小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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≪新たなる進化≫


神代剣護に勝利したゼノヴィアとイリナ

両翼を収め、倒れている元上司に歩み寄る

「殺すなら、さっさと殺せ。もう何を信じりゃ良いのか分からなくなってきた。圧倒的な力を持ったのに勝てなかった」

剣護の言葉にゼノヴィアとイリナは首を横に振った

「剣護さん、あなたが今までしてきた行為は決して許されるものではありません。あなたには犯した罪を償ってもらいます」

「何年掛かってでも良い。剣護さん、ちゃんと罪を償って――――また私達に剣の稽古をしていただけますか?」

2人の言葉に剣護は一瞬目を丸くし……直後に僅かながら口の端を吊り上げた

「ハハ……ッ。外道に堕ちた俺を殺さず、罪を償わせようってのか?以前のお前らじゃ、あり得なかったのに……本当に変わったな、お前ら。だったら――――俺の逝き先はもう決まった」

意味深な言葉を放つ剣護

その近くで砕けた『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』がカタカタと震え始める

ゼノヴィアとイリナはその光景を訝しげに見つめる

「いよいよ聖剣を邪聖剣に改造したツケが回ってきたか……」

「ツケ?いったい何を言って――――」

「……ッ!?ゼノヴィア!剣護さんの手が!」

イリナの仰天声にゼノヴィアが視線を移すと――――剣護の体が手から徐々に粒子化していく光景が目に飛び込んできた

あまりに異常な事態にゼノヴィアも理解出来ず、現状について剣護が説明を始める

「この『灼熱の邪聖剣(デスカリバー・イグニッション)』……いや――――『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』は少し特殊な聖剣でな。魔剣みたく自我を持ってるんだよ。邪聖剣に改造する際、その代償に『砕かれたらお前自身を取り込み、元の剣に戻らせてもらう』って言われたんだ。つまり――――俺の肉体と魂を取り込んで、欠けた部分を治すのさ」

それを聞いてゼノヴィアとイリナは絶句した

『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』は他のエクスカリバーと違って自我を持っているらしく、邪聖剣への改造を条件付きで承諾していた

そして剣護が負けた時、肉体と魂を吸収すると言う魔剣宛らの契約も交わしていた

代償と共に得た強さだったが、2人に負けた事で剣護は『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』に取り込まれる事となった

粒子化していく剣護は自嘲する様に話し始めた

「所詮、外道に堕ちた奴の最期なんてロクなもんじゃねぇのさ……。死んでいなくなった神を見限り、口車に乗って聖剣を邪聖剣に改造した挙げ句、天国にも地獄にも逝けない。まぁ、俺にはお似合いの最期か……」

剣護の手と足は完全に粒子となって『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』に吸収され、ゼノヴィアはワナワナと震えて叫ぶ

「嫌だ……嫌だ嫌だ!剣護さんッ!そんなのあんまりだ!やっと、やっとあなたに並び立てたと言うのに!また私達の前から消えるなんてダメだッ!イリナ!お前も何とか言ってくれッ!このままでは剣護さんが消えてしまうんだぞ!?」

「そんな事……私だって分かってるわよ!でも、どうすれば良いの!?」

今の2人にはどうする事も出来ない……

無駄に泣き叫ぶ中、剣護の四肢は無くなり、遂に頭部と胴体になった

ゼノヴィアは粒子化していく剣護を離すもんかと言わんばかりに抱き締める

「剣護さん!もう私達の前から消えないでくれ!あなたはちゃんと罪を償わないといけないんだ!」

「ゼノヴィア、イリナ。お前ら昔は俺の背中をついてきたのに、いつの間にか成長したな……。随分女らしくなってきたよな……。良い男は出来たか?」

「剣護さん、遺言みたいな事を言わないでよ……ッ」

「剣護さん!良い男ならいるとも!私の好きな男は新だ!新は良い奴なんだ!強くて、優しくて、料理も美味くて……そうだ!私とイリナも料理を作るようになったんだ!卵焼きだろ……?磨り下ろしたホウレン草を混ぜた卵焼きに、桜エビを混ぜた卵焼き……それから――――」

「全部卵焼きじゃねぇか……ッ。でも――――」

剣護は軽く吹き出して苦笑を浮かべ、全身の殆どが聖剣に吸い込まれていく

そして最後にこう言い残した

「お前らが作った卵焼き、食ってみたかったなぁ……」

その言葉と涙を最後に、神代剣護は『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』に吸収されていった……

剣護が自らの手中から消え去った事を悟ったゼノヴィアは小さく首を横に振り、目から大粒の涙が流れる

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

空にまで響き渡るゼノヴィアの叫び

次に震えを止めた『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』に視線を向け、何とかしようと駆け寄って聖剣を握ろうとしたが――――

ゴオッ!

「熱ッ!」

『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』の放った熱に耐えられず手を離してしまう

「ゼノヴィア!?」

「な、なんて熱さだ……!剣護さんは、今までこんな剣を片手で扱っていたのか……?」

ゼノヴィアは『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』の力と神代剣護の強さを実感し、未だ拒絶するかの様に熱を放つ聖剣に近付く

「『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』、お願いだ……!剣護さんを、剣護さんを返してくれ……!やっと会いたい人に会えて、いつか超えたいと思っていた人を超える事が出来たのに……こんな仕打ちは無いだろう……?」

刀身に落ちるゼノヴィアの涙は虚しくも蒸発していく……

熱気で焼かれていく体を顧みず、ゼノヴィアは懇願し続けた

「肉体と魂が欲しいなら私のをくれてやる!手でも足でも、心臓でも持っていって構わない!だから――――剣護さんを……返してくれぇ……ッ!」

地に頭を付けて頼み込むゼノヴィア

その時――――『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』が強い輝きを放ち、何処かに向かっていく

向かった先はゼノヴィアのエクス・デュランダル

やがて『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』は1つの光球と化し、エクス・デュランダルを包み込む

眩い閃光が放たれた直後、光の中からエクス・デュランダルが解放された

ただし、形状が少し変わり赤い色を帯びていた

目の前で起きた現象に驚愕するゼノヴィアとイリナ

形が変わったエクス・デュランダルはゼノヴィアの前の地に突き刺さり、まるで迎え入れるかの様な優しい光を放つ

「こ、これは……?エクス・デュランダルが、変わった……?」

『それだけじゃないようだな』

「――――ッ!?剣護さん!?ど、どうしてエクス・デュランダルから剣護さんの声が!?」

ゼノヴィアとイリナは再び驚愕の事態に直面

今度はエクス・デュランダルから先程粒子となって消滅した神代剣護の声が聞こえてきた

エクス・デュランダル――――もとい剣護が何故自分がこうなったのか意識を通して『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』に訊く

『……………フッ。そういう事か。これが「灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)」の出した答えだってよ』

「「答え?」」

『ゼノヴィアは吸収された俺を返してくれって頼み込んだろ?散々非業の限りを尽くしてきた俺なんて、本来救われるべきじゃない。だが、お前は俺に罪を償わせようとした上、涙まで流して懇願してくれた。その心意気を気に入ったらしくてな。最善の方法を取ったんだと。「肉体は返せないが、魂だけでも話せるようにしてやる」って』

つまり『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』は先程の経緯でゼノヴィアを自分の主として認め、剣護に生きて罪を償わせたいと言う心意気に応えようと、自らをエクス・デュランダルと同化させ――――エクス・デュランダルを進化させた

その際に剣護の魂までは取らず、生まれ変わったエクス・デュランダルに定着させた

神代剣護は新エクス・デュランダルになったと言うべきだろう

『吸収した俺ごとエクス・デュランダルと同化した今、俺は新たなエクス・デュランダルとなった。「灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)」が言うには、今後お前らと一緒にいるのが俺の罪滅ぼしになるってよ』

「……ッ!」

剣護の言葉、『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』の意志を聞いてゼノヴィアは再び大粒の涙を溢れさせた

剣護の魂はエクス・デュランダルの中で生き続ける、『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』の粋な計らいに感涙を止められなかった

「もう、ゼノヴィア!剣護さんがいるのに泣いてたらみっともないわよ!」

「イリナだって、イリナだって顔中グショグショに濡らしてるじゃないか……ッ!」

「しょうがないじゃない!私だって嬉しいんだもぉんッ!うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんッ!」

『ったく……まだまだガキだな、お前らは。すぐに泣きやがって』

「グジュ……ッ。剣護さん、本当に良かった……。エクス・デュランダルとしてだが、これからは一緒に戦ってくれますか?」

『おっと。今の俺って言うか、コイツはエクス・デュランダルじゃねぇ。「灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)」の色が露骨に出てやがる。8本のエクスカリバーを統合させたデュランダル、差し詰め――――ブレイズ・エクス・デュランダルってトコロだ』

「ブレイズ・エクス・デュランダル……カッコいい名前だ。じゃあ早速、新や部長達の所に戻ろう。剣護さんも――――私達の仲間だ」

「そうね。剣護さんがいてくれるなら100人ドコロか1000人力よ!」

『……嬉しい事、言ってくれるじゃねぇか……』

ゼノヴィアは新たな武器ブレイズ・エクス・デュランダルを握って地面から引き抜き、イリナと共に翼を広げて空を飛び、ゆっくりながらもリアス達の所へ戻っていった

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