小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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「あぁっ!?ガキにピーチクパーチク言われただけで喜んでんじゃねぇよォォォッ!脳無し大王とクソヘビがッ!」

悪態をつくヘラクレスの顔面に2つの拳が撃ち込まれる

顔の穴と言う穴から血しぶきを撒き散らし、ヘラクレスは地に膝をつけた

「……なんなんだよ……このパンチは……ッ」

大王と蛇神皇の拳を受ける程、ヘラクレスの怯えが増していく

ただのパンチが敵の肉体と精神を深く、芯まで抉る

「子供から声援すら貰えない者が英雄を名乗るな……ッ!」

サイラオーグが迫力に満ちた顔をヘラクレスに向け、大牙は無言の圧力を浴びせる

ヘラクレスは力でも精神でも両者に敵う見込みが無いと悟ったのか、絶望し切った表情となっていた

しかし、懐に手を入れて――――ピストル型の注射器と小瓶に入ったフェニックスの涙を取り出した

ピストル型の注射器はジークフリートが使用していたドーピング剤『魔人化(カオス・ブレイク)』

流れから察するに、フェニックスの涙で体力を回復させてから『魔人化(カオス・ブレイク)』を打つつもりだろう

「く、くそったれめがッ!」

毒づきながらヘラクレスは注射器の先端を首もとに近付けるが――――何故かその手には迷いがあった

その状況を見てサイラオーグは問う

「どうした、それらを使わないのか?察するに強化出来るのだろう?使いたければ使え。俺は一向に構わんッ!それで強くなるのなら、俺は喜んで受け入れようッ!俺はそのお前を超えていくッ!」

「強者を倒さずして頂を目指すなどおこがましい。強者を倒してこそ頂点に立つ資格がある。貴様も英雄の肩書きを持つ人間なら――――意地を見せてみろ!」

サイラオーグと大牙は威風堂々たる大王と『二代目キング』の風格を見せつけた

ヘラクレスは悔しさに表情を歪ませ、目にはうっすらと涙が浮かぶ

「ちくしょぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおっ!」

ヘラクレスは大声を張り上げて泣き叫び――――『魔人化(カオス・ブレイク)』とフェニックスの涙を投げ捨てた

あまりに予想外の展開に祐斗は驚愕し、ヘラクレスは拳を構えて大王と蛇神皇に正面から突っ込んでいく

サイラオーグと大牙はその姿を見て、初めて構えを取った

「最後の最後で英雄としての誇りを取り戻したようだな」

「悪くない。だが――――」

サイラオーグと大牙は右拳にそれぞれ闘気と魔力を猛らせ――――

「「この一撃で果てろッ!」」

ヘラクレスの腹部に拳を撃ち込んだ

小気味の良い音が一帯に木霊し、ヘラクレスは完全に意識を絶たれて路面に突っ伏した

そんな中、祐斗の脳裏に一誠がバアル戦後に漏らした言葉が過る

『なあ、木場。不思議なんだよ、サイラオーグさんってさ。あのヒトと真っ正面からの殴り合いなんてバカげてる、避けて当然だと俺だって思うんだ。――――けどさ、頭でそう思ってもやっちまうんだよ。気付いたら、あのヒトの顔面を殴ってる俺がいるんだ。そういうヒトなんだよ、あのヒトは。拳を打ち合いたくなるのさ。そこに理屈なんてねぇんだ』

ヘラクレスを打倒した大王と蛇神皇の姿は祐斗の目に雄大に映った

パチパチパチパチ……

そこへ鳴る拍手の音

戦いを見ていた闇人メタルが歩み寄ってくる

「素晴らしい。これが大王バアル家の次期当主と『二代目キング』か。いやー、なかなかの刺激を与えてくれて感謝するよ。お陰で私の闘争心にも火が点いた」

サイラオーグと大牙を称賛するメタルは歩みを止め、倒れているヘラクレスを見下ろす

「さて、倒れているコイツは邪魔だろう?私が片付けてやろう」

メタルはそう言って右足で意識の無いヘラクレスを蹴り上げ、そのまま彼の巨体を自らの足に乗せ――――

「ゴミはゴミらしく寝ていろ」

ブゥンッ!ドゴォッ!

崩壊した建物の残骸に放り投げた

既に戦闘不能となった者への蛮行に祐斗は怒り、サイラオーグは眉根を潜めて言う

「倒れた者に攻撃を加えるのが貴様の流儀か?」

「攻撃?私は攻撃などしていない。ただ転がっているゴミを掃除しただけだ」

メタルは愉快そうな口調で言い、拳や肩、首をコキコキと鳴らす

「是非、私と打撃合戦をしてくれ。かの有名な獅子王と『二代目キング』の競演に直面するなど、この先無いだろうからね」

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