小説『始まりはいつも唐突で』
作者:孤狐()

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「と、いうことがあったんだ」

「へえ〜」

「怪我はしてない?」

「やっぱりおにいちゃんは強かったんだね!」

あの後、襲い掛かってくる野郎共を片っ端から倒していった。
教師がなんか言っていたが、校長を買しゅ…説得して無罪に。あんなのでも校長なんだな。
ララは色々と問題があるから帰らせた。

「それで、男子があんなに廊下で積み重なってたんだ」

もぐもぐと弁当をつつくリサが、思い出し笑いをしながら言う。
通行の邪魔だからとすぐに片づけられたが、なかなかの出来だったと自負している。
力作を思い頷きながら食べていると、前に座っているいる春菜の箸が止まった。

「ミオ?やっぱりって、リトくんがケンカしてるところ見たことあるの?」

「うん!私のアルバイト先でちょっとね〜」

ね?と見られても、あんまり思い出したくない。
あれ以来、ミオのバイト先には行きにくいし、近くを通るだけでも神経を使うのに。

「リトくんって、そんなにケンカしてたの?」

「んぐ!?……あー…その…」

高校に入ってからはあんまりやらないようにしてたんだけど。
言っても構わないんだが、言いにくいというか、気恥ずかしいというか。

「高校に入ったら、妹ちゃんの為にやらないつもりだったんだよな」

「これ以上心配をかけるのは…って、おにいちゃんがいってたよ」

そんな葛藤は、このリサミオコンビには通じなかった。

「な、なんで二人がそんなこと知ってるの!?」

「なんでって…な?」

「遊んだ時に同じ質問をしたからだよ」

確かそのときは、春菜は用事があっていなかった…ような気が。
あ、矛先がこっちを向いた。

「リトくん!!」

「はい」

「他には無いの!二人には話してることは!」

「いや、無い…と思う」

その日はたくさん質問がありすぎて、実はあんまり覚えてない。
記憶に残っている中では、春菜も知っている答ばかり。

「あれ?リト、本当の事を言わないと」

ニヤニヤしたリサがしなだれかかってくる。

「おにいちゃん、あの夜を忘れちゃったんだ」

ミオも逆から寄ってきた。
……周りの目が痛いんだが。

「あの夜…三人でなんて…リトくんの不潔!!」

いきなり何を言いやがりますか。
ほら、周りの視線が更に厳しくなった。

「まったくわからんが、春菜の思っている事は誤解だ」

「ご、五回!?」

「…すまん、リサミオ。後は任せた」

顔を真っ赤にした春菜には、言葉が通じなくなってしまった。
お手上げになり弁当に逃げる。

「ほらほら、春菜も落ち着いて」

「そうだよ。別におにいちゃんとヤっ」

「ミオストップ!」

いつも道理の、騒がしい昼休み。
これから更に騒々しくなるんだろうと、ちょっとした現実逃避。

-8-
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