小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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『Half Dimension!』

ヴァーリが背中から光翼――――『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』を出現させると、音声と共にサマエルの周囲が歪んでいく

だが、黒い塊とサマエルの舌だけには効果を示さない

「くそったれめが!」

新が巨大な魔力の波動を撃ち、ヴァーリも同様に撃ち込むが――――黒い塊はノーダメージ、全く効かなかった

「なら、消滅魔力で!」

リアスも消滅魔力を放つが、それも効かず

ゴクゴクと不気味な音を立て、塊に繋がるサマエルの舌が盛り上がる

まるでサマエルが塊の中にいるオーフィスから何かを吸い取っていくかのように……

一誠は『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』を発現し、通常『女王(クイーン)』に昇格して黒い塊に殴り掛かろうとしたが、アザゼルに制止される

「イッセー!絶対に相手をするな!お前にとって究極の天敵だ!新やヴァーリどころじゃないぞ!あれはお前らドラゴンを簡単に屠(ほふ)れる力を持っている筈だ!それにこの塊はどうやら俺達の攻撃を無効にする力を持っているらしい!ていうかな、オーフィスでも中から脱出できない時点で相当にヤバい状況になってんだよっ!相手はドラゴンだが、アスカロンは使うな!最凶の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)相手じゃ何が起こるか分からん!」

「そんな事言ったって、オーフィスが奴らに捕らえられたら、大変な事になるんでしょう!?」

「んな事ぁ分かってる!だが、塊と舌に攻撃を加えても消されるだけだ!」

叫ぶ新と一誠の横でゼノヴィアが素早く飛び出し、デュランダルをサマエルに振り放った

絶大な波動がサマエルに向かっていくも、曹操の聖槍に阻まれる

「またキミは開幕から良い攻撃をしてくれるな、デュランダルのゼノヴィア。だが、二度はいかないさ」

「絶妙なタイミングで放ったつもりだが……新、私の開幕デュランダルは分かりやすいのか?」

「知らん。つーかお前、本当に不意打ちが大好きなんだな?」

ヴァーリが白い閃光を放ち、禁手(バランス・ブレイカー)となった

「相手はサマエルか。その上、上位神滅具(ロンギヌス)所有者2人と闇人の『ビショップ』。不足は無い」

「神風!悪いけDO、お前を放置するわけにはいかないZE!」

ダイアンも魔人態となってエレキギターから仕込み刀を抜き、両手に刀と槍を持つ

ヴァーリチーム、グレモリー眷属、アザゼルも戦闘態勢に入った

新はレイヴェルを後方に下がらせ、闇皇に変異する

ほぼ全員の戦闘態勢を見た曹操が狂喜に彩られた笑みを浮かべる

「このメンツだと流石に俺も力を出さないと危ないな。何せハーデスからは一度しかサマエルの使用を許可してもらえていないんだ。ここで決めないと俺達の計画は頓挫する。ゲオルク!サマエルの制御を頼む。俺はこいつらを相手にしよう」

「1人で二天龍と堕天使総督に闇皇、グレモリー眷属を相手に出来るか?」

「やってみるよ。これぐらい出来なければこの槍を持つ資格なんて無いに等しい。――――禁手化(バランス・ブレイク)」

発言直後、曹操の体に変化が開始される

神々しく輝く光の輪が背後に現れ、曹操を囲むようにボウリングの球ぐらいの大きさを持つ7つの球体が宙に浮かんで出現した

静か且つシンプルな禁手化(バランス・ブレイク)

曹操が一歩前に出ると、囲んでいる7つの球体も連なる様に移動した

「これが俺の『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手(バランス・ブレイカー)、『極夜なる天輪聖王の輝廻槍(ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン)』――――まだ未完成だけどね」

禁手(バランス・ブレイカー)状態の曹操を見たアザゼルが驚愕の叫びを上げる

「――――ッ!亜種か!『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の今までの所有者が発現した禁手(バランス・ブレイカー)は『真冥白夜の聖槍(トゥルー・ロンギヌス・ゲッターデメルング)』だった!名称から察するに自分は転輪聖王とでも言いたいのか!?くそったれめが!あの7つの球体は俺にも分からん!」

「俺の場合は転輪聖王の『転』を敢えて『天』として発現させた。そっちの方がカッコイイだろう?」

「キャハハハハハッ!な〜るほどっ。超常を屠る者故に高みを目指すって意味を入れた天輪聖王、と言う事かな?なかなかのロマンチシズムだね〜♪」

最強の神滅具(ロンギヌス)が亜種の禁手(バランス・ブレイカー)を発現となると、どの様な能力を発揮するか分からない

ヴァーリが一誠の隣に並んで言う

「気を付けろよ、2人とも。あの禁手(バランス・ブレイカー)は『七宝(しっぽう)』と呼ばれる力を有していて、神器(セイクリッド・ギア)としての能力が7つある。あの球体1つ1つに能力が付加されている訳だ」

「な、7つッ!?2つとか3つじゃなくてか!?」

「ああ、7つだ。それのどれもが凶悪だ。と言っても俺が知っているのは3つだけだが。だから称される訳だ、最強の神滅具(ロンギヌス)と。紛れも無く、奴は純粋な人間の中で一番強い男だ。……そう、人間の中で」

「最強の神滅具(ロンギヌス)の亜種禁手(バランス・ブレイカー)とか、マジかよ……。京都で戦った時は通常状態でも手こずったってのに……ッ」

曹操が左手を前に突き出すと、球体の1つが呼応して手の前に出ていく

「七宝が1つ。――――輪宝(チャツカラタナ)」

ガシャンッ!

手の前に位置した球体が消え去った刹那、突然何かが派手に壊れる音が響く

音の方角に視線を向けると、なんとゼノヴィアのエクス・デュランダルが破壊されていた

「……ッ!エクス・デュランダルが……ッ!」

「……な、何だ!?今何が起こった!?」

「――――まずは1つ。輪宝(チャツカラタナ)の能力は武器破壊。これに逆らえるのは相当な手練れのみだ」

曹操が不敵に一言漏らした次の瞬間……ゼノヴィアの体から鮮血が噴き出す

七宝の1つは一瞬の内にエクス・デュランダルを破壊した上、彼女の腹部に穴を空けた

「ごぶっ」

口からも血を吐き出し、その場に崩れ落ちるゼノヴィア

彼女に付けられた傷は一目で致命傷と認識出来る

「ついでに輪宝(チャツカラタナ)を槍状に形態変化させて腹を貫いた。今のが見えなかったとしたら、キミでは俺には勝てないな、デュランダル使い」

曹操の一声を聞き、全員がその場から散開

「ゼノヴィアの回復急いで!アーシア!」

リアスが直ぐに反応してアーシアに回復の指示を出す

アーシアは呆然と倒れ込むゼノヴィアを眺めていたが、直ぐに我に返ってゼノヴィアに駆け寄った

「ゼノヴィアさんッ!いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

アーシアは泣き叫びながら回復を始めた

仲間をやられた新、一誠、祐斗の表情が憤怒に彩られて、怒りを爆発させながら曹操に飛び掛かっていった

「「曹操ォォォォォォォッ!」」

「許さないよッ!」

3人は同時攻撃を仕掛けるが、曹操はそれらを聖槍で捌いていき、再び球体の1つを手元に寄せた

「――――女宝(イツティラタナ)」

七宝の1つが3人の横を高速で通り過ぎ、リアスと朱乃の眼前まで飛来していった

リアスと朱乃がその球体に攻撃を加えようとしたが――――「弾けろッ!」と、曹操の一声と共に球体は輝きを発した

「くっ!」「こんなものでっ!」

2人は目映い光に包まれながらも攻撃しようとしたが……翳した手からは何も出なかった

自分の手元を怪訝そうに窺い、もう一度手を突き出すが――――やはり何も出ない

「女宝(イツティラタナ)は異能を持つ女性の力を一定時間、完全に封じる。これも相当な手練れでもない限りは無効化出来ない。――――これで3人」

曹操の発言にリアス、朱乃、一誠、新が驚いた

上級クラスの2人でも太刀打ち出来ないとなれば、現在ゼノヴィアを治療しているアーシアの力を封じられたら完全にお手上げとなってしまう

曹操は高笑い、その顔は完全に戦いを楽しんでいる者のソレだった

「ふふふ、この限られた空間でキミ逹全員を倒す――――。派手な攻撃はサマエルの繊細な操作に悪影響を与えるからな。出来るだけ最小の動きだけで、サマエルとゲオルクを死守しながら俺1人で突破する!なんとも最高難度のミッションだッ!だが――――」

黒歌とルフェイが手に魔力、魔法の光を煌めかせてサマエルとゲオルクの方角に突き出すが、そこにまた球体の1つが向かう

「ちょこざいにゃん!」

黒歌がもう片方の手を球体に突き出して迎撃しようとした

「――――馬宝(アッサラタナ)、任意の相手を転移させる」

その発言と同時に黒歌とルフェイの姿が消え、2人は別の場所に出現させられた

手を突き出したままの両者、その先にはゼノヴィアを回復させているアーシアがいた……

「――――ッ!ヤベェッ!アーシアとゼノヴィアがッ!」

「ふざけるなよォォォォッ!『龍星の騎士(ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)』ッ!」

『Change Star Sonic!!!!』

一誠は瞬時に体内の駒を切り替え、高速移動仕様の鎧でアーシアのもとに飛び出す

アーシアの前に到着し、止められなかった黒歌とルフェイの合体攻撃を直撃してしまう

アーシアを守る為、壁にならざるを得なかった一誠

薄い鎧は見事に破壊され、激痛が全身を駆け巡る

「がはっ……!」

多量の血をぶちまけ、力尽きた様に倒れていく一誠を曹操は嘲笑した

「赤龍帝、キミの力はもう知っている。バアル戦では不安定で強力な能力にも目覚めたようだが――――。やりようなんて幾らでもあるさ。トリアイナのコンボは強力だ。だが、一瞬だけ内の駒を変更するトコロにタイムラグがある。それを踏襲した攻撃方法で攻めれば俺なら潰せるんだ。――――攻略法が確立すれば数手でキミを詰められるよ。因みに、闇皇の場合にもこの手は使えそうと思ったが、今は回復させている途中のアーシア・アルジェントに攻撃を加えれば真っ先に赤龍帝が飛び出すと踏んだ。それに――――闇皇の力もまだ底知れないから、キミから潰させてもらったよ」

「くそッ!一誠の技やらはお見通しって事かよ!」

「イッセーさんッ!」

アーシアが致命傷を受けた一誠に気付いて回復のオーラを飛ばそうとするが、一誠は掌を向けて制止した

「来るなッ!アーシアッ!……俺はまだいい。先にゼノヴィアを治療しろ……」

「でも!イッセーさん、お腹が……ッ!」

兜の中で強く歯軋りをする新……「チクショウがァッ!」と怒りを吐く

黄金の鎧を纏ったアザゼル、禁手(バランス・ブレイカー)状態のヴァーリ、そして魔人態のダイアンが飛び出していった

「ヴァーリィィィィッ!俺に合わせろッ!」

「全く、俺は単独でやりたいトコロなんだがな……ッ!」

「よくも一誠をやりやがったNA!」

3人は距離を詰め、アザゼルの持つ光の槍、ヴァーリの魔力を込めた拳、ダイアンの仕込み刀と三ツ又槍の一斉攻撃が撃ち込まれていく

「堕天使総督と白龍皇、更に『チェス』の一員の競演!これを御す事が出来れば俺は更に高みを目指せるなッ!」

曹操は嬉々として現状を受け入れ、高速で撃ち込まれる3人の攻撃を寸前で回避していく曹操に新は驚愕した

「あの凄まじい連撃を躱してやがる!?アイツ、本当に人間なのかよ!?」

「力の権化たる鎧装着型の禁手(バランス・ブレイカー)は莫大なパワーアップを果たすが――――、パワーアップが過剰すぎて鎧からオーラが迸り過ぎる!その結果、オーラの流れに注視すれば、次に何処から攻撃が来るか容易に把握しやすいッ!ほら、手にしている得物や拳に攻撃力を高める為、オーラが集中するからねッ!」

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