小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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≪『業魔人(カオス・ドライブ)』『魔人化(カオス・ブレイク)』、『狂暴蜘蛛化(ブラック・ドライブ)』≫


ジークフリートがピストル型の注射器を首に挿入して僅かな静寂が流れ――――直後にジークフリートの体が脈動する

次第に大きくなっていき、体その物に変化が現れ始めた

ミチミチと奇怪な鈍い音を立てながら、背に生える4本の腕が太く肥大化していく

五指も徐々に形を崩して、持っていた魔剣と同化していった

ジークフリートの顔中に血管が浮かび上がり、全身の筋肉が生物の様に蠢き、英雄派の制服が破れていく

ジークフリートは地に手が届く程に長く太く巨大化した4本の腕を背に生やす怪人となった

その姿は既に阿修羅ではなく、蜘蛛の化け物の様な姿となり、彼自身から尋常ならざるプレッシャーと不気味なオーラが放たれる

怪物に変貌したジークフリートは顔面に痙攣を起こしながら口元を笑ました

『――――「業魔人(カオス・ドライブ)」、この状態を僕達はそう呼称している。このドーピング剤を「魔人化(カオス・ブレイク)」と呼んでいてね、それぞれ「覇龍(ジャガーノート・ドライブ)」と「禁手(バランス・ブレイカー)」から名称の一部を拝借しているんだよ』

低く重い声質で自らの姿と先程の注射器を説明する

「素晴らしい。人間とは、時に天使や悪魔すらも超える物を作り出してしまう。俺はやはり人間こそが可能性の塊なのだと思えてしまうよ」

アジュカ・ベルゼブブがそう言う

人間でありながら神が作り出した物を肥大化させ、魔王の血肉すらも利用してしまう

人間とは何処までも欲望を進化、加速させる生き物

それ故に異形の力を無闇に教えず、隠匿しなければならない……

化け物――――魔人と化したジークフリートを見ていたアジュカ・ベルゼブブが次にアドラスへと視線を向けた

「そちらのキミも、その姿から察するに強化してきたのだろう?先程から寒気を含めたオーラが滲み出ている」

「ヘッ、流石は現魔王ってトコロか。あぁ、そうだよ。俺様も力を貰ったのさ。改良を施した完成版ブラックウィドーズをなぁ!」

ギチギチギチ……ッ

アドラスの右腕から不気味な音が鳴り、徐々に鱗を突き破って何かがせり上がっていく

節足動物の様な脚先が生え、アドラスの右腕に巻きつく

そして……巻きついた脚は右手の先にドラゴンの顔を作り出した

「ブラックウィドーズは体内に寄生する事で、対象の力を何十倍にも引き上げる事が出来るんだ。俺達はこの状態を『狂暴蜘蛛化(ブラック・ドライブ)』と名付けた。コイツは気持ち良いぜぇ?自分の力が無限に沸き上がってくるみてぇだ……ッ!」

アドラスの全身からドス黒い炎が揺らめき、浮遊している二対の円盤が炎を纏いながら回転を始める

更に魔人ジークフリートが一歩前に踏み出すだけで屋上庭園の空気が一変

魔剣と同化して異常な進化を遂げた4本の『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』がしなる

『――――来る!』

そう判断した祐斗は攻撃を視認するより先に前へ駆け出した

さっきまでいた場所に渦巻き状の鋭いオーラと氷の柱が生まれ、更に地面が抉れて次元の裂け目まで生じていた

バルムンク、ダインスレイヴ、ディルヴィング、ノートゥング……各魔剣の一斉攻撃

一瞬でも判断が遅かったら完全に絶命していただろう

『――――っ!』

祐斗は前方から感じる異様な寒気を察して、その場で聖魔剣を聖剣にチェンジ

禁手(バランス・ブレイカー)の騎士団を一体だけ具現化させる

それを空中で蹴って距離を取った

その瞬間、祐斗がいた空間に極大で凄まじいオーラの奔流が通り過ぎ、甲冑騎士を跡形も無く消滅させた

――――今の攻撃は魔帝剣グラムを振るった後だった

避けても祐斗の体に攻撃的なオーラの余波が突き刺さる

溜めの動作も殆どせずに今の奔流を撃ち放ち、デュランダル以上の破壊力を有する

やはり魔剣最強の名は伊達ではなかった……

グラムが放ったオーラの奔流はそのままアドラスに向かっていく

「俺様ごと殺ろうってか、面白ェッ!」

アドラスの前方に二対の円盤が出て円を描く様に回り始め、中心の空間にドラゴンの顔と化した右手を位置付ける

ドラゴンの顔が口を開き、その口と円盤から極大な熱光線が発射された

グラムのオーラと熱光線が真っ向から衝突し、大爆発を生み出す

拡散して飛び散るグラムのオーラがアドラスの頬に一筋の傷を作るが、本人はそれを意に介さなかった

屋上に降り立った祐斗は聖剣を聖魔剣に戻して、瞬時にジークフリートに詰め寄る

横薙ぎに斬撃を放つが、その攻撃は軽々と魔剣の一本で防がれた

極太の腕から繰り出される剣撃は一本一本が破壊力に満ちており、受け止める度に祐斗の体が軋む

唯一魔剣ではない光の剣は光を喰らう聖魔剣で消滅させたが……魔剣5本はそうはいかない

「ヒャッハッハァッ!」

アドラスは円盤から巨大な炎弾を複数放ち、炎弾は縦横無尽にうねりながらジークフリートへと向かっていく

ジークフリートは4本の腕をしならせ、襲来してきた炎弾を全て切り裂いた

しかし、炎弾の1つが祐斗に襲い掛かる

「――――ッ!」

祐斗は肌が焼けそうな熱気を察知して飛び退き、炎弾はそのままジークフリートへ

ジークフリートは動じる事無くグラムで受けきった

距離を取って肩で息をする祐斗、直後にアドラスへ視線を向ける

『サラマンダーの闇人くん。もしかして、僕を狙うついでに木場祐斗を狙ってるつもりかい?』

ジークフリートが訊くとアドラスは嫌み満タンで口の端を吊り上げた

「あぁ、そうだ。ワザとやってんだよ。テメェがよっぽど殺したがってる相手らしいからなぁ。クソムカつくテメェが喜ばねぇ様に、俺様がブッ殺すんだよ。まっ、そこにいるグレモリー眷属も同じぐらいムカつくけどなッ!」

円盤から無数の炎の矢が放たれた

一方の円盤はジークフリート、もう一方は祐斗に狙いを定めて炎の矢を撃ちまくる

ジークフリートは魔剣の一本で矢を防ぎ、祐斗は高速で動いて矢を躱す

「オラオラオラァッ!逃げるだけかぁッ!?」

アドラスは二対の円盤を直列で左手に寄せ、炎の鞭が構成される

横薙ぎに振るわれた炎の鞭は庭園の木々を焦がし、水場を蒸発させながら祐斗を焼き尽くそうとした

祐斗は再び聖魔剣を聖剣にチェンジして騎士団を創り、踏み台にして宙を飛んだ

騎士団を焼きながらジークフリートに向かう炎の鞭

ジークフリートはダインスレイヴを振るって氷の柱を出現させ、炎の鞭を打ち消す

お返しと言わんばかりにグラムの波動を飛ばし、波動は庭園を抉りながらアドラスと祐斗を狙う

祐斗は何とか回避するものの、幾重もの凶暴な波動のオーラによって体の端々からダメージを受けてしまう

一方のアドラスは――――なんとグラムの波動を直撃しても表面が傷付くだけだった

龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の効果を受ければ例外無くドラゴンは多大なダメージを受ける筈なのだが、アドラスは力任せに弾き返した

ブラックウィドーズによる『狂暴蜘蛛化(ブラック・ドライブ)』でアドラスは弱点である筈の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)に対して耐性を持ったのだろう

「ヒャッハッハッ!これがブラックウィドーズの力か!スゲェぜ、スゲェぜ神風はよぉッ!龍殺し(ドラゴンスレイヤー)が効かねぇぜッ!これなら思いっきり力を出せるぜェッ!」

狂喜に彩られたアドラスは見境無しに炎を乱射、リアス達の方に飛んできた炎はアジュカが防御障壁を張って防ぐ

ジークフリートのグラムとアドラスの炎で庭園は一気に荒れ地へと変貌してしまった

ジークフリートはアドラスの龍殺し(ドラゴンスレイヤー)耐性を見て、一先ず標的を祐斗に絞る

5本の魔剣が祐斗目掛けて刺し込まれてきたが、祐斗はそれを避けるついでに足先に聖魔剣を創って脇腹に蹴り込んだ

無論、聖魔剣の仕様は龍殺し(ドラゴンスレイヤー)

蹴りは完璧に入った――――が、儚い金属音を立てて無惨に砕け散る

その結果を見て、ジークフリートは不敵に笑んだ

『――――どうやら、強化された僕の肉体はキミの龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖魔剣を超えていたようだ。それなら、あの闇人にも届かないだろうね』

脇腹に入れた祐斗の足を掴むジークフリート

そのまま宙に高く持ち上げ、豪快に地面へ叩きつけた

そこへ追い討ちに魔剣を一振り、衝撃は祐斗の全身を突き抜けて地面に巨大なクレーターを生み出した

「…………ッ!」

祐斗の全身が軋み、言い難い激痛が駆け巡り、口から大量の血反吐が吐き出される

各部位に深刻なダメージを受けて痙攣を起こし、骨も相当な数が折れた

それでも負ける訳にはいかないと懸命に意識を保ち、立ち上がって足を動かした

体勢を立て直して斬り掛かるも、ジークフリートが2本の魔剣をクロスして祐斗の剣を難なく止める

『防御の薄いキミでは、今の一撃で相当な傷を負ったんじゃないかな?』

ジークフリートが低い声音で笑い、クロスした魔剣ごと祐斗を突き押す

祐斗は弾かれて軽く足下がフラつく

倒れるのを防ぐ為、残された力を足に注ぎ込む

何とかフラつきを止めたと思った矢先――――祐斗の足先が氷に包まれてしまった

魔剣ダインスレイヴの力だ

祐斗はすぐに聖魔剣を炎属性に変えて氷を溶かそうとしたが……地面から突き上がってきた2本の氷柱が両足を貫く

そこへジークフリートが魔剣を振り下ろす

足を封じられて回避行動が取れない祐斗は体を捻り、手元に聖魔剣を複数創造して盾の様にする

しかし、束になった聖魔剣は破壊され、そのまま左腕が切り落とされてしまった

片腕を失いながらも祐斗は足場の氷を炎の聖魔剣で振り払い、後方に飛び退いた

切り離された左腕の傷口から大量の血が流れ出てくる

すぐに炎から氷の聖魔剣に変更して、肩口と両足の傷を凍らせた

応急処置に過ぎないが、放置しておくよりはマシだろう

祐斗の体は何処も激痛に支配され、無様に膝をついてしまう

「祐斗……ッ!」

リアスが沈痛な表情で祐斗を呼び、一誠の駒を両手で握り締める

この場にいない一誠を頼ろうとしているかのようだった

朱乃も担架で昏睡状態にいる新の手を握り締め、小猫とレイヴェルもただ見ているだけ

先程の戦意はその場のみのモノ、彼女達を突き動かすまでには至っていなかった

「……木場さんまで死んでしまう……。いや……もう、こんなのは嫌です……」

アーシアは恐慌状態となりて、手を祐斗に向けて回復のオーラを放とうとするが……弱々しいオーラが出現するだけだった

恐らく、一誠を失ったショックで神器(セイクリッド・ギア)の能力が一時的に弱まっているのだろう

リアスと朱乃が何とか攻撃を加えようと魔力を放つが、勢いと威力はあまりにも弱々しく、ジークフリートの魔剣一振りに難なく払い除けられてしまう

小猫の闘気とレイヴェルの炎の翼も陰りを見せる

祐斗はルヴァル・フェニックスから貰ったフェニックスの涙を1つ取り出し、傷口にかけた

瞬時に痛みは取り除かれ、傷も塞がっていくが――――左腕の再生までには至らなかった

傷は治っても流血による体力減少は著しく、祐斗の足が震える

その状況を見てジークフリートとアドラスが嘲笑した

『酷いな。先日出会った時のグレモリー眷属とは思えない。先程、良い殺気を放ってくれたから、木場祐斗との戦いに乱入でもしてくれるものかと期待したんだけどね。まさか、この程度とは……』

「ヒャッハッハッ!無様だな、クソ剣士!俺様を殺すとか言いやがったくせに、トンだホラ吹き野郎じゃねぇか!決めたぜ、同時にブッ殺すのは止めた。まずはグレモリーのクソ剣士からだ。ジークフリートって言ったか?どっちがあのクソ剣士をブッ殺すか、早殺しゲームと行こうじゃねえか」

『フッ、敵側から提案を貰うとはね。まあ、彼を先に片付けた方が良いのは否めないけど』

更にピンチ、この最悪の状況下でアドラスとジークフリートが一時的な協定を結び、バトルロイヤルから2対1の戦いに変わってしまった

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