小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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場面変わって、リアス達の前に現れた獅子王サイラオーグ・バアルと『二代目キング』蛟大牙は『禍の団(カオス・ブリゲード)』英雄派のヘラクレスとゲオルク、更に神風軍団の闇人メタルと対峙していた

サイラオーグは金色の獅子レグルスをその場に留めさせ、一歩前に出る

大牙もサイラオーグと並ぶように前へ出た

「――――俺が行こう」

「オレも手伝ってやる」

上着を脱ぎ捨てたサイラオーグの身からは純粋な戦意――――闘気が放出されていた

『二代目キング』大牙も手や肩を鳴らして戦闘準備を整える

「首都で暴れ回っていた旧魔王派の残党と闇人を一通り屠ったトコロでな、遠目に黒いドラゴン――――匙元士郎の姿が見えた。ゲームでの記録映像でしか見た事の無い姿だったが、直ぐに理解した。――――強大な何かと戦っていると」

「オレも神風のクーデターに乗った闇人を始末している途中で見かけた。音に聞く大王バアル家の次期当主の姿も視認したから何かあるだろうと思って来てみれば――――やはり当たっていたか」

サイラオーグと大牙は英雄派とメタルに視線を向け、2人の戦意を受けたヘラクレスが嬉しそうな笑みを浮かべた

「バアル家の次期当主と闇人の『二代目キング』か。バアルの方は知ってるぜ?滅びの魔力が特色の大王バアル家で、滅びを持たずに生まれた無能な次期当主。悪魔のくせに肉弾戦しか出来ないって言うじゃねぇか。ハハハ、そんな訳の分からねぇ悪魔なんざ初めて聞いたぜ!」

ヘラクレスはサイラオーグを煽るが、サイラオーグは微塵も表情を変えない

恐らく、サイラオーグにとってこの程度の戯れ言は幾重にも浴びた罵詈雑言の小さな1つに過ぎず、気にする必要も無いのだろう

大牙が口を開く

「貴様が英雄ヘラクレスの魂を継ぐ者か?」

「ああ、そうだぜ、闇人のキングさんよ」

その答えを聞き、大牙はしかめっ面で溜め息をついた

「何かの冗談だろう。貴様の様な弱小者が英雄とは思えない」

「ああ、どうやら俺は勘違いしたようだ」

それを聞いたヘラクレスの額に青筋が浮かび上がる

「へっ、赤龍帝とそこで寝てる闇皇との殴打戦を繰り広げたらしいじゃねぇか。ダセェな。悪魔っていや魔力だ。魔力の塊、魔力での超常現象こそが悪魔だと言って良い。闇皇はまだマシだが、それが一切無い赤龍帝とあんたは何なんだろうな?」

「…………………」

「はぁ……煽るしか能が無いのか?この男は」

ヘラクレスがいくら煽ろうとサイラオーグは眉1つ動かさず、大牙は嘆息するだけだった

ヘラクレスの煽りが続く

「元祖ヘラクレスが倒したって言うネメアの獅子の神器(セイクリッド・ギア)を手に入れているって言うじゃねぇか。――――皮肉だな、俺と会うなんてよ。それを使わなきゃ俺には勝てないぜ?」

ヘラクレスの物言いをサイラオーグは一言で断ずる

「使わん」

「は?」

ヘラクレスは更にコメカミに青筋を浮かび上がらせ、怒りの口調で問い返すが……

「貴様ごときに獅子の衣は使わん。どう見ても貴様が赤龍帝と闇皇よりも強いとは思えないからな」

「確かに。戦いで関係の無い者を狙いながら攻撃する様な輩など、三下、卑怯者以外の表現が見つからん」

サイラオーグと大牙はそう断ずるだけだった

それを聞いたヘラクレスは哄笑を上げる

「ハハハハ!俺の神器(セイクリッド・ギア)爆破出来ない物はねぇのよ!たとえ、闘気に包まれたってな!俺の神器(セイクリッド・ギア)にかかれば造作もねぇよ!」

ヘラクレスは手にオーラを纏わせながら飛び出し、サイラオーグの両腕を掴むと同時に爆破攻撃を開始した

ヘラクレスの神器(セイクリッド・ギア)『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』は攻撃と共に対象物を爆破する能力を持つ

爆音と共にサイラオーグの両腕が爆(は)ぜる

「お次はてめぇだ!」

ヘラクレスが大牙に拳打を打ち込んで再び爆破させる

爆煙に包まれた大牙

やがて煙が晴れると……

「なるほど。――――こんな物か」

「英雄と言うからどんな物かと思えば、案外大した事は無いな」

サイラオーグと大牙は平然としていた

肉が爆ぜ、血が噴き出ていても全く表情を変えていない

ヘラクレスは完全に激怒した様子で両手のオーラを高まらせる

「へへへ、言ってくれるじゃねぇか。じゃあ、これでどうよッ!?」

路面に向けて拳を連打で繰り出し、路面ごと大規模に起きた爆破がサイラオーグと大牙を包み込む

煙、塵、埃が渦を巻いて辺り一面を激しく覆い、路面は完全に崩壊して瓦礫の山と化した

瓦礫の上でヘラクレスが再び哄笑を上げる

「ハハハハハハハハッ!ほら見た事かよ!何も出来ずに散りやがった!これだから魔力もねぇ悪魔は出来損ないってんだよ!たかが体術だけで何が出来るって――――」

そこまで言ってヘラクレスの口が止まり、表情も驚愕に包まれた

煙が止んだ車道の中央でサイラオーグと大牙は何事も無かったかの様に立っていたからだ

全身に軽度のダメージを負い、血を流しているが2人は表情を一切変えていなかった

「――――こんな物か?」

「やはり大した事無いな」

サイラオーグは全く闘気を薄めず、大牙は嘆息しながら『蛇神皇の鎧』を展開した

2人の様子にヘラクレスの表情が軽く戦慄する

「……ナメんな、クソ悪魔にクソ闇人がッ!」

毒づくが、先程の余裕は無くなった

そのヘラクレスにサイラオーグと大牙は一歩ずつ間合いを詰めていく

「英雄ヘラクレスの魂を引き継ぎし人間と言うから、少しは期待したのだが……。どうやら、俺の期待は悉く裏切られたようだ」

ヘラクレスが再び両手を構えるが、サイラオーグは瞬時にヘラクレスの眼前まで移動した

「俺の番だ」

ドズンッ!

サイラオーグの重く鋭い拳打がヘラクレスの腹部に深々と突き刺さり、その一撃の衝撃はヘラクレスの体を通り抜けて後方のビルまで破壊する

「――――ッッッ!?」

予想以上の破壊力だったせいか、ヘラクレスの顔が当惑→苦悶へと変わる

その場に膝をつき、腹部を手で押さえ、更に口から血反吐が吐き出される

たった一発で形勢が逆転してしまった……

大牙がサイラオーグに近付く

「バアル家の次期当主、サイラオーグと言ったか。見事な威力の拳だな」

「闇人の『二代目キング』から褒めの言葉を受け取るとは。敵と言えど光栄だ」

「ところで、赤龍帝と闇皇はどうだった?強かっただろう?」

「ああ、この一撃をくらっても一切怯まずに立ち向かってきた」

「そうだろうな。そうでなければ、魔族の頂を目指すオレの相手に相応しくない」

そう言った直後に大牙の姿が消え、うずくまるヘラクレスの顔面に鋭い蹴りが入る

反応すら出来なかったヘラクレスは路面を転がり、ビルの壁に激突した

「どうした?英雄ヘラクレスとやら。こんな拳や蹴りの一発で倒れるようなザマで、よく赤龍帝と闇皇をバカに出来たモノだな」

それを聞いたヘラクレスはくぐもった声音で不気味な笑いを発し、同時に激情に駆られた憤怒の形相で立ち上がった

「…………ふざけるな……ッ!ふざけるなよ、クソ悪魔ごときがァッ!クソ闇人ごときがよォォォォォッ!魔力もねぇ!神器(セイクリッド・ギア)も使えねぇ!ただの打撃でこの俺が――――」

激昂するヘラクレスは全身を輝かせ、体を包む光がミサイルの様な突起物を形成させていく

『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』の禁手(バランス・ブレイカー)、『超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)』を発動させた

「やられる訳ねぇだろうがよォォォォォォォォォォオオオオオオッ!」

叫声を上げながらヘラクレスは全身のミサイルを縦横無尽に放出

無数のミサイルが町中の建物、路面、公共物を大きく破壊していく

「ふんッ!」

サイラオーグは飛んできたミサイルを避けずに、拳だけで弾いて吹き飛ばす

大牙は手から細剣を出現させ、刀身をチェーン状に伸ばして飛んできたミサイルを小間切れにしていく

大王次期当主と『二代目キング』に向かっていく全てのミサイルが拳によって弾かれ、細剣によって切り刻まれる

撃ち出されたミサイルが1つだけ避難を始めていた子供達のもとに飛来していく

祐斗は思わず駆け出しそうになるが、先にロスヴァイセが子供達の前に入って防御魔方陣を展開

そのままミサイルの爆撃を完全に防いだ

「――――新しい防御魔法です。私は『戦車(ルーク)』ですので、それならば特性――――防御力を高めようと思いまして。故郷で強力な防御魔法をあらかた覚えてきました。特性を活かしつつ魔法を使えば禁手化(バランス・ブレイク)して破壊力に特化した神器(セイクリッド・ギア)の攻撃でも余裕で耐えられるようです。これは大きな成果ね」

ロスヴァイセが故郷の北欧に帰還した理由は自らの特性を高める為

強固な防御魔法を覚える事で自身の防御力を底上げした

『凄い……!グレモリー眷属はどんどん強くなっているよ、イッセーくん!新くん!』

祐斗が仲間の強化に喜ぶ中、突然子供達から声援が送られた

「ライオンさん!がんばってぇぇぇっ!」

「ライオーンッ!負けないでぇぇっ!」

それはヘラクレスと対峙するサイラオーグへの声援

その声援が予想外の物だったのか、本人はキョトンとしていた

それだけでなく――――

「ヘビさんはライオンさんのおともだち?」

「へ、ヘビさんって……オレの事か?ま、まぁ、今はそんなトコロだ」

1人の子供から指を差された大牙は戸惑いながら答えるしかなかった

茶を濁す様な答えを出されたにもかかわらず、子供達は叫んだ

「ヘビさんもがんばって!」

「ヘビさん!ファイトーッ!」

なんと大牙にも声援を送り出した

サイラオーグ同様キョトンとする大牙

次第に微かな笑いを上げ、声援を受けたサイラオーグも嬉しそうに笑いを上げる

「ふはははははははっ!」

サイラオーグの闘気が勢いを増し、大牙は照れ臭そうに兜の頭を掻く

「あの子達から『がんばって』と、『負けないで』と言われてしまった。心地よいモノだな、兵藤一誠。これが子供達から貰える力か」

「バアル家の次期当主サイラオーグ。どうやらオレはお前の友達と言う理由だけで声援が送られたらしい。……不思議な気分だ。本来お前達と敵対している筈のオレが声援を受けた上に、何故か体の奥底から力が湧いてくる。これが――――赤龍帝と闇皇が貰っている想いの力とやらか。悪くない」

大牙は魔力を高め、それを火柱の如く天に上昇させる

サイラオーグと大牙は口を揃えてヘラクレスに言い放った

「「貴様に負ける道理は一切無くなったぞ、英雄ヘラクレスよ」」

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