小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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正直なトコロ、祐斗もいっぱいいっぱいだった

この場にいないリアスと朱乃はルヴァル・フェニックスの言うようにマトモな状態ではなかった

リアスは一誠の駒を持ったまま城の自室に閉じこもり、朱乃も心の均衡を失って虚ろな表情でソファーに座っているだけ

話し掛けても反応を示さなかった

アーシアに至ってはゲストルームで今も泣いている

「……今すぐにイッセーさんのもとに行きたい……。……でも、私がイッセーさんを追ったら……イッセーさんはきっと悲しむから……。……ずっと一緒だって、約束したんです……。それなら、私もそこに行ければずっと一緒だと思ってしまって……。……イッセーさん……私はどうすれば良いんですか……?」

必死に悲しみと戦うアーシア

ゼノヴィアとイリナは未だ天界で、一誠の死と新の再起不能が伝えられているかどうかは分からない

ギャスパーとロスヴァイセも強化を図る為に出掛けたまま連絡が来ない

グレモリー眷属はバラバラになっていた……

少し前までは最高のチームだったのに、今ではその面影すら無かった

チームの支えだった新と一誠を失ったダメージはあまりにも大き過ぎる

今のグレモリー眷属を支えられるか、祐斗も不安に駆られていた

「我が家としてもレイヴェルを闇皇くんの眷属にしていただきたかったのだよ。出来る事なら、そのまま彼のもとに送り出したかった」

「はい、それは存じております」

「……レイヴェルの今後をどうするかはこれからだが、今はここに置いてくれないだろうか?せっかく友人も出来たようだし。小猫さんとギャスパーくんだったかな?連絡用の魔方陣越しによく2人の事を話してくれていた。とても楽しそうだったよ」

「はい、レイヴェルさんは僕達がお預かり致します」

祐斗の一声にルヴァル・フェニックスは笑む

「うむ、では行くぞ、ライザー。お前もフェニックス家の男子ならば業火の翼を冥界中に見せつけておくのだ。これ以上、成り上がりとバカにされたくはないだろう?」

「分かっていますよ、兄上。じゃあな、木場祐斗。リアス達を頼むぜ」

ルヴァル・フェニックスとライザーはそれだけ言い残してこの場を去っていく

再び静まり返るフロア

レイヴェルが小猫の隣に座り、途端に目元に涙を溜めて顔を手で覆った

「……こんなのって無いですわ……。ようやく、心から敬愛出来る殿方のもとに近づけたのに……」

「……私は何となく覚悟はしていたよ。……激戦ばかりだから、いくら新先輩やイッセー先輩、祐斗先輩が強くてもいつか限界が来るかもしれないって」

既に覚悟を決めていた小猫

激戦続きの日を過ごせば、いつ死んでもおかしくない状況に直面するのは当然だった

小猫の一言を聞き、レイヴェルは立ち上がって激昂した

「……割り切り過ぎですわよ……ッ。私は小猫さんのように強くなれませんわ……っ!」

レイヴェルの激情を当てられた直後、小猫の表情が徐々に崩壊し、震えながら涙を流していく

「……私だって……っ。……いろいろ限界だよ!やっと想いを打ち明けられたのに、あんな姿で戻ってくるなんて無いもん……っ!無茶だけはするなって、私や皆には言ったのに……っ!新先輩……バカ!バカです……ッ!」

小猫は嗚咽を漏らしながら制服の袖口で目元を隠す

お茶を出した時も必死に悲しみを堪え、表に出さないように無理をしていた

だが、レイヴェルの言葉で一気に崩したかの様に泣き崩れる

レイヴェルはこの姿を見て優しく抱き締めた

「小猫さん……ごめんなさい」

「……うぅ、レイヴェル。つらいよぉ、こんなのって無いよぉ……」

一年生にとってあまりにもツラ過ぎる現状

祐斗も耐えなければならないと自分に言い聞かせた

「木場祐斗、くんか」

第三者の声

振り返ると――――そこには堕天使幹部『雷光』のバラキエルがいた



―――――――――



「そうか、やはり朱乃は……」

祐斗はフロアに現れたバラキエルに現状を説明しながら廊下を進む

連れていったのは朱乃がいるゲストルーム

朱乃の父親であるバラキエルは沈痛な面持ちをしていた

やはり新と自分の娘、両方を知った上で悲しんでいる

祐斗はこういう時、自分では新と一誠の代わりになれない事を思い知り、心中情けないと歯噛みした

だからこそ、剣を振るう時だけはグレモリー眷属の女性を守ろうと――――今の自分に出来る精一杯だと誓う

朱乃が滞在する部屋の前に到着してドアをノックするが、中からの反応は無し

祐斗とバラキエルはドアを開いて入室

部屋の中は明かりを灯しておらず、暗闇に包まれていた

部屋の隅にあるソファーに座っている朱乃――――目は虚ろなままだった

バラキエルが一歩前に出て朱乃の肩を揺する

「……朱乃」「……とう、さま」

父親の声を聞いたからか、朱乃が初めて反応を返した

バラキエルはただ黙って頷き、朱乃を抱き締めた

「話は聞いている」

その一言を聞いて朱乃は表情を戻し、父親の胸に顔を寄せる

「父さま……私……」

涙混じりの声音、バラキエルは朱乃の頭を優しく撫でた

「今は泣け。父はお前が泣き止むまでここにいよう。だが、お前は若手悪魔の代表格となりつつあるグレモリー眷属の『女王(クイーン)』なのだ。すぐにその力を冥界の為に役立てなければならない」

「……うぅ、新ぁ……どうして……」

父親の胸の中で嗚咽を漏らす朱乃

父親がいれば朱乃は少しでも回復出来るかもしれない

祐斗は自分がこれ以上いても邪魔だと感じ、静かに部屋をあとにした



―――――――――



祐斗がフロアに戻ろうとした時、廊下で見知った人物が前を通り掛かる

「――――匙くん」

「よ、木場」

「どうしてここに?」

そう尋ねると匙は息を吐きながら言う

「ま、会長がちょいとリアス先輩の様子を見に来たってトコロかな。その付き添い。表ですれ違い様フェニックスのヒト達にも会ったけどさ」

「そっか、ありがとう」

祐斗は匙と共にフロアまで歩き、その中で匙が決意の眼差しで言った

「木場、俺も今回の一件に参加するつもりだ。都市部の一般人を守る」

シトリー眷属も冥界の危機に立ち上がってくれた

実力のある若手悪魔は召集が掛けられており、間違いなく大王バアル眷属と大公アガレス眷属も出るだろう

本来、祐斗達も力ある若手として参戦しなければならない

「僕達も後で合流するつもりだ」

「……リアス先輩達は戦えるのか?」

やはり今のリアス達を知れば、そういう疑問を抱く

今はまともに戦える筈が無い状態だが、それでも行かなければならない

「戦うしかないさ。この冥界の危機に力のある悪魔全てに召集が掛けられているのだから。僕達は力のある悪魔だ。――――やらなきゃダメさ」

祐斗は自分の心情とグレモリー眷属のあるべき姿を重ねて吐露した

匙は笑みながら大きく頷く

「だよな」

しかし、その直後に彼の表情が一転する

「兵藤と竜崎を殺した奴は分かるか?」

迫力に染まった瞳で訊いてくる匙

「分かるけど、もうこの世には存在しないよ。――――その者達はイッセーくんと新くんが倒しただろうからね」

祐斗は一切の疑いも無く答えた

変わり果てたとはいえ、新は『初代クイーン』オリヴィアと共に召喚された

つまり――――『初代キング』を倒したのだろうと確信を持っていた

祐斗の答えに匙は一瞬だけ目元を緩ませる

「そうか。相討ち。いや、負ける訳がねぇ。勝って死んだんだよな?あいつらが負ける筈がねぇんだッ!」

匙は目から大粒の涙を流して心底悔しがり、気迫に満ちた表情のまま言う

「あいつらを殺した奴はもういないんだな。だったら、そいつが属していた『禍の団(カオス・ブリゲード)』と闇人の奴らをぶっ倒せば良いだけか」

「匙くん、キミは……」

「俺の目標だったんだ、あいつらは。あいつらのお陰で俺はここまで頑張れた。アガレスとの戦いでも活躍出来た……っ!身近に同じ『兵士(ポーン)』のあいつらがいたから俺はどんなツラいトレーニングでも耐えてこられた!」

匙にとって同期である新と一誠の存在は何者よりも大きく、その背中をずっと追い掛けていたのだろう

匙は憎悪に包まれた言葉を吐き出す

「俺の目標を――――俺のダチを殺した奴らは絶対に許さない。全員、ヴリトラの炎で燃やし尽くしてやる……ッ!俺の炎は死んでも消えない呪いの黒炎。たとえ刺し違えても命だけは削り切ってやるさ……ッ!」

匙は凄まじいオーラを内部から猛らせる

「死んでもらっては困りますよ、サジ」

声がした方角に振り向くと、ソーナ・シトリーの姿があった

「会長」

「サジ、感情的になるのは分かりますが、だからと言ってあなたに死んでもらっては困ります。――――やるのなら、生きて相手を燃やしなさい」

ソーナの言葉に匙は涙を袖で拭い、大きく頷いた

「はいっ!」

ソーナの視線が祐斗に移る

「私達はこれで失礼します。魔王領にある首都リリスの防衛及び都民の避難に協力するようセラフォルー・レヴィアタンさまから仰せつかっていますので」

「部長にお会いになられたんですね?」

「部屋にこもったきりです。私が問い掛けても反応はあまりありませんでしたが、代わりにこういう時にうってつけの相手を呼んでおきました」

「うってつけの相手?」

祐斗は訝しげに問うが、ソーナは薄く微笑むだけでその者の正体を教えてくれなかった

誰を呼んだのか……?

そして、リアス達は立ち上がれるのか……

『初代クイーン』の治療術を受けている新に変化は訪れるのだろうか……

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