小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「ギャスパー、トレーニングの成果、期待するわよ!」

リアスにそう言われるギャスパーだったが、何故か伏し目がちで顔色が優れない

「……は、はい、期待に添えるよう頑張りますぅ。……あれ?イッセー先輩は?それに、新先輩は?どうして寝てるんですか?」

ここにいない一誠を探すギャスパー

どうやら一誠の死(生存説あり)と新の昏睡(早期復活予定)はまだ伝わっていないようだ

「イッセーくんは――――」

祐斗がギャスパーに詳細を説明しようとした時、小猫がとある方向を指差す

その方角に視線を送ると、遠目に黒い巨大なドラゴン――――龍王化した匙が黒炎を巻き上げて暴れている様子が見えた

全員がそれに視認するや否や、そのまま翼を広げて空に飛び出していった



―――――――――



高層ビルが建ち並ぶ区域の広い車道に降り立ったグレモリー陣営

そこは既に戦火に包まれており、建物や道路、公共物が大きく破壊されていた

「グレモリー眷属!」

聞き覚えのある声に引かれてそちらに振り向くと、タイヤが外れた1台のバスを守るようにして囲むシトリー眷属の姿が見え、バスの中には大勢の子供達が乗っていた

「状況は?」

リアスがシトリー眷属『騎士(ナイト)』の巡巴柄に問う

「このバスを先導している最中に英雄派と出くわしてしまいまして……。相手はこちらがシトリー眷属だと分かると突然攻撃を仕掛けてきたんです。バスが軽く攻撃を受けて機能を停止してしまったのでここで応戦するしかなくて……会長と、副会長と、元ちゃんが……っ!」

「――――ッ!あれを!」

巡が涙混じりに言うと、ロスヴァイセが右手側を指差す

ショップが立ち並ぶ歩道で英雄派のヘラクレスに喉元を掴まれている匙の姿が映り込んだ

匙は既に体中が血だらけで意識を失いかけていた

その近くにはソーナが路面に横たわり、英雄派のジャンヌと戦っている真羅椿姫がいた

ヘラクレスはつまらなそうに匙を放り捨てると、倒れているソーナの背中を踏みつけた

「ぐぅっ!」

「んだよ、レーティングゲームで大公アガレスに勝ったって言うから期待してたのによ。こんなもんかよ」

「ふざけないでッ!子供の乗ったバスばかりを執拗に狙ってきたくせに!それを庇う為に会長も匙も実力を出し切れなかったのよッ!そうするように仕掛けたのはあなた達じゃないのッ!」

真羅椿姫が涙を流しながら激昂し、表情は悔しさと怒りに染め上がっていた

状況から察するに、ヘラクレスは子供達が乗っているバスを狙ってソーナと匙を攻撃したようだ

あまりに卑劣極まりない行為に祐斗は内心で爆発しかけていた

敵はヘラクレスとジャンヌだけで、曹操とゲオルクの姿は見えない

真羅椿姫を聖剣で突き返すジャンヌが嘆息した

「私はそんな事するのやめておけばって言ったけど?まあ、ヘラクレスを止める事もしなかったけれどっ!」

ジャンヌが周囲に聖剣を幾重にも発生させて、真羅椿姫の足場を破壊する

体勢を崩した椿姫にジャンヌは聖剣を振るうが、祐斗は一瞬で間合いを詰めてその一撃を抜刀したグラムで防いだ

「いい加減にしてくれないかな」

祐斗は低い声音を発し、ジャンヌは祐斗が手にしているグラムを見て仰天する

「……グラム!?まさか、ジークフリートが!?」

「ああ、僕達が倒した。このグラムは僕を新しい主に選んだらしい」

祐斗の腰にはグラムの他、ジークフリートが所持していた魔剣全てが鞘に収まっている

ジークフリートとアドラスを倒した後、他の魔剣4本も祐斗を主として認めた

「へっ!こんな奴らに負けるなんて、あいつもたかが知れてたって訳だ」

戦死したジークフリートを嘲笑うヘラクレス

英雄派に仲間意識の様なモノは無いようだ

「……英雄派の正規メンバーがやられ続きか。グレモリー眷属にこれ以上関わると根こそぎ全滅しかねないな」

後方から第三者の声

霧と共に現れたのは神滅具(ロンギヌス)『絶霧(ディメンション・ロスト)』使いのゲオルクだった

「悪いな、ヘラクレス、ジャンヌ。そのヴリトラの黒い炎が予想よりも遥かに濃かったものだから、異空間での解呪に時間が掛かった。解呪専用の結界空間を組んだのは久しぶりだ。――――伝説通り、呪いや縛りに長けた能力のようだ、ヴリトラ」

「はっ!未成熟とは言え、龍王の一角をやっちまうなんてな!流石は神滅具(ロンギヌス)所有者ってところだな、ゲオルク!」

ヘラクレスはゲオルクを称賛した

どうやら今はゲオルクが中心となって行動しているようだ

祐斗は右手にグラム、左手に聖魔剣を出現させて2本の剣を振るう

剣から発生した攻撃的なオーラがヘラクレスとジャンヌに向かっていく

2人は軽々と避けるが、その隙に祐斗は椿姫を抱えて、倒れているソーナと匙のもとに駆け寄った

「速いな!」

ゲオルクの手元に魔法形式の魔方陣が出現する

祐斗は聖魔剣を聖剣に変えて命じた

「騎士団よ!」

祐斗の周囲に龍騎士団が現れ、騎士団は3人を抱えてリアス達のもとに向かっていった

ゲオルクが放つ巨大な炎の球体はグラムで両断し、一連の動きを見たゲオルクが驚嘆の言葉を漏らす

「……強い。我ら3人を相手にして尚、仲間も全て救うとは……。これが聖魔剣の木場祐斗か。あの赤龍帝と闇皇の陰に隠れがちだが、リアス・グレモリーは恐ろしいナイトを有しているな」

「お褒めに預かり光栄……と言えば良いのかな。僕は影で良いのさ。ヒーローはイッセーくんと新くんだ。僕はただのリアス・グレモリーの剣で良い」

「しっかりしてください!」

アーシアがソーナと匙の回復を始め、緑色の淡いオーラが発生していく

「……子供が大事に握り締めてたんだ……おっぱいドラゴンの人形を……蝙蝠皇帝の人形を……ここで……あの子達にケガさせちまったら……俺はあいつらの背中を二度と追い掛けられなくなる……」

回復されている匙が微かな意識でそう漏らし、心底悔しそうに涙を浮かべていた

「椿姫、私達が彼らの相手をするわ。その間にバスにいる子供達の避難をお願い出来ないかしら?」

「……けれど」

「お願いします、副会長。あなた達が受けた分は僕達が返しますから。匙くんやあなたの想いは受け取りました」

「……木場くん。はい、分かりました」

祐斗の申し出に椿姫は素直に応じた

これで子供達は安全だろう

ゼノヴィアが昏睡している新をリアスの近くに下ろし、リアスに結界を張って貰ってから一歩前に出る

「さて、やるか。せっかくデュランダルを鍛え直したんだ。暴れさせないとダメだろう」

ゼノヴィアが布にくるまった得物から布を取り払う

そこには一度曹操に破壊されたが、元通りに修復されたエクス・デュランダルの姿があった

修復を終え、更に『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』も足して鍛え直された

形の変化は見られないが、圧縮された濃密な聖剣のオーラが刀身を覆っていた

7本のエクスカリバーが付与されたデュランダル、そのスペックは凄まじいモノが予想されるだろう

「こっちも良いのを貰ってきたんだから!」

イリナが腰に帯剣していた剣を抜き放つ

イリナが持っているのは――――なんと聖魔剣だった

祐斗はそれを見て仰天し、その反応を見たイリナが微笑む

「ええ、そうよ。これは三大勢力が同盟を結ぶ時に悪魔側が天界に提供した木場くんの聖魔剣から作り出した量産型の聖魔剣なの!これは試作の1本!天使が持てるようにかなりカスタマイズされて作られたようだけれどね。木場くんの聖魔剣ほど多様で強くはないけれど、天使が持つ分には充分だわ!」

祐斗の聖魔剣は三大勢力の良い糧となっていた

ゼノヴィアはデュランダルの切っ先をジャンヌに向ける

「ジークフリートに借りがあったんだが、木場や部長達が倒してしまったのなら、仕方が無い。お前から倒そう」

ゼノヴィアの挑戦的な物言いにイリナも同意する

「そうよそうよ!いくら聖人の魂を受け継いだとしても、あなたはダメダメよ!」

イリナもゼノヴィアの真似をして聖魔剣の切っ先をジャンヌに向けたその時――――

「だったら、お前らはそいつらより劣らねぇってのか?ゼノヴィア、イリナ」

何処からかドスの利いた声が聞こえてくる

全員がその方角に視線を向けると、建物の陰から2人の人物が現れた

1人は太陽の如く赤い髪と頬に傷を持ち、黒い刀身の剣を肩に乗せた男

それはゼノヴィアとイリナにとって一番ツラい相手だった……

「「剣護さん……ッ」」

ゼノヴィアとイリナは絞り出すように男の名前を呼ぶ

2人の上司で『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』の使い手――――神代剣護

彼は神がいなくなった世界と人々の視線に不満を生じさせ、自ら人道を踏み外して闇人組織『チェス』の『ナイト』となったのだ

肩に乗せた剣も『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』を神風に改造してもらい、邪悪な力を秘めた邪聖剣――――『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』と化しており、更に剣護は背中にもう1本の剣を鞘に収めていた

「私もいるのをお忘れなく」

礼儀正しく挨拶するもう1人はアドラスと同じく、神風一味に属している全身鎧(プレート・アーマー)に覆われた竜人型の闇人メタル

こちらも鎧の形状が少し変化しており、禍々しいオーラが際立っていた

「何か面白いイベントは無いものかと辺りを散策していたら、神代剣護が君達を見つけたのでね。グレモリー眷属だけでなく英雄派とも対面するとは幸運だ」

メタルは狂喜に彩られた笑みを浮かべ、剣護はゼノヴィアとイリナを睨み付ける

「ゼノヴィア、イリナ、ケリを着ける良い機会だ。今日ここでお前らを灰にしてやる」

ゼノヴィアとイリナは出来れば剣護とは戦いたくないと過らせるが、もうこれ以上罪を重ねて欲しくないと言う想いも沸き上がらせる

そして……遂に覚悟を決めた

「――――もうこれ以上あなたの行いを放っておく事は出来ません。剣護さん、私はあなたと戦う」

「私も!剣護さん、私達はもうあの時とは違います!私とゼノヴィアであなたを止めてみせる!」

意を決した2人は剣護にそれぞれの得物を向け、剣護は僅かに口の端を吊り上げた

「良い度胸だ。少し前まで戦いたくないとほざいていたガキが、立派に成長したものだな。だったら、俺も相応の本気を出すまでだ」

剣護は背中の鞘に収めている剣を抜き放つ

その剣は――――炎と氷が入り交じったかの様な刀身を持ち、熱気と冷気を漂わせていた

「コイツは元剣聖(ソードマスター)クリストファー・ガルゾークから契約の一環で譲り受けた炎魔剣ベガ、氷魔剣アルタイルを神風が融合させた魔剣――――合魔剣デネヴだ」

「クリストファー・ガルゾークから……!?あの時、彼の魔剣が消えたのはそういう事だったのか……ッ」

新たな魔剣を手にした剣護を見てグレモリー陣営に戦慄が渦巻く中、ジャンヌが不満げな顔で話し掛ける

「もうっ、お姉さんが指名を受けたのに横取りする気?失礼な人ね」

「ハッ、こいつらを灰にした後でお前もキッチリ灰にしてやる。ガタガタ抜かしてんじゃねぇ」

剣護は敵意むき出しの目で英雄派の3人を睨み、釘を刺してから直ぐに視線を戻す

『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』の柄に備わっている金色の十字架を取り外し、自らの顔に装着した

十字架から黒いオーラが霧状に溢れて全身を隈無く包み込んでいき――――剣護は『黒十字(こくじゅうじ)の鎧』を身に纏った

-29-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D リアス・グレモリー ~先輩のおっぱいひとりじめフィギュア~ (PVC塗装済み完成品)
新品 \3426
中古 \3753
(参考価格:\7980)