高校生に泣きつくなよ。

「そういえば、年下のコがどうとか言ってたような……」

考え込みだした春菜の背を押してリビングへ。

「よし! お姉ちゃんを問いつめよう」

「待て春菜」

携帯電話を取り出した春菜の腕を掴んで止める。
流石に今の時間は仕事してるだろう。
……また愚痴を言われたくないからじゃないぞ。

「ほら、それよりも料理だ。おいしいの期待してるからな」

春菜の中で葛藤があったようで、数秒悩んでから顔を上げた。

「頑張って作ってくるから、楽しみにしててね」

笑顔で台所へ向かっていく春菜だが、後でお姉ちゃんから聞き出そうと小声で言ったのは無視しよう。
すみません秋穂さん、あなたの妹さんは強かになりました。今度差し入れしますから、深夜に電話しないでください。
窓から見える星に願ってみたが、まぁ叶わない願いだな。

-30-
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