小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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「……なるほど、助けた恩はこうやって返すのが旧魔王派のやり方か……。いや、分かってはいたさ。まあ、充分に協力はしてもらった」

曹操が視線を紙切れから神風に移す

何やら想定外の事態が起きたように見える

そのやり取りの後、ゲオルクは魔方陣を展開して何処かに消えていった

「ゲオルクはホテルの外に出た。俺とジークフリートの入れ替え転移の準備中だ」

「キヒヒッ。じゃあ、次はボクの出番だね〜?」

既に10本以上のカプリンチョを平らげた神風がソファーから立ち上がる

無論、今の新達に連戦など出来る訳が無い

そこへ……今まで動かずにいた『初代キング』が動いた

「キヒヒッ。ようやく動く気になった?『初代キング』。今まで動かなかった理由は大体察しが付くよ。あの『龍喰者(ドラゴン・イーター)』サマエルを出来るだけ早めに引っ込めさせるには、本気でやらなきゃいけなかった――――けど、本気を出したらこの疑似空間ごとグレモリーのお姉さん達まで消しちゃうかもしれない……そう思ったから、手が出せなかったんでしょ?」

「まあ、そーゆー事じゃのう。サマエルの操作は繊細らしいから、ありったけの力を振る舞って操作を中断させてやろうと思っておった。じゃが……それでは皆まで潰しかねない」

「キヒヒッ♪やっぱり今の『初代キング』は昔と違って腑抜けだねぇ。まっ、この疑似空間をブッ壊しちゃったら後々面倒なのは分かるよ。だから、少しだけ本気を出すのはどう?ボクの相手してよ」

神風の挑発に『初代キング』は顎に手を添えて考え、少ししてから頷いた

「……良かろう。貴様には物申したかったトコロじゃ。それにしても……余に向ける牙を持っていたとはのう」

「雑種だろうが血統種だろうが、犬に牙と爪があるのは当然だよ」

そう言って神風は手に小さな魔方陣を展開させ、何かを出現させた

それは何度も見た生物で、おぞましさの塊とも言える代物――――黒後家蜘蛛

赤い砂時計の痣を持つ悪魔以上の悪魔だった……

「キヒヒッ♪ようやく完成したよ。更なる力を与えるブラック・ウィドーズが」

「やれやれ、飼い犬に手を噛まれるドコロじゃなかったのう。仕方あるまい……アレの製造に手を貸したのは余の落ち度じゃ。ここで皆を死なせたら、息子に顔向け出来ん。……久方ぶりに少しだけ本気を出すか」

『初代キング』バジュラ・バロムは人間態から魔人態へと変貌を開始し、京都でグレモリーチームと英雄派を圧倒した――――人型の骸骨ドラゴンが現臨した

左腕の籠手は神風が製作した闇神器(ダークネス・ギア)『怨念の邪眼(ネメシス・サイト)』

その『ネメシスの眼』が開かれ、不気味に辺りを見渡す

「こ、これが『初代キング』……ッ!?姿が変わった途端に重圧が……ッ」

初めて『初代キング』バジュラ・バロムの魔人態を目の当たりにしたリアスと朱乃は戦慄、アザゼルも険しい表情になる

暫くしてから『初代キング』が口を開く

「神風、強がるからには余に対抗する力があると見ても良いんだな?失望させるようなら、影1つすら残さんぞ」

「キヒヒッ。勿論、対抗出来るからクーデターを起こすのさ。昔の『初代キング』でいてくれるなら、強行手段を取らずに済んだんだけどねぇぇぇぇぇ……ッ」

神風は口の端を吊り上げ、手に持っていたブラック・ウィドーズを食べる

小気味良い音を立て、ゴクンと喉を鳴らして飲み込んだ

次第に神風の体からオーラが発生していく

「キヒヒヒヒヒィッ♪さ〜て、本番はこっからだよ」

神風はまず人間態から魔人態に変異、いつもと変わらない3つ首の巨躯形態を見せる

「ではでは、皆さんお待ちかね。見せてあげるよ……ブラック・ウィドーズを使って実現させた――――ボクの超魔身態をねッ!」

超魔身とは、己の力を高めた限りある闇人が成せる強化形態である

新達が今まで見た使用者は……今は亡き『ポーン』の村上京司

『光帝の鎧』を宿す八代渉

そして『二代目キング』蛟大牙はソレを更に昇華させた『超魔鎧身(ちょうまがいしん)』を使う

3つ首の怪物と化した神風の胸に赤い砂時計の痣が浮かび上がり、次第に全身が繭の様な黒い塊に包まれていく

数秒後、繭の至る箇所にヒビが入り……その隙間からドス黒いオーラが徐々に漏れ出てくる

そのオーラに当てられたのか、『初代キング』以外の全員が鳥肌を立てた

ビキ……ッ

ビキ……ッ!

ヒビ割れが広がり、遂に上半分が割れたのを合図に繭が弾け飛ぶ

そこから生まれた神風は異様な存在となっていた

体躯は純白、胸には獣の顔と砂時計型の赤い痣、右腕から鎌の様に鋭利な刃物が隆起、左腕には折り畳まれた弓矢の如き武具が張り付いており、どちらも禍々しいフォルムだった

更に今まで頭部だった獅子とユニコーンは、それぞれ右肩と左肩に移動している

1つだけになった本物の頭部はこれまでの禍々しさとは裏腹に、流線形のフォルムを描いていた

純白の悪魔――――容姿を分かりやすく比喩するならそれぐらいしか思い浮かばないだろう……

「――――どう?これがボクの超魔身だ。カッコイイでしょ?」

「ほう。醜悪な魔人態とは真逆の姿になったのう。まるで赤龍帝や白龍皇の禁手(バランス・ブレイカー)じゃ」

「まぁ『二代目キング』が会得した超魔鎧身みたいにコレもイメージが基となっているからね」

余分な部分を削ぎ落とした神風の全身から、ユラリユラリとオーラが漂う

新達は勿論、曹操すらもその異様さに息を飲む

「……京都で対峙した時とは桁違いのオーラだな」

不気味なオーラが渦巻く中、神風と『初代キング』が構えを取る

「どうせなら一発勝負と行こうじゃない?本気でやっちゃったら疑似空間が壊れるんだし」

「まぁ良かろう」

互いに睨み合い、静寂が場を支配する……

パリンッ!カッ!

オーラに当てられたロビー内のスタンドが割れた音を合図に、『初代キング』と『ビショップ』がその場から消えて膨大な閃光が走った

閃光の強さに目が眩む面々

一瞬目を閉じ、再び開けると――――『初代キング』及び神風は先程と変わらぬ立ち位置で佇んでいた

何が起きたのかサッパリ理解出来ないまま怪訝そうに見ていると……

「――――ッ」

バタッ!

『初代キング』がその場で俯せに倒れ込んだ

あまりにも衝撃的な場面に全員が仰天する……が、僅か数秒で『初代キング』は起き上がって後頭部を擦る

「チッ、してやられたわい」

「キャハハッ、やったね♪」

不満げに舌打ちする『初代キング』と、してやったりと言わんばかりに鼻で笑う神風

そこへルフェイが恐る恐る挙手して尋ねた

「あ、あのー……今いったい何が起こったんでしょうか?サッパリ見えませんでした……」

「ん?何じゃ、知りたいのか?」

「そうだねぇ、早過ぎて分からなかったヒトの為にスーパースロー映像で見せてあげるよ」

神風が空中に画面を出現させ、先程の場面をスローで再生する

まずはお互いに突っ込んで壮絶な殴り及び蹴り合戦

そこで『初代キング』が一瞬体勢を崩し、神風はその隙を突こうとしたが……

「ここで『初代キング』が汚い色の唾を吐いてきたから、思わず攻撃の手を引っ込めちゃったんだ」

「しかしその直後、神風も獣の顔から鼻クソを飛ばしてきた」

映像の中で唾を吐く『初代キング』と鼻クソを飛ばす神風の姿に思わずコケそうになるグレモリーチーム

一時停止された映像が再びスローで動き出す

「次に余は後ろに下がり、女共の乳を揉みながら策を考えた」

「いつの間にそんな事をしたの!?」

「そう言えば、さっきから妙な違和感が残っていますわ……」

「リ、リアスや朱乃さん、アーシア達のおっぱいを揉んだだと……ッ!?許さグフッ」

超高速移動しながら女性陣の乳を揉みしだく『初代キング』を見た殆どの女性が胸を押さえ、一誠は憤る途中で血を吐く

「ボクは一旦ソファーに飛び込んでぇ、寝ながらカプリンチョを食べてたよ。因みに、ここまで掛かった時間は約2秒ね」

ごく僅かな時間でこれだけ多くの行動をした事に驚くが、途中で低レベルな行動をしている事に対しては嘆息する他無い

ようやく続きが再生される

「そこでお互い距離を詰めて――――ボクが最初にジャンケンを仕掛けた」

『最初はグージャンケンポンあっち向いてホイッ!』とノンストップで動き、何故か『初代キング』はつられてしまい、指とは真逆の方角に顔を向ける

その行動は神風の狙いでもあった……

「この一瞬の隙を突いてボクは延髄に蹴りを打ち込んでやったのさ」

「そして、不意を突かれた余は体勢を立て直して元の立ち位置に戻る。と言っても、蹴りが直撃したので少し経った後に倒れてしまったがな」

説明が終わり、一部始終を見せた画像が消える

「――――こんな感じかな?どう、分かった?」

「ハ、ハハッ。なるほど、実に面白かったよ」

曹操が苦笑しながら軽い拍手をする

神風は超魔身を解除して人間態に戻り、首をコキコキと鳴らす

「さ・て・と、そろそろ行こっかな〜。ハーデスの遣いでこれから死神達がワンサカ来るんでしょ?だったら、ボクん所のメンバーも参加させなくちゃね。OKだよね?テロリストの英雄さん♪」

「まあ良いだろう。1つゲームをしよう、ヴァーリチームとグレモリーチーム。もうすぐここにハーデスの命令を受けて、そのオーフィスを回収に死神の一行が到着する。そこに俺の所のジークフリートも参加させよう。キミ達が無事ここから脱出できるかどうかがゲームの肝だ。そのオーフィスがハーデスに奪われたらどうなるか分からない。――――さあ、オーフィスを死守しながらここを抜け出せるかどうか、是非挑戦してみてくれ。俺は二天龍と闇皇に生き残って欲しいが、それを仲間や死神に強制する気は更々無い。襲い来る脅威を乗り越えてこそ、戦う相手に相応しいと思うよ、俺は」

それだけ言い残し、曹操と神風はその場から去っていく

どこまでも挑発的な態度を取る2人に、新と一誠は怒りが止まらなかった

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