「ついて来い。いつまでも偶像にすがり付いている信仰心ごと、お前らを叩き潰してやる」
そう言って剣護はビルからビルへと飛び移って行き、ゼノヴィアとイリナはその後を追うように翼を広げて追い掛けていった
「あらあら、じゃあ彼女の相手は私がしましょうか。――――あれを持っているでしょうから」
「――――僕にも戦わせてください」
後方から聞こえてくる声
振り向くとそこには『光帝の鎧』所有者――――八代渉とパートナー高峰祐希那がいた
「渉くん!動いて平気なのかい?」
「はい、もう体調は万全ですよ。儀式が終わってから『遠見の鏡』を見て、ここにいると分かって直ぐに飛んできたんです。祐希那も都民の避難を終えて合流してくれましたし、フェリス達も今は僕の体内にいます」
「ええ、朱乃さん。私達も手伝うわ。戦力は多い方が良いでしょ?」
「あらあら、心強いですわね。じゃあお言葉に甘えさせてもらいますわ」
強力な助っ人の登場と申し出を受け入れる朱乃
朱乃は両手のブレスレットを金色に輝かせ、背中に六翼の羽を出現させた
渉も『光帝の鎧』を纏い、祐希那は神器(セイクリッド・ギア)『全凍結の氷斧(フリズド・クレバス)』を出し、直ぐに禁手(バランス・ブレイカー)『凍結させる拳闘士の氷鎧(アイス・グラディエイター・カスタムジャケット)』を発現した
3人からの挑戦にジャンヌは不敵な笑みを見せる
「へー、3人も相手をしてくれるんだ。それにそちらのお姉さんはあれを知っているようね。面白いわ!禁手化(バランス・ブレイク)!」
ジャンヌの背後から聖剣によって創造されたドラゴンが出現する
『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』の亜種禁手(バランス・ブレイカー)は相変わらず濃厚な重圧を出していた
「ついてらっしゃい!悪魔に堕天使、オマケにアーくんと雰囲気が似た闇人だなんて!私はモテモテね!」
ジャンヌは嬉々としながら聖剣ドラゴンの背中に乗り、ドラゴンは近くにある高層ビルの壁に手足を引っ掛けて高速で駆け上がっていく
朱乃、渉、祐希那は翼を広げて追い掛け、直ぐに空高くで激しいぶつかり合いを始めた
残るはヘラクレスとゲオルク、そしてメタルだけだった
祐斗はゲオルクに問う
「何故、あのバスを狙った?と言うよりも、何故首都リリスにいるんだい?」
「まず後者の方から答えようか。――――見学だ。曹操があの超巨大魔獣が何処まで攻め込む事が出来るか、その目で見てみたいと言うのでね」
ゲオルクはそう答える
英雄派がここに来た理由は見学、もしくは見学に来たと言う曹操の付き添いらしい
しかし、肝心の曹操がいない
「では、何故バスを狙った?」
祐斗が再度訊くと、ゲオルクは嘆息するだけだった
「偶然、そのバスと出くわしてな。そうしたら、ヴリトラの匙元士郎とシトリー眷属が乗っていたのだ。あちらもこちらの顔を知っている。まあ、相対する事になってしまうのも否めないだろう?」
偶然の相対と言うが、ヘラクレスは挑戦的な笑みを見せる
「俺が煽ったって面もあるぜ?偶然、あのヴリトラに出会ったんだ。魔獣の都市侵略の見学だけじゃ物足りなくなってな。『ガキ共を狙われたくなけりゃ戦え』って言ったんだよ。――――で、戦闘開始って訳だ」
「――――っ!そんなふざけた理由で戦いを始めたと言うのか……?」
ヘラクレスの言葉に祐斗は怒りを抑えきれない程に膨らませたその時――――
「英雄派は異形との戦いを望む英雄の集まりだと聞いていたが……どうやら、ただの外道がいたようだ」
「全くだな。腹立たしい事この上無い」
対峙しているリアス達の間に現れる男が2人いた
金色の体毛に包まれた巨躯の獅子を付き従える、純粋なまでの『力』の権化
何事も真っ向からの戦いで頂(いただき)を目指す闇人の王
「……サイラオーグ!」
「……蛟大牙!」
そう、サイラオーグ・バアルと闇人の『二代目キング』蛟大牙の登場だった
――――――――――
少し離れた場所に降り立つ神代剣護、その後を追ってきたゼノヴィアとイリナ
剣護は戦意と殺意をむき出しにして彼女達を再三睨む
「ここなら誰も邪魔は入らねぇだろう。思う存分、お前らを痛めつけられる」
「剣護さん、私はもう迷わない。新や部長達に牙を向けるようなら――――私はあなたを討つ」
「あなたのエクスカリバーも返してもらうわ!」
「ハッ、『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』を回収するだと?やれるもんならやってみろ」
右手の『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』、左手の合魔剣デネヴから禍々しい魔力のオーラが漂い、それが戦闘開始の合図となった……