小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

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さっさとと午前授業も終わり、ただ今昼休み。
学生が午後への活力を補う時間。友人と席を並べて、お弁当を広げているクラスメイトたち。

「あ〜〜……」

そんなときに俺はたれていた。だって、昼飯持って無いし。
しかも、今日に限って教師たちが指名してくる。普段は寝ているのに、珍しく起きていたからだとさ。
気持ちを切り替えて真面目になろうなんて思ってない。今後のララについて考えてただけ。
ララが来たって事は、必然その周辺の人が来ることに…最悪あの馬鹿父親も来ることになる可能性も考えてみると、想像だけで頭痛がしてきた。

「おいリト!」

「あ?」

「スッゲーかわいー女の子が、おめーの事探してんぞ!!」

「………」

頭痛の種がやってきた。





「キミかわいいねー。演劇部?」

「オ…オレらが、そのリトっての探すの手伝ってやるよ」

見つけることはできたんだが、早速絡まれやがって。
通行人が見ている方向に走れば、結構あっさりとたどり着くことができた。
あんな目立つドレス?で来るからだ。

「その必要はない」

「リト!!」

駆け寄って抱きついてくるララ。柔らかい感触と堅い感触があたる。
ふにゅとガツッ!ってきた。

「これ! 持ってきた…あ!?」

そりゃあ、あんなに思いっきり抱きついたらぐちゃぐちゃになってるだろうな…お弁当。
わざわざ家に帰って持ってきてくれたのか。

「ありがとな」

今にも泣きそうなララの頭を撫でる。
昨日も触ったが、本当に良い撫で心地。流石はお姫様、この感触はクセになりそうだ。

「…うん!」

嬉しそうにはにかむララ。
おお!これから起こることを忘れさせてくれそうな癒しだな。

「お、おいリト。誰だよ、そのコ!」

ほっとかれて焦れた野次馬代表の猿山。
はてさてどうやってこの場を誤魔化そう。ヘタなこと言ったら面倒になる、絶対。
居候か下宿は…いや、親戚でもいけるか?

「私?私はリトのお嫁さんでーす!」

何て言おうか悩んでいたのに、ララが抱きつきながら楽しげに宣言。
出来れば静かにしていて欲しかったと、頭の片隅で思ってしまうのは仕方ないじゃないか。

「「「なにーーーーっ!!?」」」

絶叫する野次馬共。
ヘタなこと言ったなぁ…わかっていたけど。
ララにそういうのを期待する事が駄目、無駄。

「リト、お前…西連寺や籾岡、沢田だけでは飽きたらず…」

人聞きの悪いな、このサル。そんなことだから、いつまでたっても人間になれないんだ。
だから後ろの見知らぬ方々も、あまり血走った目で睨むなよ。

「こいつの自称だ。俺は納得していない」

「そんな!?リト、私を貰ってくれるって言ってくれたのに…」

あれはウソだったの? そう言って、悲しげな顔をするララ。
どこの悲劇のヒロインだ。そんな真似をどこで覚えた。母親か、母親なのか。
あっさりと乗せられた野次馬のボルテージが上がっていく。

「そいつを捕まえろーーーーっ!!」

うっぜぇ。
暑苦しい男に寄られても嬉しくない。

「逃げる…のはムリそうだな」

「?」

後ろからも迫ってきているのはなぜだろう?
危ないことは無いだろうが、万が一にもケガをさせないために首をかしげるお姫様を庇うような立ち位置に。
気が重いが仕方ない。溜息で気持ちを切り替えて。

「来い、野郎共。返り討ちだ」

-7-
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