小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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崩壊していくフィールド

新と一誠はそのフィールド内を歩いていた

しかし、一誠はサマエルの毒で、新は大量の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)によるダメージと『極限捕食者(オーバー・グリード)』使用による体力低下で歩く力は殆ど残ってない

オーフィスと『初代クイーン』オリヴィアに肩を貸してもらって移動していた

サマエルの影響で視界が霞んでいく一誠、体の8割が吸収した「闇」に支配されていく新

2人の体力は尽き果てようとしていた……

『相棒!もうすぐだ!アザゼル達が俺達を呼び寄せる龍門(ドラゴン・ゲート)を開いてくれる筈だ!そうすれば後はあちらが俺達を呼び出してくれる!』

『分身よ。我が無限の災厄を受け継ぎし者がこんな所でくたばってはいけないだろう?足を動かせ』

ドライグとグラファディオスが呼び掛ける

「……なぁ、オーフィス。お前、帰ったら何がしたい……?」

「帰る?我、何処にも帰る所無い。次元の狭間、帰る力ももう無い」

「……それなら、俺の家に……帰れば良い」

「赤龍帝の家?」

「……ああ、そうだ。アーシアと……イリナと……仲良くなれたんなら……きっと、他の皆とも……」

足に力を入れる事も出来ず倒れる一誠

新は色を失いかけた目でそれを見て言葉を投げ掛ける

「どうした……一誠。倒れんなよ……帰るんだろ……皆の所に……」

本調子じゃない弱々しい声音

新の全身の9割が「闇」に塗り潰されていた

「……オーフィス、お前、誰かを……好きになった事はあるか……?」

『相棒、気をしっかりしろ!皆が待っているのだぞ!』

「ドライグ、この者は呪いが全身に回っている。――――限界」

『分かっている、オーフィス!そんな事は分かっている!だが、死なぬ!この男はいつだって立ち上がったのだ!』

「『初代キング』の「闇」が濃すぎる……。このままではいずれ――――」

『何を言うか。こいつは我が欠片より創られし者だぞ。こんな事で死んでは――――』

2人の頭に過る仲間達の姿

激しい激闘を繰り広げた好敵手(ライバル)達の姿

そして、愛しい女性の姿……

「大好きだよ、リアス……………」

「大好きだ、朱乃……………」



――――――――――



「……ドライグ、この者、動かない。こっちは黒くなった」

『……………ああ』

「……ドライグ、泣いている?」

『……………ああ』

「我、少しの付き合いだった」

『……………そうだな』

「悪い者達ではなかった。――――我の、最初の友達」

『……ああ、楽しかった。……なあ、オーフィス。いや、この男達の最後の友よ』

「なに?」

『俺の意識が次の宿主に移るまでの間、少しだけ話を聞いてくれないか?』

「分かった」

『この男達の事を、どうか覚えておいて欲しい。その話をさせてくれ……』

「良い赤龍帝と闇皇だった?」

『ああ、最高の赤龍帝と闇皇だった2人の話だ』



―――――――――



「召喚用の魔方陣を用意出来た。――――龍門(ドラゴン・ゲート)を開くぞ」

中級悪魔の昇格試験センターにあるフロアで、アザゼルが元龍王のタンニーンと共に魔方陣を展開し、その魔方陣が輝きを増していく

疑似空間での戦闘後、皆は新と一誠を呼び寄せるだけの魔方陣を描けるこのフロアに移動し、龍門(ドラゴン・ゲート)での強制召喚を執り行おうとしていた

疑似空間にて『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』で生み出された巨大モンスター軍団は現実の冥界に出現し、各都市部に向けて進撃を開始した

既に悪魔と堕天使の同盟による迎撃部隊が派遣されたのだが……規格外の大きさと堅牢さに手を焼いている

更に魔獣達は進撃と共に数多くのアンチモンスターを独自に生み出し、そこに旧魔王派の残党が合流して進行方向にある村や町を襲撃し始めたとか

冥府の神ハーデスは英雄派だけでなく旧魔王派にも裏で力を貸し、英雄派を騙して巨大モンスターを生み出させた

自ら気に入らないと称している勢力に一泡吹かせる為ならどんな手段でも使うと言ったトコロだろう

更に神風――――闇人の勢力も乱入してきた

事態は深刻になっていき、魔王達も各勢力に打診しているそうだが……

神々を殺せる聖槍を持つ曹操の存在がネックとなり、なかなか協力を仰げないでいる

各勢力の神々や冥界の魔王が聖槍に屠られたら、情勢は覆ってしまうかもしれない……故にトップ陣は動きづらい状態となっていた

そのため、グレモリー眷属のような力のある若手悪魔や最上級悪魔の眷属チームに巨大魔獣迎撃の話が届いている

魔王が出られない以上、彼らが赴いて戦わなければならない

同盟関係にある各勢力からも救援部隊が派遣される

天界からは『御使い(ブレイブ・セイント)』、堕天使サイドからは神器(セイクリッド・ギア)所有者、北欧からヴァルキリー部隊などが冥界の危機に応じてくれた

ゼノヴィアとイリナは無事に事件の顛末を各上層部及び渉に伝える事が出来た

2人は現在、天界でデュランダルの修復に入っている

彼女達と一緒に出たダイアンも『二代目キング』蛟大牙に神風の裏切りを伝え、『二代目クイーン』を含めて冥界に来ると言う報せも受けた

いずれにしろ、このままでは魔王領の首都は魔獣達によって破壊されるかもしれない

都民の避難は開始されているが、全ての完了が間に合うかどうかは厳しい

一刻も早く、新と一誠の力が必要だった

「――――よし、繋がった!」

アザゼルがそう叫び、巨大な魔方陣に光が走る

ファーブニルの宝玉が金色に光り、隅にいたヴァーリの体も白く発光、タンニーンの体も紫色に輝いた

それに呼応するように魔方陣の輝きは広がっていく

力強く光り輝く魔方陣は遂に弾けて何かを出現させようとした

閃光がフロア全体を包み込んでいく

やがて閃光が止み、皆が視線を魔方陣の中央に向けた

魔方陣の中央に出現したのは――――紅い『兵士(ポーン)』の駒7つと、ヒト型をした黒い塊、それに付き添う『初代クイーン』だった……

皆がその現象を理解出来なかった

目の前にあるのは新と一誠ではなく『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』と黒い塊を抱える『初代クイーン』――――ただそれだけ

「お、おい!お前、それは何なんだ!?」

「新たな時代を築く闇皇は……私の中に巣食っていた「闇」――――『初代キング』を喰らい、半生半死の状態となってしまった……。「闇」が全身を犯し、この者の機能を殆ど奪い去った……。今のこやつは――――ただの生きる屍じゃ……スマナイ……ッ」

何を意味するのか理解出来なかったが、アザゼルが力無くその場で膝をついてフロアの床を叩いた

「……バカ野郎ども……ッ!」

アザゼルの絞り出した声を聞いて皆は徐々に理解し始める

耐え難く、受け入れたくない現実を……

朱乃はその場に力が抜けた様に座り込み、リアスは呆然と立ち尽くしていた

「……イッセーさんは?……え?」

怪訝そうに窺うアーシア

反応を示さない小猫

その小猫に抱きつき、信じられないように首を振って嗚咽を漏らすレイヴェル

「……卑怯だよ、イッセーくん。駒だけを帰すなんて……。ちゃんと戻るって言ったじゃないか……ッ。新くんも、こんな状態で戻るなんてないよ……ッ」

祐斗の頬を伝う涙はしばらく止まらなかった

その日、グレモリー眷属は赤龍帝と闇皇を失った……

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