小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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≪強さの使い方≫


「装甲強化(アームド・アップ)!レベル?(ワン)!」

メタルは自らの肉体を強化する術を発動し、両手が禍々しい形状の手甲に覆われる

アドラスと同じ様にブラックウィドーズを体内に取り込んだのだろう、以前の京都戦より強さを増したのは間違いない

「さぁ、始めようかッ!」

メタルは前に駆け出し、右拳打と左拳打をそれぞれ両者の腹部に撃ち込んだ

打撃音がドデカく鳴り、打撃時の衝撃が2人の体を突き抜ける

「……なるほど。言うだけの事はあるようだな。だが――――」

サイラオーグと大牙はメタルの拳打を耐え抜き、互いに右拳でメタルの顔面を撃ち抜いた

「ぐおぉぉぉぉっ!」

メタルは荒れ果てた路面にバウンドし、不規則に回転しながら宙を舞う

ドサッと地に落ちるも、直ぐに立ち上がって面白そうに笑いを込み上げた

「……ハッハッハッハッ。やはり素晴らしい。これが大王と蛇神皇の拳か。私はこの様な奮起を待ち望んでいたのだよ。数多の強者と打ち合う為に強さを得た甲斐があったと言うモノだ」

自らの顔面から垂れる血と傷を見ても慌てず、寧ろ今の状況に歓喜している

上機嫌になったメタルは突如自分の生い立ちについて話し始めた

「私はドラゴンの中で最弱な種族――――リザードマン出身でな。昔は他の魔族から弱虫だのザコだの、散々虐げられてきた。何の取り柄も無いリザードマンが伸し上がるには強さを得るしか無かった。その為に私は死に物狂いで自分を鍛えた。何百、何千、何万、何億と言う鍛練を重ね――――私を虐げた連中は全て殺した。この拳で、この足で」

リザードマンとはただ知能が発達しただけの亜人で、炎すら吐けず、翼も生えてない

ドラゴン系統の魔族の中でも最弱で、そのレッテルは今も貼られている

それ故にリザードマンとして生まれた者はまともな生き方が出来ない

メタルは更に話を続けた

「今まで私を虐げた奴らは、私の強さを知った途端に泣きついて命乞いをしてきたよ。いやー、あの時の顔は愉快だった。そして快感だった。生まれ変わった私の強さにひれ伏し怯える姿は今でも脳裏に焼き付いている。力とは素晴らしい。知性や財力、権力が無くとも、他者を屈服させる事が出来る唯一絶対の理(ことわり)。強さを身に付ければ自ずと金も権力も手に入る。バアル家の次期当主、君も自分の力を世界に認めさせる為に拳を振るっているのだろう?」

メタルの言葉にサイラオーグは眉根をピクリと動かす

「聞くトコロに寄ると、かつて君も滅びの魔力を持たないが故に同じ悪魔から虐げられてきた。謂わば、私と似た境遇を持っている。ドン底から這い上がる為、君を見下した者達をブチのめす為に拳を鍛え、強さを身に付けたのだろう?分かる分かる。何の取り柄も無い、滅びの魔力を持たないだけで虐げる輩は死ぬべき……いや、死んで当然だ。君もその拳で色々なモノを破壊して――――」

「貴様の拳と一緒にするな」

一方的に話を進めるメタルを一喝して止めるサイラオーグ

怒りが混じった闘気を漂わせ、メタルの持論を全否定する

「俺が拳を鍛えたのは――――自分の夢を叶える為だ。夢を背負い、信念を背負ってここまで来た。確かに俺と戦って再起不能になった者もいる。だが……俺は自らの誇りと夢を懸けて、全力で相手にソレをぶつけた。一切妥協などしない。妥協すれば、逆に命を懸けてでも向かってくる相手に失礼なだけだ。お前の拳には信念が無いッ!」

サイラオーグに続き、大牙もメタルの持論に異議を唱えた

「貴様は快楽を得る為、道楽の為だけに戦っているようだな。オレやサイラオーグ・バアルの様に、勝利に対する執念が欠片も無い。そんな汚れた拳しか持ってない奴が――――強さを語るな」

若干怒りの色を混ぜた口調で言う大牙

持論を全否定されたメタルは目元を手で覆い隠すが……直ぐに哄笑を上げた

「どんな理屈を語ろうが、結局全てを証明するのは力だ。強さの上にしか正当性は与えられない。装甲強化(アームド・アップ)!レベル?(ツー)!」

メタルの両足が鋭利なフォルムに変貌し、瞬時に残像が幾重にも映る程の高速移動を開始――――そのままサイラオーグと大牙に拳と蹴りの嵐を浴びせる

「ハハハハハッ!防ぐだけで精一杯なのか?」

メタルが哄笑を上げながら攻撃を続ける中、サイラオーグの目はしっかりと相手を捉えていた

まるでタイミングを見計らうかの様にメタルの動きを追い掛ける

そして自らの正面に差し掛かった刹那――――

「ふんッ!」

ドゴオォッ!

サイラオーグの拳が再びメタルの顔面を撃ち抜き、ビルの壁まで飛ばした

壁に激突したメタルは落下してきた瓦礫に呑み込まれる

「あくまで正面から、それがお前の戦い方か。他の奴には出来ない戦い方だ」

大牙もサイラオーグの強さと戦い方を称賛

瓦礫の山が徐々に崩れ、メタルが姿を現す

「ハハハハハッ!あくまで正面から打ち合うと!それが獅子王と呼ばれし君のバトルスタイルか、感服したぞ!ならば、私も更にギアを上げるかッ!装甲強化(アームド・アップ)!レベル?(スリー)!」

メタルの鎧がより頑強さを増すと同時に全身から闘気が漂い、メタルはサイラオーグと同じ様に正面から向かっていった

拳打の乱舞を繰り出すメタル

それを拳で弾き返すサイラオーグと大牙

メタルはレベル毎に強さを増していくので、厚い鎧に覆われた拳を打ち返していると――――流石にサイラオーグと言えど血が飛び散り始める

生身の拳打を絶え間無く繰り出していれば当然の結果だろう

「ほう!まだまだ余裕があるみたいだな!しかし、こちらの腕もまだまだ上がるぞ!装甲強化(アームド・アップ)!レベル?(フォー)!」

メタルの両腕に細かな突起物が無数に隆起、更に攻撃力と凶悪性が増す

生身で連打するサイラオーグの拳が赤く染まっていく

「チッ、ブラックウィドーズとやらは想像以上に厄介だな」

大牙は兜の中で舌打ち、メタルの両拳に禍々しいオーラが渦巻く

「これで――――終わるかァッ!?」

ドゴオォォンッ!

左右の拳打が大王と蛇神皇の顔面を捉え、インパクトの勢いで2人は滑るかの如く地面を削りながら大きく下がっていくが――――踏ん張りを利かせて後退を防いだ

大牙の兜の一部が割れ、サイラオーグの顔からも血が垂れてくる

しかし、それで大王と蛇神皇の戦意が消える事は無かった……

眼力を強くするサイラオーグと大牙に、メタルの拳がは震える

「ハ、ハハ……ッ、ハハハハハッ!ここまで打ってもまだ倒れないとは!これだから戦いはやめられないんだよ!相手の強さが私に興奮と刺激を与え、その強さを打ち砕いた時に初めて生の実感が沸き上がるのだ!人生は戦いだと言う奴もいるが、私はこう言おう!戦いこそが人生だッ!」

メタルは再び両腕をサイラオーグと大牙に突き出すが、大牙の細剣の刀身がチェーン状に伸びて絡み付き、拳の勢いが殺される

動きが止まったメタルの腹にサイラオーグの右拳が突き刺さった

「刺激と興奮を得る為だけに冥界の民を傷付けるような者に――――我が拳は破れんッ!」

サイラオーグは体を回して左の裏拳をメタルの顔面に撃ち込んだ

裏拳の威力で歪むメタルの顔、頭部を覆っている兜は完全に砕け散った

地面を抉りながら転がり、足を震えさせながらも起き上がる

露出した口元を笑ませ、血が流れているにも拘わらず狂い笑う

「最高だ、最高過ぎるぞ!この程度では逆に君達には失礼だったか!ならば、敬意を評して最大レベルで挑むとしよう!この形態になるのは久々だ!装甲強化(アームド・アップ)!レベル?(ファイナル)!」

メタルの全身が異様な雰囲気とオーラを放出させながら震え、徐々に両腕両足、あらゆる場所の筋肉が鎧と共に肥大化していく

口元も鰐の様に突出、攻撃部位の手足に鋭い突起物が隆起する

体躯はサイラオーグと大牙を見下ろせる程――――凡そ10メートルありそうな巨体と化した

「ギュガロロロロロロロロロロロロロォォォォッ!」

人外の咆哮を発するメタルは眼孔を不気味に光らせ、目の前にいるサイラオーグと大牙を見下ろした

「なっ……何なんですか、あれは……!?」

メタルの異常な変貌ぶりにロスヴァイセは驚嘆の言葉を漏らし、祐斗は神風が生み出したブラックウィドーズを思い出す

「先程倒したアドラスと同じだ。彼もブラックウィドーズを体内に取り込んで、姿形が変わっていた……。しかし、これはあまりにも異常過ぎる……!あそこまで禍々しく凶暴な姿に変異させるなんて……!」

ブラックウィドーズの力により『狂暴蜘蛛化(ブラック・ドライブ)』を果たしたメタルは五指を動かし、大きな口を開けて再三哄笑を上げた

「ハハハハハッ!これなら獅子王の君にも満足してもらえるだろう。直にネメアの獅子との禁手(バランス・ブレイカー)も期待出来る。獅子の衣を纏ったサイラオーグ・バアルと是非戦いたい。その為に――――私の攻撃を受けてくれたまえ!」

巨大な拳が空気を抉りながらサイラオーグと大牙に襲い掛かる

大王と蛇神皇は拳に闘気と魔力を集中させ――――今までとは桁違いの拳打を撃ち込んだ

凄まじい衝撃と音が一帯に響き渡り、『狂暴蜘蛛化(ブラック・ドライブ)』したメタルの拳が弾かれる

腕は折れ曲がり、破砕した箇所から血が滴り落ちていく

「俺の拳をナメるな」

「流石はサイラオーグ・バアル。『二代目キング』の競演有りとは言え、獅子の衣を使わずに私の拳を弾き返すとは。だが――――」

ジュウゥゥゥゥゥゥゥ……ッ!

突如鳴る不気味な音

その音がする方角に視線を向けると……先程破壊されたメタルの腕が正常な形を取り戻し、回復していくのが目に入った

この光景を見て全員が驚愕する

完全に治癒されたメタルが自信満々の口調で説明を開始した

「ご覧の通り、これはブラックウィドーズの力だ。以前は最終形態で相手を殴れば、ダメージがフィードバックしてきたのだが……今ではその心配は皆無となった。つまり、力を存分に振る舞う事が出来る上に、いずれ獅子の衣を出させる時が来る!強さは更なる強さを呼び込む!さあ、私にもっと刺激と興奮を与えてくれ!そして悔いを残さない戦いを繰り広げてくれェェェェェェェッ!」

狂喜するメタルは連続の拳打を繰り出し、路面ごとサイラオーグと大牙を痛めつける

凄まじい拳打の豪雨に流石の両者も防戦一方となってしまう

そこへネメアの獅子――――レグルスが叫んだ

『サイラオーグさま!このままでは危険です!私を身に纏ってください!』

メタルの拳打で後方に飛ばされたサイラオーグはレグルスの懇願を了承、大牙も自らの力を底上げさせる手段を取るべく後方に飛び退いた

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