小説『[完結]180秒のサイレンス【掌編集】』
作者:九路間 二四()

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第六話 「保守的」



むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。
おじいさんもおばあさんもたいへんに保守的なせいかくでした。
あるひ、おじいさんはやまへしばかりに、おばあさんはかわへせんたくにでかけました。

おばあさんがかわでせんたくをはじめると、おおきなももが、どんぶらこどんぶらこ、とながれてきました。
「おおきいももですねぇ」
保守的なおばあさんは、みたままのかんそうをいって、ゆっくりとながれていくももを、じっとみまもりました。

いっぽう、たけやぶにわけいったおじいさんは、きんいろにかがやくたけをみつけました。
「おお、きみがわるい」
保守的なおじいさんは、おばけをみたようなかおをして、ぴかぴかとひかるたけにちかづくこともなく、そのばをあとにしました。

とおくのやまにひがおちて、からすが「かあー」となきました。
いえにかえってきたおじいさんは、おばあさんにいいました。
「ばあさん、こどもがいないとさびしいねぇ」
「そうですねぇ」
「どこかに、りっぱなあかんぼうがおちてやしないかねぇ」
「そうですねぇ」
保守的なおじいさんとおばあさんは、へいぼんながらしあわせにくらしましたとさ。
めでたし、めでたし。




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