小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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≪闇の権化VS災厄の龍≫


一誠、シャルバとは一際離れた上空にて

全ての闇の権化たる『初代キング』は新を睨み、新もまた『初代キング』を見据えている

尋常ならざるプレッシャーを一身に浴びて少なからず恐怖を感じているが、逃げる訳にもいかない

『初代キング』を倒して皆のもとへ帰る――――その思いでいっぱいだった

「グハハハハハハッ!ようやく邪魔な憑代(よりしろ)から出てきたと思えば、貴様のようなガキが立ちはだかるとはな。全ての闇が集まって成り立った余を、この『初代キング』であるバジュラ・バロムに敵うと傲(おご)れるのか?」

「傲る余裕なんかねぇだろうよ。お前がバカ強い事は対峙しただけで分かる。しかも、閉じ込められていたお前じゃなく……本来の力を解放したお前のな……」

「フンッ!ならば、貴様が『闇皇の鎧』を有するに相応しいとも思えぬだろう?余に勝てぬと考えているならば、その鎧を返すんだな。悪意に満ちた純粋な欲望こそ『闇皇の鎧』を使用する資格がある!」

『初代キング』が大きく手を広げて言う

新はそれに対して『初代キング』を野放しにしてはいけないと言う思いを強くした

奴に『闇皇の鎧』を渡せば再び世界が破滅に導かれてしまう

新は魔力のオーラを解放し、徐々にその質量を強めていった

「そうはいかねぇよ。テメェは大昔に世界の破滅を導きかけたんだ。かけがえの無い仲間と居場所を見つけたこの世界を――――壊されてたまるかッ!」

「……ならば、我が前より消え失せろ!悪意を持たない欲望など、闇人の王たる余が統べる世界にはいらぬわッ!」

「だったら俺は――――テメェをぶっ倒す!守りたいモノを全部、テメェみたいな脅威から守り切ってやるッ!」

新の全身から大質量のオーラが放出され、新はリュオーガ族戦で発現した『極女王(エクストリーム・クイーン)』昇格への呪文を唱え始めた

疑似空間が崩壊の一途を辿っているので時間が無い上、一気に全力でカタを付けなければ間に合わない

「我、目覚めるは災厄の運命(さだめ)を覆す闇の皇帝なり!」

『最初から災厄の力を使うか。いや……使わねば敵わないか』

「無限の闘志と不屈の魂を糧に、呪われた運命(さだめ)の道を希望の道へと変え往く!我、災厄の運命と龍の血を受け入れし極なる皇帝と成りて――――」

『無限の災厄と無限の闇、どちらが勝るか実に興味深いな!』

「汝を呪いより解き放たれた皇龍(おうりゅう)の下で無に還そう――――ッ!」

カアァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

全身から特大の閃光を迸らせ、新は『無限の災厄龍(インフェルニティ・ドラゴン)』グラファディオスの化身とも言うべき『極女王(エクストリーム・クイーン)』形態――――『無限災厄の銀龍闇皇帝(インフェルニティ・クロムディザスター・ドラゴン)』への進化を遂げた

眼前に君臨したドラゴンを見た『初代キング』は巨大な眼球を見開き、口の端を吊り上げたのち下品に笑い始めた

「グハハハハハハッ!なんと見事なオーラの塊か!己が欲望と災厄を撒き散らす龍の力の融合!余の鎧をここまで昇華させるとは、大した者よのう!流石はあの忌まわしき人間(ゴミクズ)――――竜崎総司の息子と言う訳だ!時間が無いから早々に片付けようと過らせておるか?ならば、余もそれなりに応えて――――貴様を滅ぼしてくれるッ!」

ギンッ!

『ネメシスの眼』が怪しく輝くと同時に『初代キング』の体から滲み出るオーラが複数の人型と化していく

更にその人型は『初代キング』と酷似している

手を上空に翳したり、両手を広げて構えを取ると――――

『ブーステッド・ギア、ダウンロード』『ディバイン・ディバイディング、ダウンロード』『ソード・バース、ダウンロード』『トゥルー・ロンギヌス、ダウンロード』『ナイト・リフレクション、ダウンロード』『ブレード・ブラックスミス、ダウンロード』『トゥワイス・クリティカル、ダウンロード』『バリアント・デトネイション、ダウンロード』

なんと今まで闇神器(ダークネス・ギア)がコピーしてきた神器(セイクリッド・ギア)が一挙にダウンロードされ、『初代キング』に酷似した霧はそれぞれのコピー神器(セイクリッド・ギア)を装着した

「なっ!何だそりゃ!?神器(セイクリッド・ギア)を一気に出現させやがったッ!?」

「グハハハハハハッ!どうやら闇神器(ダークネス・ギア)も余の魔力に当てられて、イレギュラーを発してしまったようだな。今までコピーしてきた神器(セイクリッド・ギア)を全て具現化させる現象にまで至ったか。まぁ、これぐらい超えなければ『闇皇の鎧』を持つ資格など無いがな!我がバジュラ・バロムの闇、欲望、破壊、殺戮、しかとその身で受けて朽ち果てるが良いッ!」

分身が新を囲うように陣形を取り、『初代キング』が吼えると同時に各種魔力攻撃を開催した

新は直ぐ様急降下して攻撃を回避するが、分身バジュラの1体が光翼を輝かせた

『Half Dimension』

空間を歪められ、圧縮の力で自由を奪われる新

更に追撃してくる分身2体は魔剣と聖剣を創った

「――――ッ!殺られてたまるかよッ!」

新は力ずくで歪められた空間から脱出し、魔剣と聖剣の押襲を両腕で止める

そのまま拳と蹴りを入れて分身(光翼装備)の所へ吹き飛ばし、口から高密度のオーラを吐き出した

オーラの奔流に飲み込まれた分身3体――――しかし、いずれも完全消滅には至らなかった

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost』

『Transfer』

そこへ分身バジュラ(赤龍帝の籠手付き)が自らの魔力を倍増させ、それを他の分身逹に譲渡した

飛び散った譲渡の塊は分身逹の力を底上げ、全員が強大な攻撃を解き放つ

「――――――ッ!」

回避が間に合わず、両翼で自らを覆うように防御態勢を取る新

8つの凄まじきオーラの奔流は銀色の体躯を持つドラゴンを飲み込み、空間を削りながら地上に落とした

土煙が晴れると、両翼を閉じていた新の姿が確認される

体の所々に焦げ痕が残り、傷から出血もしている

次々と地上に降り立つ分身バジュラ

全ての分身が降り立った直後にバジュラ本体が哄笑を上げながら降りてきた

「グハハハハハハッ!どうした。貴様の守りたい物を守る欲望とはその程度か?所詮、悪意無き欲望にそれ以上の力など宿らん。悪意を持てば更なる力を得る!他者を屈服させる圧倒的な力を!故に、この世界は全て悪意で満ちているのだ!」

「……世界は悪意で満ちているだと?テメェは最初から全部に悪意しか無いと考えてやがるのか?」

「そうであろう!悪意があるからこそ悪魔が生まれ、闇人が生まれ、戦いや殺戮が起こる!後を絶たぬ負の連鎖!その状況下でのたうち回る人間は怒り、嘆き、恨みを吐き出し、更なる負の連鎖を生む!闇人の世界もまた然り、己の欲望を貫き通してあらゆる障害を排除する、破壊する、滅ぼして頂に立つ!そうすれば誰も逆らわぬ世界が完成するのだ!」

『初代キング』の持論らしき演説を聞き、新は足腰に力を入れて立ち上がる

そして、こう言った……

「――――やっぱよ、お前って存在は哀れで悲しいな。人間の『負』から生まれて、誰も信じようとしない。同じ種族であってもだ」

「……哀れ?悲しい?意識混濁の戯れ言にしては華が無いな。言った筈だ、闇人は己の欲望のみに従う種族。仲間なんぞ必要が無い」

「だからこそだ。よく考えてみろ。お前をそうまでして甦らせたアイツは――――神風は……結局ここから逃げていったじゃねぇか。テメェを本物と言っておきながら、それ以降何もしてねぇじゃねぇか!」

新も昔、孤独だったからこそ分かる

仲間がいない感覚を……孤独に押し潰されそうになる感覚を……

立場は違えど、『初代キング』は昔の自分を表す鏡の様に思えた

新の言葉に『初代キング』は明らかな怒りを見せた

「黙れ。黙れ黙れ黙れ!黙れェッ!それがどうした!?王である余を嵌めたのならば、それはそれで素晴らしい事ではないか!自らが他者を蹴落として長の座に着きたいと願っている!立派な欲望だ!これこそ闇人の本質!本性!在るべき姿!貴様ごときに哀れと思われる筋合いは微塵も無いッ!酸いも苦いも辛いも全て受け入れる、それが欲望の王たる者の務め!責務!運命(さだめ)だ!」

「……だったら、そんな運命(さだめ)なんか終わらせてやる!俺は自分の呪われた運命を、過去を捨て去った!災いを撒く龍の力を受け入れて、一誠逹に受け入れられて……今ここにいるんだ!全ての負を無くす事は出来なくても、減らすぐらいは出来る!テメェが一身に受けた悲しみも、憎しみも、全部終わらせてやるッ!」

「思い上がるな、半端者がァッ!」

再び『ネメシスの眼』が強く怪しい輝きを発して分身バジュラに指示を与える

新目掛けて繰り出される模倣聖槍、魔剣、聖剣、波動、爆発の数々

新は全身から大質量のオーラを纏い、両翼を広げて飛び進んだ

分身バジュラの攻撃全てを意にも介さず……

腹や腕、足に突き刺さる聖槍、魔剣と聖剣の群れ

波動と爆撃が生み出す爆発をモロに食らうが、それでも分身バジュラには目も暮れなかった

ただ一点……『初代キング』本体を目指して

「――――ッ!本体を、我のみを討つつもりか!?これ程の侮辱は初めてだ!純粋な人間でもない、闇人でもない、ドラゴンでもない貴様ごときが……ッ!」

「言っただろ!俺には時間がねぇんだよッ!全部の分身をいちいち相手にしてたら間に合わねぇ!テメェ本体を討つ!」

「ハッ!だが、どうやって余を討ち滅ぼすと言うのだ!」

「……デッケェ弱点がむき出しになってんじゃねぇか!その目ん玉――――『ネメシスの眼』だッ!」

新は戦闘開始直後から目星を付けていた

『怨念の邪眼(ネメシス・サイト)』から分離した『ネメシスの眼』により、『初代キング』の邪悪な部分が露(あらわ)となって甦った

戦闘においても『ネメシスの眼』が指示を出すシグナルの役を果たしており、力の源ともなっている

時間制限が設けられているフィールドでの戦いで早急に終わらせるには……相手の弱点となりそうな部分を突くしかない

そこでバジュラ本体――――『ネメシスの眼』に狙いを定めた

「やはり『ネメシスの眼』を狙ってくるか。しかし、満身創痍の貴様が余の所まで辿り着けるか!?」

「俺はなぁ……一度交わした仲間との約束は――――絶対に守り通すって決めてんだよッ!テメェを倒して、仲間のもとに帰るッ!」

一気に距離を詰め、肉が一切無い『初代キング』の首を左手で掴み、貫手(ぬきて)の照準を『ネメシスの眼』に合わせた

一撃を当てれば勝利出来る

新は振り上げた貫手を眼球に突き刺そうとしたが……

ザシュザシュッ!

突如襲い掛かる全身の痛み――――腕や足、胴体に幾重もの魔剣および聖剣が突き刺さっていた

貫手を作った右手は剣の群れによって貫通され、両足も動きを封じられる

特に聖剣は悪魔の弱点武器にもなり、更なる激痛が駆け巡る

「うぐあぁ……ッ!ゴバァッ!」

「グハハハハッ!苦しかろう?当然だ。貴様に突き刺した魔剣聖剣は全て龍殺し(ドラゴンスレイヤー)を付与してあるのだ!如何に無限の災厄を司るドラゴンと言えど、これだけ数多くの龍殺し(ドラゴンスレイヤー)を食らえば多大なダメージとなる!魔剣の小僧が使った場面は記憶してあったのでな、そいつを使わせてもらった!王たる余には、これぐらい造作も無いッ!」

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