小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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「じゃあな。表に玉龍(ウーロン)を待たせたまんまなんでねぃ。――――と、美猴はこれからどうすんだぃ?おめえさん達、各勢力からも『禍の団(カオス・ブリゲード)』からも手配されてんだって?」

美猴は首を捻って頬を掻き、その横で黒歌が挙手して言う

「私はリーダーについていくにゃん。何だかんだでこのチームでやっていくのが一番楽しいし?」

「はい、私も皆さまと共に行きますよ!アーサーお兄さまは?」

「英雄派に興味や未練は微塵もありません。今まで通りここにいた方が強者と戦えるでしょうしね。少なくとも私は曹操よりもヴァーリの方が付き合いやすいですよ」

ルフェイは元気良く頷き、兄のアーサーも笑顔でそう言った

彼らの意見を聞いた美猴は改まってヴァーリに言う

「俺っちも今まで通り、お前に付き合うだけだぜぃ?俺らみてぇな半端モンを指揮出来るのなんざ、おめぇだけさ、ヴァーリ」

チームメンバー全員の残留宣言を聞いてヴァーリは小さく口元を緩ませた

「……すまない」

「らしくねぇし!謝んな、ケツ龍皇!」

「やめろ、アルビオンが泣く。ただでさえカウンセラー希望の状態なんだ」

その光景を見ていた初代孫悟空が煙管の煙を吹かす

「赤龍帝は民衆の心を惹き付け、白龍皇は『はぐれ者』の心を惹き付ける。二天龍、表と裏。お主ら面白い天龍じゃて」

初代孫悟空が退室し、それを確認した祐斗はヴァーリに問う

「ヴァーリ・ルシファー、キミはどうするんだい?」

「……兵藤一誠と竜崎新の仇討ちと言えばキミは満足するのかな、木場祐斗?」

「いや、柄じゃないと吐き捨てるだけさ。それに仇がいるとするのなら、それは僕達の役目だ。いいや、僕が討つ」

祐斗の言葉にヴァーリは苦笑する

「なるほど、その通りだ。――――俺は、出し切れなかった力を誰かにぶつけたいだけだ。なに、俺が狙う相手と俺を狙う相手は豊富だからな」

白龍皇ヴァーリはバトルマニアらしい戦意に満ちた不敵な笑みを見せた



―――――――――



「祐斗さん!」

「キミは――――渉くん!それに……あなたは……ッ」

地下室から戻ってきた祐斗が目にしたのは『闇皇の鎧』と対を成す『光帝の鎧』を宿す少年――――八代渉

その隣には驚愕せざるを得ない人物がいた

「久し振りだな。グレモリー眷属の『騎士(ナイト)』」

闇人の中枢組織『チェス』のトップ、『二代目キング』の称号を持つ青年――――蛟大牙だった

祐斗は一瞬敵意を向けてしまうが、大牙に戦意が無いと直ぐに察知して気を鎮める

「どうしてあなたがここに?」

「うちの『ポーン』から大体の話を聞いた。やはり神風はクーデターを起こしたようだな。『ポーン』、『二代目クイーン』と共にアンチモンスターと魔獣の迎撃に当たろうと思っていたのだが……堕天使総督から闇皇の状態を見て欲しいと頼まれたんだ。そこで光帝と鉢合わせした」

「僕も殆ど同じです。新さんの状態を見て、何か力になれる事は無いかと思って来ました」

祐斗は渉の『新の現状を見た』と言う発言に少し疑問を抱いた

一誠の死(未確定?)と新の再起不能の事態は一部の者しか知らない

仮にゼノヴィアとイリナが渉に冥界の危機を伝えたとしても、新が再起不能で帰還してきたのは2人が疑似空間から脱出した後――――つまり、本来なら渉は新の現状を知らない筈である

何故知っているのか、祐斗はその点を追及してみた

「渉くん、今の新くんの状態をどうして知っているんだい?アザゼル先生から聞いたの?」

「いえ、文字通り見たんです。コレを使って」

そう言うと渉は懐から何かの破片を取り出し、祐斗に見せる

その破片には――――別室で『初代クイーン』オリヴィアの治療術を受けている新の姿が映っていた

祐斗は思わず目を丸くしてしまう

「そ、それはいったい……?」

「これは僕の御家――――八代家が有している『遠見(とおみ)の鏡』と呼ばれる道具で、頭の中で映したい人物がいる場所を映せる鏡です。これは欠片なので映せる範囲は限定されますし、制限時間もありますが使い勝手は良いですよ」

「欠片?と言うと、原物もあるって事?」

「はい、原物は僕の実家にあります。八代財閥の会長兼八代家現当主の八代綜玄(やしろそうげん)――――僕のお爺ちゃんから借りてきました」

祐斗は八代財閥の名を聞いて更に目を丸くした

八代財閥とは日本に君臨する大財閥の名で人間界の政財界トップに位置しており、八代家は古来より日本を影から支えてきた由緒正しき陰陽師一族の大家である

表向きは大財閥、裏の顔は最大の陰陽師一族と驚愕の事実が初めて明らかになった

そして八代財閥の会長にして八代家当主が渉の祖父――――八代綜玄

つまり、渉は八代綜玄の孫に当たる

「八代家……か。噂で聞いた事がある。日本全国に分家を持ち、陰陽師を作りし陰陽師一族とも言われている。まさか、光帝がその血を受け継いでいるとはな」

「いつか言おうと思ってたんですが、すっかり忘れてまして……」

エヘヘと頭を掻く渉

大牙は以前より噂で耳にしていたらしく、あまり驚いてはいない様子

「実を言うと、僕達が全国各地で闇人を見つける事が出来たのは、実家の――――お爺ちゃんの協力があったからなんです」

「そうだったんだ。それで今回もその鏡を見て知って、駆けつけてくれたんだね」

「はい」

「話を割る様ですまないが、そろそろ行くぞ。――――闇皇の所に」



―――――――――



「入るぞ」「お邪魔します」

祐斗、渉、大牙の3人はある部屋に足を運ばせ入室した

部屋の中で見たのは微動だにせず横たわる変わり果てた新、治療術を施し続けた疲労で顔を歪め息を切らす『初代クイーン』オリヴィア

そして巫女服に身を包んだ見知らぬ銀髪の少女がいた

「お待ちしておりました、あなた様」

「渉くん、この人は?」

「紹介します。彼女は御鏡貴音(みかがみ たかね)さん。八代家の分家、御鏡家の息女です」

渉に紹介された少女――――御鏡貴音が祐斗と大牙に頭を下げて挨拶する

「お初にお目にかかります。木場祐斗殿、蛟大牙殿。御鏡貴音と申します」

「初めまして。あの、あなたがここに来たのは……?」

「渉様にお呼ばれして参上致しました。闇皇――――竜崎新殿を蝕む『闇』を緩和させる儀式を行う為に」

貴音の言葉に思わず我が耳を疑う祐斗

貴音は儀式の説明をしながら新を囲うように札を床に貼っていく

「一通り話を聞いて、竜崎新殿の状態を見せていただきました。竜崎新殿がこうなってしまったのは、器以上の『闇』を自らの体内に閉じ込めようとしたから……簡潔に言えば、ぺっとぼとるに飲み物を入れ過ぎて溢れている状態です。これから行うのは、その溢れた『闇』を他の器に移して負担を軽減させる儀式です」

「他の器?」

「要するに――――新さんの中にいる『闇』を分散させて、僕と大牙さんに分け与え封じる儀式です。本人のキャパシティに関わる問題なので、普段僕の中にいるフェリス達は今、祐希那と一緒に冥界の人達の避難を手伝っています」

渉が貴音から前もって聞いたであろう儀式の全貌を簡潔に述べる

新が封じた『闇』は本人のキャパシティを遥かに超越する量だったので、余分な『闇』に犯された

ならば、儀式でその余分な『闇』を他の器=渉と大牙にも協力してもらって封印すれば負担は軽くなり、新が復活する可能性も上がるかもしれない

貴音が儀式の下準備を終えたのを確認し、渉は新の右側、大牙は左側に移動した

少しでも可能性があるなら賭けてみたい……祐斗は唇を噛み締めて儀式を見届ける事にした

「大牙、か……?」

「あなたがあの『初代クイーン』。つまり――――オレの母さん……」

「「―――――ッ!?」」

渉と祐斗の顔が仰天の色に染まる

『二代目キング』蛟大牙が『初代キング』の息子だと言う事は以前より知っていたが、母親となる人物は判明していなかった

その母親が恐らく……『初代キング』にさせられてしまう前の『初代クイーン』オリヴィアだろう

「……すまない。少し私情を挟んでしまったな。儀式に取り掛かろう。御鏡貴音と言ったな、何をすれば良い?」

「はい、私が外から結界を張ります。札の力で余分な『闇』を放出させますので、結界の中でその『闇』を渉様と蛟大牙殿の体内に封じてください。それと……『闇』は思ったよりも高濃度ですので、決して気を抜かずに儀式に取り組んでください。一定以上気を抜いたら……逆に『闇』に犯されます」

貴音の真剣な面持ちに無言で頷く渉と大牙

貴音は祐斗を少し離れさせ、札の外から3人を囲う様に結界を作り出す

横たわる新、渉、大牙は結界に囲まれ、新の左右にいる2人が封印の準備に取り掛かった

「では、いきます」

貴音は2人の頷きを確認し、目を閉じて札に込めた霊力を解放させていく

配置した札が一斉に輝き始め、その輝きが新を包み込む

「…………ッ!わ、渉様……大牙殿……早く鎧を纏ってください……ッ!」

瞑目している貴音の表情が歪み、手が震えを増していく

徐々に新から「闇」が放出され、渉と大牙は言われた通りに『光帝の鎧』と『蛇神皇の鎧』を具現化させた

両手を前に翳し、新から放出された「闇」を吸収していくが――――

「……ッ!?う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

「ぐっ!ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!」

「闇」が体内に入った途端、2人の全身に激痛が走る

絶叫を上げる渉と大牙

鎧にもヒビが生じていく

「な、なんて濃さなんですか……ッ!まだ始めたばかりなのに……意識が飛びそうです……ッ!」

「闇皇は……これ程の『闇』を1人で受けたと言うのか……ッ!?」

吸収する度に激痛が全身を駆け巡り、吹っ飛びそうな意識を無理矢理戻して儀式を遂行させる

放出されていく『闇』がどんどん濃度を増して光帝と蛇神皇の体内に入る

儀式を始めてから20分が経ち、新の色が少しずつ薄れていく

祐斗はその様子を見て僅かだった希望を次第に膨らませていった

しかし、『闇』を吸収する2人にとっては長い時間だった

「……ッ!ま、まだ足りないのか……ッ!?これ以上は保たないぞ……ッ!」

「僕もいっぱいいっぱいですよ……ッ!た、貴音さん!まだ、なんですか……!?」

「――――出来ました!」

貴音が瞑目していた瞳を開き、眼前に封印の術式を描く

描いた術式は結界の中へ侵入、貴音の指の動きに合わせて拡散

拡散された術式が新、渉、大牙に降り注ぐ

すると、少しずつ痛みが引いていき、渉と大牙は両手に魔力を蓄積し始めた

「渉様!大牙殿!札に魔力を流してください!粒子化させた封印の術式ごと札を――――彼の体内へ!」

「はい!」「分かった」

渉と大牙は両手から魔力を迸らせ、拡散した封印の術式と配置された札に魔力を流し込む

魔力を帯びた札は床から離脱し、粒子化された術式と共に新と同化する

輝かしいオーラに包まれ、徐々に新の全身が正常な色を取り戻していく

最後まで気を抜かずに魔力を流し続け、遂に儀式が完全終了を迎えた

儀式が終わると同時に『光帝の鎧』と『蛇神皇の鎧』が強制解除され、渉と大牙は激しく息を切らしながらその場に座り込む

スー………スー………

ふと聞こえる呼吸音

見てみると、新の顔に僅かながらの生気が戻っていた

「新くんは……新くんはどうなったんですか?」

「はぁ……はぁ……ぶ、無事に儀式は終了しました……。3分の1程、渉様と大牙殿の中に封印しました。負担は軽くなりましたが、まだ完全には復活出来ません。後は……竜崎新殿本人の気力次第、切っ掛けを与えれば復活する可能性は充分にあります」

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