小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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≪ミッション開始!≫


脱出作戦開始間近、ホテルの一室の窓から外を見ると、漆黒のローブを着た不気味な雰囲気を醸し出す輩が多数見上げていた

フードを深く被っているので顔は分からないが、ギラリと眼光が殺意と敵意に満ち溢れている

手には悪趣味な装飾が施された鎌を持っており、誰がどの角度から見ても悪役としか思えない

十中八九、死神(グリム・リッパー)……ハーデスが派遣した者達だろう

奴らを退けながら、ゲオルクによって創られた疑似空間を脱出するには3つの方法しか無いらしく、アザゼルがその説明に入る

「3つの方法とは、1つ、術者――――ゲオルクが自ら空間を解除する事。これは京都での戦闘が例だ。2つ、強制的に出入りする。これはルフェイや初代孫悟空と玉龍(ウーロン)がやってのけた事だ。さっきも説明したが、こいつは相当な術者でなければ不可能。ルフェイの場合は現状一度が限界で連れて行けるメンバーも限られる。ルフェイの術での三度目の出入りは無理だ。――――ゲオルクが結界を更に強固にするだろうな。そして、最後は単純明快。術者を倒すか、この結界を支えている中心点を破壊する事だ。アーシアが捕らえられた時イッセーが結界装置を破壊したが、あのように結界の中心となっている装置を壊す」

2つ目の案は採用されるが、脱出するのは外部への助けを呼ぶイリナと護衛役のゼノヴィアとダイアンだけとなる

そして結界の鍵となる部分を破壊すればこの疑似空間は崩壊するが、問題はソレが何処にあるかだ

アーシアの時は彼女と繋がっていた装置が結界を支える中心点だった

ここの装置については、既にルフェイと黒歌が魔法や仙術で探りを入れている

部屋の床にホテルの見取り図を置き、そこに紙で折った鶴を複数置く

瞑目するルフェイが手を見取り図に向けると、折り鶴が動き出し、魔術文字が光って灰が紋様を描いていく

「駐車場に1つ、ホテルの屋上に1つ、ホテル内部の二階ホール会場にも1つ、計3つの結界装置が確認出来ました。それらは蛇……いえ、尾を口にくわえたウロボロスの形の像です」

ルフェイが紙に結界装置のデザインを描き、それをアザゼルに渡す

「壊すべき結界装置はウロボロスの像か。しかも3つ。相当大掛かりだな。この空間はオーフィスを留める為だけに作られた特別な専用フィールドって事だ。本来のオーフィスなら問題は無かった。力が削がれたオーフィスを封じる前提で結界空間を作ったんだろうな。それでルフェイ、装置の首尾はどうだ?死神の数はさっき調べた時より増えているか?」

「はい、総督。どの結界装置にも死神の方々が集結しています。と言うか、既にこの階以外の場所には廊下にまでその方々がいらっしゃってて……。駐車場が一番敵が多いです。曹操様はこの空間から既に離れてますが、代わりにジークフリート様がいらっしゃってますし、ゲオルク様も当然駐車場にいらっしゃいますね」

「駐車場にある装置は、3つある装置の中で一番の機能を発揮しているんだろう。それを直ぐに壊せれば良いんだが……」

「アザゼル、先程話した作戦通りに行きましょう」

リアスの提案にアザゼルが頷く

「ああ、ったく、偉い方法を考えるもんだぜ、お前もよ。イッセー、お前の惚れた女は誰よりもお前を理解しているようだぜ?」

アザゼルが苦笑しながら言い、リアスも自信満々な顔をした

その様子に疑問符を浮かべる新と一誠

訝しげに思う2人に朱乃が耳打ちしてくる

「実は……新さんとイッセーくんの力で屋上と二階のホール会場にある結界装置を、作戦開始と同時に砲撃で壊すと言う作戦を話したんですわ」

「……そうか。どうせ奴らも俺達が駐車場に行くのは読めてる上に、上下2チームに分かれて破壊した後で合流するよりは手早い。装置の周りには死神どもがウジャウジャいる訳だから……一気に消せるって事か!」

「トンでもない事を考えたもんスね!」

一誠がリアスに尊敬の眼差しを送り、アザゼルが一誠の肩に手を置いた

「まあ、確かに凄いんだが、リアスはお前に夢中だから思い付いた作戦だぞ?ソーナの戦術とはまた違う方向だ」

「さて、皆、集まって」

リアスが部屋の中央に集まってくるよう告げる

全員の視線がリアスに集中し、自信満々な笑みを見せたリアスは宣言した

「さあ、私の大事な眷属達。ここをさっさと突破しましょう。その作戦を今から説明するわ! 」



―――――――――



ホテル内、ルフェイの結界に覆われた階層――――その廊下の一角に新と一誠は立っていた

新の横には猫耳モードの小猫が瞑目状態で正座している

近くの部屋には脱出用魔方陣を準備しているルフェイ、イリナ、ゼノヴィア、ダイアンがいた

その部屋の窓際には他の作戦メンバーが集結しており、未だに完治してない黒歌とヴァーリもいた

窓から駐車場の様子が一番広く見下ろせる部屋

ここが作戦のスタート地点となる

新と一誠が共に鎧姿となり、後はルフェイの魔方陣が出来上がるのを待つのみ

目を閉じていた小猫が立ち上がって天井の一角と床の一点を指し示した

「……先輩、そことそこです」

「おう」「了解だ」

頷く新と一誠

それを確認した小猫は部屋に入っていこうとするが、新は小猫の手を引いて止めた

先程は感情を剥き出しにして黒歌の部屋を飛び出した小猫

追い掛けたレイヴェルと口喧嘩したらしく、その後は多少落ち着かせたようだった

レイヴェルとは後腐れ無く言いたい事を言い合える仲、それが大いに役立ったと言えよう

「小猫、確かに黒歌は悪い女だ。仙術に魅入られて力を求め、テロリストに身を置いているアイツが善良な訳が無い。――――だがな、それでもアイツは小猫の姉なんだと思う。野良でイタズラ好きな悪い猫だが……妹を想う気持ちだけは消えていない。何処まで行っても、小猫の姉なんだよ」

「……姉さまのせいで私はツラい目に遭いました」

どんな理由があろうと、悪魔の世界にとって主殺しは大罪

そして小猫は「はぐれ」となった姉の罪を浴びて心が壊れそうになった

ツラくない訳が無い

「……姉さまを恨んでいます。……嫌いです。――――でも、私をさっき助けてくれました」

小猫が強い眼差しを秘めて新に言った

「今だけは信じようと思います。少なくともここを抜け出るまでは」

「――――それで充分だ。もし、これからも黒歌に何か変な事されそうになったら俺に言え。足腰立たなくなるぐらいに懲らしめてやるよ」

新が小猫の頭を撫でると、小猫は新に抱き付いた

「……先輩のおかげで強くなれたんです。先輩のおかげでギャーくんや皆も強くなれた。だから、私も強くなろうと思って……」

「ハハッ、心配すんな。一誠でも強くなれたんだ。素質のあるお前なら直ぐに強くなれるって」

「……大好きです、先輩……。朱乃さんが先にいても、堕天使3人組やゼノヴィア先輩、ロスヴァイセさんが先にいても、必ず追い掛けていきます……。だから――――」

抱き付いたまま小猫は真っ直ぐに新を見上げて――――

「おっきくなったら、お嫁さんにしてください」

「「「「「「えっ!?そこで逆プロポーズしちゃうの!?」」」」」」

「テメェらしっかりと聞き耳立ててんじゃねぇッ!」

小猫の告白、新が驚く前にリアス、アーシア、朱乃、ゼノヴィア、イリナ、レイヴェルが仰天し、一誠に至っては固まっていた

小猫の好意は以前から知っている新

当然答えは決まっていた

「あぁ、必ず追い付いてこい。俺はそういう女が大好きだ」

小猫の告白を受け入れ、新は一旦兜を解除する

そして小猫の額に軽いキスをプレゼントした

途端に小猫は顔を朱色に染め、更なる気合いを入れた

「……まずは牛乳たくさん飲んで、もう少しお乳をおっきくします」

「そっ、そうか。ハハッ、頑張れ」

「――――術式、組み終わりました」

そうこうしている内にルフェイが転移魔方陣を完成させた

ルフェイ、イリナ、ゼノヴィア、ダイアンの足下に円形の光が走り、魔方陣が展開していく

これで4人は外に出られる

小猫が窓際に移動し、いよいよ作戦が開始される

新は固まった一誠を叩き起こし、リアスに視線を向ける

作戦開始の合図とも言える頷きを見て、2人は駒を昇格させる

「『龍昇格(ドラグ・プロモーション)』!『真僧侶(トゥルース・ビショップ)』ッ!」

「『龍牙の僧侶(ウェルシュ・ブラスター・ビショップ)』にプロモーション!」

『Change Fang Blast!!!!』

2人は砲撃形態となり、一誠が上、新が下の指し示された場所に砲口を向ける

「さあ、行こうぜドライグ!当てるべくは結界の装置とその周囲にいる死神だ!一気にぶっ壊していくぞ!」

『応ッ!』

「ド派手に消し飛ばしてやるぜ!」

『クククッ、我が災厄と闇の交わりし力、存分に奮いたまえ』

一誠の両肩の砲身、新のドラゴン型レーザー銃、胸部のドラゴン、キャノンと化した両翼に強大なオーラが溜まっていく

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇええええええっ!ドラゴンブラスタァァァァァァッ!」

「アルティメットパニッシャアァァァァァァァァァッ!」

ズオオオォォォォォォォオオオオッ!

それぞれのキャノンから膨大な魔力が発射され、天井と床に大きな穴が空けられた

瞑目していたルフェイが告げる

「屋上とホールに設置されていた結界装置が破壊されました。周囲にいた死神の方々ごとです!これで残るは駐車場の1つだけ!――――転移の準備も完全に整いました!」

転移の魔方陣が輝きを増してルフェイ達を包み込む

「ゼノヴィア!イリナ!ダイアン!頼むぞ!」

「新!死ぬなよ!」

「必ずこの事を天界と魔王様に伝えてくるから!」

「一誠!派手に魂(ソウル)を燃やしていKE!」

脱出は無事に成功し、アザゼルが光の槍で部屋の大きな窓を破壊した

「よし!これで後はあいつらをぶっ倒して装置も破壊すれば終いだ!行くぞ、お前らっ!」

『はいっ!』

他の皆がそれに呼応して、前衛のアザゼル、リアス、祐斗、朱乃が翼を広げて外へ飛び出していった

窓際に残ったのは後衛の黒歌、ヴァーリ、アーシア、そして黒歌をサポートする為の小猫とレイヴェル

黒歌は魔力で堅牢な防御魔方陣を生み出し、この部屋ごと後衛メンバーを守る

ルフェイの様に階層丸ごと結界で覆うのは無理なようだが、一室ぐらいなら何とかなる

結界を破壊しようと死神の群れが近付くも、結界の破壊に時間が掛かると判断して前衛のメンバーに向かっていった

アーシアは部屋でダメージを受けた仲間に回復のオーラを飛ばす係

オーラで弓矢を作り、回復オーラを矢として放つ

命中率も高く、敵に当たりそうになっても自動的に霧散するように作られていた

小猫とレイヴェルは未だに本調子じゃない黒歌の体を支える

「あら、白音。……助けてくれるの?」

「……私を助けてくれた借りを返すだけです。防御の魔方陣に集中してください。仙術でフォローしますから」

「そっちのお嬢ちゃんはどうしてにゃん?」

「な、何となくですわ!ありがたいと思いなさいな!」

黒歌はそれを聞いてニンマリと笑う

「そ。じゃあ、お言葉に甘えちゃう。……白音、今度仙術だけじゃなくて猫又流の妖術とかを教えてあげちゃおうか?……嫌なら良いけどねん」

黒歌が冗談半分にそう言うが、小猫は真剣な顔で頷く

「……いえ、教えてください。私も仲間を支える為に強くなりたいです。姉さまに頼ってでも私は前に進まないと――――」

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