小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

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「おっはようリト!」

「ララさん! お兄ちゃんとなんで一緒に寝てるのっ!しかも裸!?」

おはようございます。
美柑とララの掛け合いを目覚ましに、随分と余裕のある時間に起床。
昨日は、あれから直接バカ親と話すために連絡した。話し合いの結果、ララを家出ではなく、研修で地球に来ていることに。
ほかにも何かゴチャゴチャ言ってたが黙殺した。
つまり、ララはこれから家に居候することになったわけだ。

「あー、おはよう」

「お兄ちゃんからも言ってよ、服くらい着てって」

「えー?だってー……」

「とりあえず、部屋から出てくれ。着替える」

見られながら着替える趣味はない。

「私も?」

「真っ先にお前が出るべきだ」

ララが不思議そうに首を傾げているが、なんで自分は大丈夫と思ったんだ。
兄妹ならまだ……いや、ダメだな。妹の前で着替えるのは、流石に恥ずかしい。

「ほら、ララさん。お兄ちゃんの邪魔しない」

「…はーい。ペケー、行くよー」

「ハイ!」

ペケは素直だな。ララもペケの3…いや、5分の1でも見習ってくれれば……。
まぁ、今後の成長に期待しようか。





「「いただきます」」

「いっただきまーす!」

鮭と卵焼きとみそ汁、それとご飯。実に日本人らしい。
美柑も腕が上がってきたなぁ。負けないようにレパートリーを増やそう。

「おいしー!美柑って料理上手なんだね!」

「ありがと。でも、お兄ちゃんの方が上手だよ」

「そうか?この卵焼きとか、もう負けてる気がするぞ」

俺のは味付けで多少の下手さをカバーしてるだけ。こんなに綺麗に焼けない。

「へぇー。リトって料理上手だったんだぁ」

「あれ?ララさんとお兄ちゃんは知り合いなんじゃないの?」

「ん?…ああ。ララと会ったのは小学校の高学年。料理を覚えだした頃だったな」

道に迷って、気付いたら知らない森の中。
我ながら、どうやって星を越えたんだろう。それに、ララと会わなかったらどうなっていたことやら。

「ねえねえ」

セピア色の思い出を辿っていると、隣のララに服を引っ張られた。

「どうかしたか?」

「リトの手料理食べてみたい!」

力いっぱいに手を上げるララ。
元気なのはいいことだが、食事中に挙手はしないほうがいいぞ。

「いつか、な。美柑が作ってくれるし、なかなか機会が無いんだ」

「そういえば、昨日は一緒に晩ご飯作る約束だったのに…」

残念そうにため息を吐く美柑。
ララとペケが来たり、部下ABが乗り込んできたり。掃除やバカ親に連絡などの後始末が終わったときには、とっくに夜も更けてた。
疲れた俺たちは、そのまま就寝。

「そう落ち込むな。そうだな…今夜辺りにでもしよう」

「約束だよ!何があってもだから!絶対に!!」

「おう」

気迫が凄まじい。少し引いてしまった。
深刻なまでに家族サービスが足りてなかったんだな。

「今晩、リトのご飯食べれるの!?」

「ああ。だからってワケじゃないが、大人しく待ってろよ?」

「もっちろん!」

「ならよし。美柑、帰りに食材買って帰ろうか」

「うん!…って、時間が!?」

走るほどではないが、ゆっくり歩けるほどでもない時間。
急いでご飯を食べなければ。

「「ごちそうさま」」

「おそまつさまです」

……本気で料理の腕を鍛えなおそう。兄の威厳のために。

-5-
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