小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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≪外法の融合≫


ドゴオォォォォォォォォォォォォォンッ!

一帯に鳴り響く豪快な破壊音

その正体は神代剣護が振るう『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』と合魔剣デネヴがビルや路面を破壊する音だった

あれから神代剣護VSゼノヴィア・イリナ組の激しい剣撃合戦が15分続き、ゼノヴィアとイリナは肩で息をしていた

『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』の火力と合魔剣デネヴの猛威は凄まじく、今いる場所を殆ど荒れ地へと変えた

『黒十字の鎧』で強化された剣護は首を鳴らす

「……思った以上にやるな。そいつがエクス・デュランダルってヤツか。7本のエクスカリバーを統合してデュランダルをパワーアップさせた。天界の技術も進歩してるって事か」

剣護はゼノヴィアが持つエクス・デュランダルを見据える

「だが、所詮使い手がクズじゃ宝の持ち腐れだ。7本のエクスカリバーを統合させたって事は――――その能力も付与されたんだろ?ゼノヴィア、お前はさっきから力任せにしか振るっちゃいねぇ。エクス・デュランダルの能力を出し切れてない」

核心を突かれたゼノヴィアは一瞬顔をしかめるが、すぐに首を小さく横に振って開き直る

「確かにこのエクス・デュランダルには7つに分かれたエクスカリバーの能力が全て付加されている。使いこなせば私は更なる強さを手に入れられるだろうな。だが、残念ながら私はバカだ。今すぐにテクニック云々となっても能力を使いこなせないだろう。だからこそ――――破壊のエクスカリバーとデュランダルのパワーに全てを費やす」

「圧倒的な破壊力宣言ね、ゼノヴィア!」

堂々と破壊力宣言したゼノヴィアを剣護は嘲笑う

「そのデュランダルが哀れだな、バカに使われてよ。それに……俺がお前らを笑う理由はまだある」

剣護は義手となっている左手から炎の弾丸を無数に放つ

ゼノヴィアはエクス・デュランダルを横薙ぎに振るって弾丸を打ち消し、イリナも量産型聖魔剣で防御する

次に剣護は合魔剣デネヴに魔力を注ぎ、炎の巨獣と氷の巨鳥を幾重にも作り出した

炎の巨獣は咆哮を上げ、氷の巨鳥は翼を広げてゼノヴィアとイリナに襲い掛かる

2人は複数の巨獣巨鳥の猛襲を躱しながらエクス・デュランダルと聖魔剣で対抗し、次々と巨獣巨鳥達を滅ぼしていく

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

ゼノヴィアが一気に距離を詰めてデュランダルを振り下ろし、剣護は邪聖剣と合魔剣をクロスして受け止める

両足が地面にめり込むが、決定打にはならず

剣護はゼノヴィアの腹に強烈な膝蹴りを入れた

「うぐぅっ!」

「まだまだ甘いんだよ、ゼノヴィア」

隙を作った剣護は邪聖剣で斬ろうとするが、イリナが飛び込み聖魔剣で剣撃を止めた

膝蹴りで怯まされたゼノヴィアもデュランダルに濃厚な聖なるオーラを纏わせて斬りかかり、剣護はそれを合魔剣デネヴで防ぐ

ゼノヴィアとイリナは幾多の戦いを通して少なからず劣化していないのだが、その2人がかりの攻撃を捌く神代剣護

思ったより強さを得ている2人に剣護はイラつきを見せた

「……気に入らねぇな。存在しない偶像に今もすがり付いてる様なバカ共に、この俺が手こずってるだと?お前らみたいなカスに殺られるなんざ――――あってたまるかッ!」

ゴオォォォォォォォォォォォォォッ!

『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』から高密度の炎が発され、ゼノヴィアとイリナは熱に耐えきれず離れる

「今までのお前らの戦い方を見てきて分かった。お前らは得物に頼りきっている。謂わば剣の力だけで勝ってきた様なもんだ。結局、自分自身じゃ誰1人倒しちゃいねぇ」

ドドドォンッ!

ギンッ!ギンッ!

左手から放たれた炎の弾丸がゼノヴィアとイリナの得物を弾き飛ばす

2人は直ぐに剣を拾おうとしたが、一瞬で間合いを詰めた剣護に刃を突きつけられてしまう

「……ッ!しまった……ッ!」

少しでも動けば首を斬られる……そう思った時、剣護は解せぬ行動を取った

2人の首に突きつけた剣を下ろし、「さっさと拾え」と言ってきた

その言動に困惑するゼノヴィアとイリナだったが、言われるまま自分達の得物を拾って距離を取り、ゼノヴィアが問う

「な、何故だ……?何故剣を下ろしたんですか……?」

「見極めただけだ。自らの得物を弾かれた時、己の力で対処出来るかどうかをな。結果は明らかだ。お前らは結局、自分自身じゃ何も出来ない。そんな奴らが俺を倒すだと?お笑いだな」

ゼノヴィアとイリナに侮蔑の言葉を浴びせる剣護

しかし、2人はその侮蔑を一蹴する

「確かに1人であなたと戦って勝つのは無茶だ。これまでの戦いでもそうだった。だからこそ、私はイリナや仲間達と一緒に戦ってきた。自分1人だけじゃ出来ない事も、仲間と共に力を合わせれば可能になる!」

「そうよ、剣護さん!ゼノヴィアとのコンビネーションで、私達はあなたに勝つんだから!」

「仲間だと?くだらんな。必要なのは他者を圧倒する絶対的な力だ。そして、その力を使いこなす自分自身の力だ。仲間なんて弱いモノや剣の力のみに頼りきっているお前らに――――俺を倒す事など不可能」

邪聖剣と合魔剣が強い魔力を帯び、幾重もの斬撃を放った

地を抉り、建物や僅かに残った公共物を切り裂きながら突き進む

ゼノヴィアとイリナは翼を広げ、空中を飛び回りながら身を捩って斬撃を躱す

「隙だらけなんだよッ!」

剣護は邪聖剣を振るって特大サイズの火炎を撃ち放った

「イリナ!デカいのを撃つ!直ぐに離れるんだ!」

「オーケー!」

エクス・デュランダルを振り上げ、聖なるオーラを極限にまで高めていく

イリナは攻撃圏外まで距離を取り、ゼノヴィアは巨大な火炎目掛けてデュランダルを振り下ろした

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

振り下ろされた刹那、デュランダルから極大の聖なるオーラが放出され、邪聖剣から放たれた巨大な火炎を正面から掻き消した

聖なるオーラはそのまま剣護のもとへ急降下していく

「フンッ!こんなもん、バカ正直に受けてたまるか」

「そうはいかないわッ!」

イリナが手元から光の矢を無数に放って剣護を撹乱

剣護の周りの地面に突き刺さった光の矢は強い閃光を解き放ち、その光量に剣護の視界が奪われた

「チィッ!鬱陶しいんだよッ!」

剣護は邪聖剣と合魔剣が放つ波動で閃光を打ち消すが、デュランダルの聖なるオーラは直ぐ近くまで接近していた

防ぐのは間に合わず、横に飛んで回避しようとしたが――――左腕の義手が聖なるオーラによって完全消滅してしまう

握っていた左義手から離脱した合魔剣デネヴ

ゼノヴィアはすかさずエクス・デュランダルを振り、合魔剣を破壊した

「チッ、やってくれたな」

「さあ、もう片腕だけでは私達には勝てない。大人しく降参してください。剣護さん」

「降参?何だそりゃ。それにお前らなんざ、ハンデが加わった方が丁度良いんだよ」

憎まれ口を叩きながら剣護は邪聖剣を路面に突き刺し、炎の竜巻を幾重にも発生させる

ゼノヴィアとイリナは竜巻を回避し、突っ込んできた剣護の邪聖剣を得物で防ぐ

剣護は脇腹に蹴りを見舞おうとしたが、片腕が無くなったので上手く体勢を整えられず勢いも出ない

ゼノヴィアの脇腹に蹴りが入るもダメージは少なく、直ぐにゼノヴィアとイリナに押し返された

ゼノヴィアはエクス・デュランダルで斬りかかり、剣護が『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』で止める

「イリナ、今だ!」

「剣護さんっ、覚悟ッ!」

イリナが左側から剣護に聖魔剣を振り下ろす

義手が無くなり、今なら倒せる……そう思っていた刹那、自分の目を疑う現象が起きた……

ガキィィィンッ!

鳴り響く鈍い音

その正体を目撃したゼノヴィアとイリナの顔は驚愕一色に塗り潰された

「……ッ!?な……何なんだ、これは……ッ!?」

「剣護さん……ッ!?あなた、いったい何を……ッ!?」

2人の仰天する様を見て剣護は愉快そうな口調で述べた

「あぁ、コイツか?――――俺の新しい腕だ」

剣護の言葉通り、消滅した左義手の肩口から腕が生えていた……

しかも、その腕は人間の腕ではなく、鱗に覆われた爬虫類の如き生物感を明らかにしていた

鱗に覆われた左腕が振り下ろされた聖魔剣を防ぎ、そのままゼノヴィアとイリナを薙ぎ払う

その直後、剣護の全身が震えを増し――――残る右手、両足が鎧を突き破って変異した姿を見せる

鱗に覆われた金色の四肢

そこから滲み出る邪悪極まりないオーラはゼノヴィアとイリナを震撼させた

剣護は変異した両腕両足を見せつけ、自ら経緯を明かす

「聞いた事あるだろう?ドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)所有者4人が殺害されたと言う事件を。あの主犯は俺だ。神風の実験とやらに付き合ったんだよ。殺した奴らから『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』を引き抜き、俺の四肢に直接移植した。元々通常種だったんだが、移植したお陰で亜種に変異した」

「――――ッ!剣護さん……ッ!そこまで堕ちたんですか……ッ!?」

「堕ちた?違うな。いずれ神に成り代わる者の進化と言うべきだ。この神器(セイクリッド・ギア)の所有者も、その強さの為に選ばれた――――やむを得ない贄に過ぎなかっただけだ」

「……酷い!いくらなんでも酷過ぎるッ!」

ゼノヴィアとイリナの猛抗議を剣護は一蹴する

「酷いだと?ハッ、過去に許しを求めてきた異端者や悪魔を問答無用で斬ったお前らがよく言えるな。俺が今やってるのは昔のお前らと同じ行動だ。しょうがねぇだろ?俺が神になる為なんだからよ。――――禁手化(バランス・ブレイク)……ッ」

力ある言葉を発した直後、剣護の四肢が『黒十字の鎧』と同化していき、顔面中央の十字架に1つ目が生じる

グキグキと兜の口が裂け、ドラゴンの様な牙を剥き出しにする

腰の付け根から尻尾が生え、剣護は黒と金色が混じり合った小型のドラゴンと化した

「これが『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』と亜種『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』の能力を融合させて発現した亜種の禁手(バランス・ブレイカー)――――『黄金龍と悪意の融合鎧(ゴルディ・バイス・ユナイト・ブラッククロスメイル)』。攻撃力、防御力、スピード、全てが倍増された俺にもはや死角など無い」

口の端を吊り上げ、前傾姿勢を取る剣護

ゼノヴィアとイリナはそれぞれの得物を構えるが、禁手化(バランス・ブレイク)した剣護は『騎士(ナイト)』を凌駕する超スピードで2人の背後に回り込んだ

「そらよォッ!」

禁手(バランス・ブレイカー)ドラゴンは尻尾を横薙ぎに振るってゼノヴィアとイリナを纏めて払い飛ばす

2人は血を吐きながら地面を転がる

堅牢な尻尾を打ち込まれた箇所は赤黒い痣となっていた

「ぐ……ッ!大丈夫、イリナ……?」

「な……何とか……ッ」

「お喋りしてる暇があるのかッ!」

『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』が縦に振り下ろされ、龍の形をした炎が複数放たれる

ゼノヴィアはデュランダルの斬撃で相殺し、イリナも立ち上がって光の矢を撃ち放った

「長期戦じゃ圧倒的に不利ね!一気に仕掛けるわよ、ゼノヴィア!」

「了解だ!」

先程と同じ様に聖なるオーラを飛ばすゼノヴィア

光の矢と聖なるオーラはそのまま直進していき、邪聖剣を携える小型ドラゴンに直撃して爆発を生む

そこへ更なる追撃、得物に力を注いだ2人は爆煙の中心に向かってデュランダルと聖魔剣を振り下ろした

ゼノヴィアとイリナの剣が標的に直撃した途端、大轟音が鳴り響いて衝撃が大地を破壊する

手応えは十二分にある、これならダメージは免れない

そう確信した時だった……

「――――言っただろ?今の俺に死角など無いってなぁ……」

「「―――――ッ!」」

禁手(バランス・ブレイカー)ドラゴンと化した神代剣護は直撃を受けたにもかかわらず、ダメージどころか傷1つ付いていなかった……

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