小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

曹操が攻撃を躱しながらそう告げ、更に右目が金色の輝きを放った

「邪視(イーヴィル・アイ)と言う物をご存じかな!?そう、眼に宿る特別な力の事だ!俺もそれを移植してね!赤龍帝と闇皇にやられ失った物をそれで補っている!俺の新しい眼だ!」

アザゼル、ヴァーリ、ダイアンの攻撃を避けきった曹操が視線を下に向けると――――アザゼルの足下が石化していき、その正体に気付いたアザゼルは舌打ちをした

「――――メデューサの眼かッ!」

メデューサとはギリシャ神話に登場する女型モンスターの名で、見た者を石に変えてしまう能力を持つ

無知な者でも知っているメジャーな魔物だ

聖槍や『七宝』の能力に加えて石化の右目、もはや曹操は強さの塊と言える存在と化していた

ドズンッ!

鈍い音と共にアザゼルの腹部に聖槍が突き刺さり、鎧は砕かれ鮮血が迸る

「……ぐはっ!……なんだ、こいつのバカげた強さは……ッ!」

大量の血を吐き出し倒れるアザゼルに対し、曹操は槍を引き抜きながら言った

「いえ、あなたとは一度戦いましたから、対処は出来てました。――――その人工神器(セイクリッド・ギア)の弱点はファーブニルの力をあなたに合わせて反映出来ていない点です」

「アザゼルッ!おのれ、曹操ォォォォォォッ!」

「――――『牙流転生』ッ!」

激昂したヴァーリとダイアンが曹操に極大な魔力の塊、無数に分解された刀身を撃ち放つ

「両親にバケモノとされて捨てられたキミを唯一拾って、力の使い方を教えたのがアザゼル総督だったかなっ!?育ての恩人をやられて激怒したか!」

2つの攻撃の前に、再び球体の1つが飛来していく

「――――珠宝(マニラタナ)、襲い掛かってくる攻撃を他者に受け流す。ヴァーリ、キミの魔力は強大だ。当たれば俺でも死ぬ。防御も厳しい。――――だが、受け流す術ならある」

ヴァーリの魔力とダイアンの飛ばした剣先が全て球体の前に生まれた黒い渦に吸い込まれていく

攻撃を吸収した渦は消滅し……小猫の前方に新しい渦が発生した

新は直ぐに攻撃が小猫に撃ち込まれるのを得心して飛び出そうとするが――――

ドズッ!

「――――ッ!?」

両足に一瞬の衝撃が走り、焼ける様な激痛がまとわり付く

突然の不意打ちにバランスを崩した新は倒れ、その方角に顔を向けると――――神風が嫌み満載の笑顔で左腕を突き出していた

「キヒヒッ♪少し邪魔させてもらったよ。ここは空気を読まずに邪魔してやらなきゃ、面白味が無いでしょ?」

「チキショウ……ッ!逃げろ小猫ォォォォォォッ!」

神風の弓矢らしき攻撃で足を貫かれた新は必死の叫びを上げるが間に合わず……既に渦から吸収した攻撃が放たれていた

「バカ、なんで避けないの!白音ッ!」

黒歌が悲鳴を上げて小猫の前に立ち――――

ゴバアァァァァァァァァァァァァァァァンッ!

爆音がロビー内を駆け回った

小猫の目の前で黒歌は曹操に受け流されたヴァーリとダイアンの攻撃を直撃してしまい、全身には無数の刀身が突き刺さっている

血を噴き出し、煙を上げて倒れる黒歌を小猫は直ぐに抱き留めた

「……な、なに、ちんたらしてんのよ……」

今にも死にそうな声音……小猫が首を横に振って叫ぶ

「……ね、姉さまッ!」

「曹操――――、俺の手で俺の仲間をやってくれたな……ッ!」

ヴァーリの全身に怒りのオーラが猛る

「ヴァーリ、キミは仲間想い過ぎる。まるでそこで無様に転がる赤龍帝のようだ。二天龍はいつそんなにヤワくなった?それと、俺の七宝の幾つかを見た事のあるキミが、能力が把握しづらいのは分かっているよ。――――キミに見せていない七宝でわざわざ攻撃しているからな。良かったな?これで七宝の全てを知っているのはキミだけになったぞ」

「では、こちらも見せようかッ!我、目覚めるは、覇の理に全てを奪われし――――」

ヴァーリが『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の呪文を唱え始め、それを察した曹操がゲオルクに叫んだ

「ゲオルクッ!『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』はこの疑似空間を壊しかねない!」

「分かっている――――。サマエルよ!」

ゲオルクが手を突き出して魔方陣を展開させると、サマエルの右手の拘束具が解除され、不気味な声と共に右手がヴァーリに向けられる

ブゥゥゥゥンッ!

空気が振動すると同時にヴァーリが黒い塊に包み込まれた

『オオオオオォォォォォォッオオオオオォォォォオオオオオッ』

サマエルが吼えると黒い塊が勢い良く弾け飛び、中にいたヴァーリは鎧を破壊され、体中から大量の血が飛び散っていく

「……ゴハッ!」

歴代最強と言われた白龍皇ヴァーリがいとも簡単にやられた

新は目の前で起きた事態に絶句し、曹操は倒れたヴァーリを見下ろして息を吐く

「どうだ、ヴァーリ?神の毒の味は?ドラゴンにはたまらない味だろう?ここで『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』になって暴れられてはサマエルの制御に支障をきたすだろうから、これで勘弁してもらおうか。俺は弱っちい人間風情だから、弱点攻撃しか出来ないんだ。――――悪いな、ヴァーリ」

「……曹操……ッ!」

憎々しげに曹操を見上げるヴァーリ、神風は曹操の所業と言動に腹を抱えて笑った

「キャハハハハハハハッ!弱点攻撃しか出来ないぃ?そうじゃなくてぇ、弱点攻撃しかしないの間違いだろぉ?曹操、キミはマジで人間の中じゃ一番強い戦闘狂だ。なのに自らを人間風情と謙遜しちゃってさぁ♪まっ、弱点攻撃も戦いの内だから文句言えないんだけどね」

「褒めてもらえるのは光栄だが、これ以上手を出さないでくれるかな?」

「キヒヒッ♪ゴメンゴメン。後でボクからも良いモノを見せてあげるから、それでおあいこって事で」

神風がカプリンチョを食べ、曹操は頭を振って嘆息する

新は直ぐに『龍昇格(ドラグ・プロモーション)』を使いたかったが、使えばヴァーリの二の舞になってしまう

あまりに強い力は逆にサマエルの絶好の的となる

故に通常状態で戦うしか選択肢は無かった……

「次はキミだ、闇皇。一見キミは赤龍帝と同じパワーファイターだと思われそうだが、バウンティハンターで培われた実戦経験から考えると非常に厄介な相手だ。時にはゴリ押し、時には頭を働かせる万能タイプに位置する。でも、通常状態の鎧で俺の七宝を受けきれるかな?新しく発現したドラゴンの力は、サマエルにとって良い餌となるだろう」

「通常状態じゃ無理だろうな。けどよ……これだけ仲間をやられたら、黙ってる訳にはいかねぇんだよッ!」

新は闇皇剣に魔力を流して刀身を黒く染め、自分の足下に闇を生み出す

『暗黒捕食者(ダーク・グリード)』で作った闇に自身の体を沈め消えていく

「――――なるほど。そんな技もあったね」

不動のまま曹操が辺りを見渡していると……周囲に円形状の闇が無数に出現し始めた

『暗黒捕食者(ダーク・グリード)』は対象物を捕縛したり、自身を闇に潜ませて空間を繋げるトンネルにも出来る

新はこの闇を利用して曹操に一矢報いるつもりであろう

「考えたね。しかし、ソレも結局魔力を使用して作った闇。攻撃の瞬間に質量が変わった場所を突けば容易い」

曹操が聖槍を構える

静寂の時間が流れ……1つの闇から何かが飛び出してきた

曹操は聖槍を伸ばして突き刺そうとする――――が、出てきたのは魔力の塊だけだった

「――――ッ。フェイクか!?」

聖槍が魔力の塊を突いた刹那、背後の闇から新が飛び出してきた

そのまま闇皇剣を曹操に振り下ろす……が、殺気を気取った曹操はギリギリで振り下ろされた剣撃を回避した

左肩から出血するも、傷は深くない

「――――ッ!」

「惜しかったねッ!」

ドズッ!

曹操の聖槍が新の腹部に突き刺さる

鎧を容易く破壊され、突き刺されたまま宙に浮かぶ

あと一歩……まさに今の新にはその言葉が似つかわしかった

心底から悔しそうに歯を噛み締め、その口と傷口から血が滴り落ちてくる

曹操は新を皆の所へ振り飛ばし、口元を笑ませて言う

「闇皇、やっぱりキミは面白い男だ。あんな方法で俺に一太刀浴びせるとは。もう少し殺気を抑えれば良い攻撃を俺に加えられたのにな。でもまぁ、見事だったと称賛しておこう」

「く、くそォ……ッ!チキショウ……ッ!」

一矢報いるつもりの攻撃が届かず、新は聖槍に空けられた傷を押さえて歯を食い縛った……

-3-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D リアス・グレモリー (1/4.5スケール ポリレジン製塗装済み完成品)
新品 \0
中古 \
(参考価格:\16590)