小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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神風が手元の魔方陣の輝きを更に強めると、『怨念の邪眼(ネメシス・サイト)』の眼球が血走りながら飛び出そうとする

「キヒヒヒヒヒッ。保険を掛けといて良かったよ。『怨念の邪眼(ネメシス・サイト)』に密かに混入したブラック・ウィドーズの力で、その『邪』の部分を分離させる!そうすれば今度こそ、正真正銘本物の『初代キング』の復活だぁッ!キャハハハハハハハァァァァァッ!」

「何だか知らねぇが、神風!テメェの思い通りにさせてたまるかッ!」

新はマントを両翼に変えて上空に飛び出していくが……先に『怨念の邪眼(ネメシス・サイト)』の準備が整ってしまった

眼球から蜘蛛の脚が生え、不快な音を立てながら分離しようとする

「さぁ、今度こそこの世に復活しろ!正真正銘本物の――――『初代キング』ゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」

ズチャッ!バリバリバリッ!

肉と血管を引き千切る音と共に眼球が黒い籠手から分離

それと同時に籠手の穴から黒い霧が漏れ出し、神風の近くに飛来する眼球を囲む様に漂う

やがて霧は眼球と同化していき――――『初代キング』魔人態の存在を作り上げていく……

次第に頭部から形を成すパーツ

遂に全身が出来上がり、今まで籠手の甲に付いていた『ネメシスの眼(まなこ)』は頭部の中心に浮かび上がる

現れたのは先程の戦いで姿を見せた骸骨ドラゴン――――しかし、その者が漂わせる気迫は圧倒的に満ちた『闇』『憎悪』『怒り』『悲しみ』『嫉み』『妬み』『恨み』と言ったあらゆる負の感情……怨念めいた感情が渦巻く

生きる者全ての邪悪を表した1つの生命体……

そう、これこそが『初代キング』の本当の姿、闇人の真祖たる姿だった

一方、偽者と化した『初代キング』――――否、憑依されていた『初代クイーン』は力を吸い取られたかの如く、膝から崩れ落ちた

新は急いで『初代クイーン』に駆け寄り、倒れた体躯を起こそうとした

「おい!おい!しっかりしろ!」

「キヒヒヒヒヒッ!『邪』の部分を無理矢理取り出したから動けないんだろうね〜!もうそいつはたった今から偽者!偽者!偽者さ!ここにいるのが本物の『初代キング』だよ!『初代キング』、今どんな気分だぁい?」

神風が訊くと『初代キング』の口がゆっくりと開かれ、不気味な吐息と共に言葉が発せられる

「……最高の気分だ。全ての欲望がようやく解き放たれる。我が欲、渇き、飢え、衝動、その全てを振り撒く時が始まりを告げたのだ!グハハハハハハハハハハハハハハハハッ!その祝辞に……余の眼前にいる胸くそ悪い存在を塵にしてくれるッ!今すぐッ!」

『初代キング』が『初代クイーン』と新に指を突きつけて高らかに宣告する

神風は手を叩きながら哄笑を上げた

「キャハハハハハハッ!マジでマジでマジで良いよ〜ッ!それでこそボクが尊敬する『初代キング』だよッ!た・だ、この疑似空間は崩壊間近だから……ボクは退散させてもらうけどね!こんな空間で死んじゃうのはゴメンだよッ!バイビ〜ッ!」

颯爽と転移魔方陣を展開し、疑似空間から脱出した神風

『初代キング』はそんな事態に目もくれず、目の前の偽者と『闇皇の鎧』所有者に敵意、殺意を向ける

便乗するようにシャルバも腹の中に募らせたモノを吐き出す

「呪いだ!これは呪いなのだ!私自身が毒となって、冥界を覆い尽くしてやる……ッ!私を拒絶した悪魔なぞ!冥界なぞ、最早用無しだッ!もうどうでも良いのだよッ!そう、冥界の覇権も支配も既にどうでも良い!フハハハハハッ!このシャルバ・ベルゼブブ、最後の力を持って、魔獣達と共にこの冥界を滅ぼす!」

「させるかよッ!」

『JET!』

一誠がドラゴンの両翼を広げて一気に詰め寄り、狂喜に包まれたシャルバは一誠に指を突きつけた

「……そうだな、貴殿が大切にしている冥界の子供も我が呪い――――魔獣どもによって全滅だよ、赤龍帝!我が呪いを浴びて苦しめ!もがけ!血反吐(ちへど)を吐きながら、のたうち回って絶息しろッ!フハハハハハッ!傑作だな!下級、中級の低俗な悪魔の子供を始め、上級悪魔のエリートの子息子女まで平等に悶死していく!ほら!これがお前達の宣う『差別の無い冥界』なのだろう?フハハハハハッ!」

「チッ、どいつもこいつもゲス野郎ばかりだな!」

こうしてる間にもフィールドの崩壊は進み、遂には空間に空いた複数の穴が瓦礫を吸い込み始めた

「もう、このフィールドは限界にゃん!今なら転移も可能だから、魔方陣を展開するわ!それで皆でここからおさらばするよ!」

ホテルの室内にいる黒歌が叫び、展開された魔方陣のもとにグレモリー眷属達が集結する

シャルバの攻撃を受けたヴァーリはアーシアから回復を受けており、『初代クイーン』は未だに動けず

哄笑を上げるシャルバ、その近くには捕らえられたままのオーフィス

逃がすまいと『初代クイーン』と新を睨み付ける『初代キング』バジュラ・バロム

新と一誠はそれぞれの敵を見た

「イッセー!転移するわ!早くこちらにいらっしゃい!」

「新さん!急がないと間に合いませんわ!」

リアスと朱乃がそう告げてくるが、呼ばれた2人は行こうとしなかった

怪訝に思うリアスと朱乃

新と一誠がメンバー全員に向かって言った

「俺、オーフィスを救います。ついでにあのシャルバもぶっ倒します」

「俺も。あいつを……『初代キング』をぶっ倒すまではここを離れねぇ」

『――――ッ!』

2人の言葉に全員が度肝を抜かれる

「僕も戦うよ!」

「新さん!1人で無茶をするのはやめてください!」

「いや、俺と一誠だけで充分だ。お前らは早く飛べ」

「皆はあの魔獣どもの脅威を冥界に伝えてくれよ。どちらにしてもフィールドはもう保たないだろう?俺と新なら鎧を着込んでいればフィールドが壊れても少しの間、次元の狭間で活動出来る筈だ。ヴァーリもそうやって次元の狭間で活動していた頃があるんだろうから。……今シャルバを見逃す事も、オーフィスを何者かの手に渡す事も出来ません」

「さっきアザゼルが言ってたろ?神風は何をしでかすか分からねぇって。奴はあの魔獣どもを冥界にけしかけるだけじゃ済まねぇ、次々と何かやらかすに決まってる。だから、それを少しでも止めてくれ。なぁに、俺も直ぐに追いついてやるさ。この――――『初代クイーン』とやらも連れてな」

これは自分にしか出来ない事だと考える赤龍帝と闇皇

ここでシャルバと『初代キング』を討たなければ確実に犠牲が増える

それは避けなければならない

「もう限界にゃん!今飛ばないと転移出来なくなるわ!」

黒歌がそう叫ぶ

「兵藤一誠」

「ヴァーリ!お前の分もシャルバに返してくる!」

一誠の意気を聞いたヴァーリは口の端を笑ませた

「イッセー!新!あとで龍門(ドラゴン・ゲート)を開き、お前らを召喚するつもりだ!それで良いんだな?」

アザゼルの提案に頷く2人

一誠はドラゴンの両翼を広げ、背中のブーストを噴かした

新も再びマントを翼に変える

「イッセー!必ず私の所に戻ってきなさい!」

「ええ、必ず戻ります!」

「新さん!必ず戻ってきてください!」

「あぁ、約束する!必ず帰る!」

新と一誠はそれだけ言い残し、それぞれの敵へと向かっていく

「一誠!絶対に死ぬなよ!」

「新こそ!死んだら許さねぇからなッ!」

赤龍帝と闇皇は分かれ、必ず仲間のもとへ帰ると言う誓いを秘め、最悪の状況下での戦いに挑んでいった……

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