小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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≪旧魔王派シャルバと神風の裏切り≫


最早ぺんぺん草ドコロか雑草すら生えない程に荒廃しきったフィールド

新と朱乃、一誠とリアスの砲撃は死神の大群を全滅させ、残るは英雄派のジークフリート、ゲオルク、そして最上級死神プルートのみとなっていた

しかし、この偉業の対価はあまりに大きかった……

何故なら――――リアスと朱乃の乳が既に最小サイズにまで縮んでしまっていたからだ

2人が乳力を送り続けた結果、自慢の乳は見る影も無かった

休めばいずれ元に戻るらしいが、それでもその姿は見るに耐えない

「これじゃ、小猫ちゃんと変わらないじゃないか……!」

「リアスと朱乃のボインが、短時間で無インになっちまオブッ!」

ホテルの30階にある後衛の部屋から、小猫が新の頭部目掛けて椅子を投げ飛ばした

恐るべし地獄耳

プルートと距離を取ったアザゼルが新達のもとに降り立ち、プルートも同様に英雄派サイドに降り立つ

「さて、ジークフリート、ゲオルク、チェックメイトだな」

「……相変わらずバカげた攻撃力だな、赤龍帝、闇皇」

そう言いながら肩で息をするゲオルク

駐車場の結界装置はまだ壊れておらず、新と一誠の連続砲撃でも結界を消す事は出来なかったが……ゲオルクも守備に全力を費やしていたせいで息切れが激しい

装置を覆う結界も歪み出していた

上位神滅具(ロンギヌス)の所有者だろうと限界はある

流石のジークフリートも苦渋に満ちた表情を浮かべた――――その時だった

バチッ!バジッ!

快音が鳴り響き、見上げると空間に歪みが生じて穴が空きつつあった

新しい敵の参上かと思えば、何故かジークフリート達も訝しげな表情を浮かべていた

次元に穴を空けて侵入してきたのは軽鎧(ライト・アーマー)にマントと言う出で立ちの男

その者は新達とジークフリート達の間に降り立つ

「初めまして、赤龍帝と闇皇。――――それと久しいな、ヴァーリ」

男は新と一誠を睨み付け、ホテル上階の窓際にいるヴァーリも睨み付ける

その男を見たアザゼルが目を細めた

「シャルバ……ベルゼブブ。旧魔王派のトップか」

「シャルバって、神風と組んでディオドラを陰で操ってた野郎か」

ジークフリートが一歩前に出る

「……シャルバ、報告は受けていたけど、まさか本当に独断で動いているとはね」

「やあ、ジークフリート。貴公らには色々と世話になった。闇人の『ビショップ』がバックアップしてくれたお陰で、我が野望も達成出来そうだ。貴公らの実験に協力したのが些か不満だったがな」

「それで、ここに来た理由は?」

「なーに、宣戦布告をと思ってね」

大胆不敵にそう言うシャルバ

醜悪な笑みを浮かべながらマントを翻すと――――そこから1人の少年が姿を現す

しかし、その少年の目は陰っており、操られている様子だった

「ん?あいつは確か……京都でアンチモンスター創ってた奴じゃねぇか」

「そうだ!確か神滅具(ロンギヌス)『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の子だ!でも、なんで旧魔王派のシャルバと一緒にいるんだ?」

新と一誠が疑問を抱く中、ジークフリートとゲオルクはシャルバと共にいる少年を見て驚愕していた

「……レオナルド!」

「シャルバ、その子を何故ここに連れてきている?いや、何故貴様と一緒にいるのだ!?レオナルドは別作戦に当たっていた筈だ!連れ出してきたのか!?」

「そうだよ〜♪」

何者かの声が突如聞こえ、シャルバ付近の空間に亀裂が走り、そこからまた誰かが現れる

――――『チェス』の『ビショップ』神風だった

「……ッ!貴様は!」

「キヒヒヒッ♪あの後、直ぐにシャルバっちと打ち合わせしたのさ。人間界で行動している英雄派を襲って、コイツを拉致ろうってね♪」

「何だと!?貴様、裏切るのかッ!」

「裏切るぅぅ?ヘッ、ボクは裏切った事なんて一回も無いよ〜?ただ単に君達を利用しただ・け♪んでもって、今もこのレオナルドを利用させてもらうから」

「その通りだよ。――――こんな風にね!」

シャルバが手元に禍々しいオーラの魔方陣を展開するとレオナルドにそれを近付け、魔方陣の悪魔文字を高速で動かす

途端にレオナルドが叫んだ

「うわぁぁぁぁぁああああああああああああああっ!」

絶叫を上げると同時に影が広がっていき、フィールド全体を埋め尽くす程の規模となっていく

その場で空中に浮き始めた神風とシャルバが哄笑を上げる

「ふはははははははっ!『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』とはとても素晴らしく、理想的な能力だ!しかも彼はアンチモンスターを作るのに特化していると言うではないか!英雄派の行動を調べ、人間界で別動隊と共に動いていた彼を拉致してきたのだよ!別動隊の英雄派構成員に多少抵抗されたので殺してしまったがね!」

「キャハハハハハッ!感謝しなよ、シャルバっち〜?これもボクが言わなきゃ成し得なかったんだからね。じゃあ創ってもらおうじゃないか!シャルバっちの怨念が混ざった、悪魔どもを殺せるアンチモンスターをッ!」

ズオォォォォォォ……ッ

影が大きく波打ち始め、巨大な何かが頭部から姿を現していく

規格外に巨大な頭部、胴体、腕、その全てを支える脚

フィールドを埋め尽くす程に広がった影から生み出されたのは――――200メートル以上ある超巨大モンスターだった

『ゴガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!』

鼓膜を破らんばかりの咆哮を上げるモンスター

『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』は所有者の力量次第でどんな魔獣でも生み出せる

更に出現したばかりのモンスターより、サイズが一回り小さいモンスターが同じ影から何体も生み出される

「一番デカいのはアレか!キヒヒヒヒヒッ!これは景気付けだよ!受け取れィッ!」

神風は手元に黒い何かを出現させ、それを一番デカいモンスターに向かって投擲

巨大モンスターにぶつかる寸前、黒い物体――――ブラック・ウィドーズが脚を開いて正体を明らかにした

ブラック・ウィドーズは頭部にまで駆け上がり、8つの脚を突き刺してモンスターの体内に侵入した

すると、モンスターが口を開いて痙攣を起こし始める

刹那、腹部に巨大な眼球が1つ浮かび上がり、その周りから8つの蜘蛛の脚が突き破ってきた

蜘蛛の脚が不気味に蠢く

「キヒヒヒヒヒッ!良いね良いね〜ッ!史上最強のアンチモンスター誕生ってかァ!それじゃあ、お次はこうだッ!」

神風が勢い良く手を突き出すと、怪物達の足下に巨大な転移型魔方陣が出現した

シャルバが哄笑しながら叫ぶ

「フハハハハハハッ!今からこの魔獣達を冥界に転移させて、暴れてもらう!これだけの規模のアンチモンスターだ、さぞかし冥界の悪魔を滅ぼしてくれるだろう!」

魔方陣が輝きを発し、アンチモンスター軍が転移の光に包まれていく

「止めろォォォォッ!」

アザゼルの指示のもと、新達は巨大モンスターに攻撃を放つが……全くダメージを与えられず

アンチモンスターの群れは全て転移型魔方陣の中に消えていってしまった

グオォォォォォォォン……

アンチモンスターが消えた途端、フィールドが不穏な音を立て始めた

空に亀裂が幾つも入り、建造物が大きく崩壊していく

恐らく、強制的なアンチモンスター製造と転移の影響にフィールドが耐えきれなかったのだろう

ゲオルクがジークフリートに叫ぶ

「装置がもう保たん!シャルバと神風め、所有者のキャパシティを超える無理な能力発現をさせたのか!」

「……仕方無い、頃合いかな。レオナルドを回収して一旦退こうか。プルート、あなたも――――」

ジークフリートが突然言葉を止める

……プルートは既にこの場から消えていた

「……そうか、神風とシャルバに影で協力したのは……。あの骸骨神の考えそうな事だよ。嫌がらせの為なら、手段を選ばずと言う訳だね。『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の強制的な禁手(バランス・ブレイカー)の方法も奴らに教えたのか……?あんな一瞬だけの雑な禁手(バランス・ブレイカー)だなんてどれ程の犠牲と悪影響が出るか分かったものではない。僕達はゆっくりとレオナルドの力を高めようとしていたのにね……。これでは、この子は……」

ゲオルクとジークフリートは気絶したレオナルドを回収して、そのまま霧と共にフィールドから消えていった

ドォォォンッ!ドォォォンッ!

今度はホテルの方から爆音が鳴り響いてきた

見上げると、シャルバが後衛のヴァーリに攻撃を加えていた

今のヴァーリはサマエルの呪いを受けた影響で満足に動けず、防御するので精一杯だった

「どうしどうした!ヴァーリィィィィィィッ!ご自慢の魔力と!白龍皇の力は!どうしたと言うのだァァァァァッ!フハハハハハハッ!所詮、人と混じった雑種風情が、真の魔王に勝てる道理が無いッ!」

「……他者の力を借りてまで魔王を語るお前には言われたくはない」

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!最後に勝てば良いのだよ!さて、私が欲しいのはまだあるのだ!」

シャルバがオーフィスに手を向けると、オーフィスの体に悪魔文字を表現した螺旋状の魔力が浮かび、縄の様に絡み付いた

「ほう!情報通りだ!今のオーフィスは力が不安定であり、今の私でも捕らえやすいと!このオーフィスは真なる魔王の協力者への土産だ!私に再び『蛇』も与えてもらおうか!」

「――――そうはいかぬ」

捕縛されたオーフィスの前に歩み出たのは『初代キング』

『魔剣創造(ソード・バース)』の力で足下から魔剣を創り、それを取ってシャルバに向ける

しかし、そこへ立ちはだかるのは神風の策略だった……

「やっほ〜、『初代キング』♪まぁだそいつらクソ悪魔どもに肩入れするってのかぁい?」

「今の貴様は危険な思想と欲に満ちておる。それを止めるだけじゃ」

「ケッ!やっっっぱり今の『初代キング』はクソにも劣ってるよ。――――不純物に憑依したせいだよねぇぇぇ……ッ」

神風が意味深な言葉を放ち、手元に魔方陣を展開する

小型の魔方陣が赤と黒の混じった輝きを発し始めた刹那――――『初代キング』に異変が起こる

「……ッ!?な、何じゃ……!?『怨念の邪眼(ネメシス・サイト)』が勝手に……!?」

「キヒヒヒヒヒッ!『初代キング』、実は今日まで君の事を調べさせてもらったよ。なんで魔人態と人間態で性別が違うのかようやく理解出来た。『初代キング』、お前の正体は……生物全てが必ず持つ負の感情が集結した――――実体を持たない『闇』その物だ!そしてその姿は!『闇皇の鎧』を人間ごときに渡すと言う失態を引き起こした――――『初代クイーン』の肉体だったんだ!」

神風の言葉に全員が驚愕した

『初代キング』の正体と、今の姿の正体に……

頭を混乱させている中、神風は更に続けた

「――――竜崎総司。『初代キング』の考えに賛同しなかった『初代クイーン』は鎧に憑依した『初代キング』を取り払い、その男に『闇皇の鎧』を渡した!それに怒り狂った『初代キング』は『初代クイーン』に制裁を下したのさ!『クイーン』の力を奪い、人間でも闇人でもなくなった彼女に憑依すると言う罰をね!何故か!?それは竜崎総司の弱味を作る為!無理矢理『初代キング』に変わった『初代クイーン』を封印出来なくする為に!そして今の人格は……長く封印されていた影響で出来上がった、『邪』の部分を取り除いた性格。謂わば、ドラグ・ソボールに出てきた太っちょ魔人プウみたいなモノさ!」

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