小説『トリコ 〜 ネルグ街出身の美食屋! 〜』
作者:ラドゥ()

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美食屋、旧知の人間と再会する!

ここは、『美食鉄道』の車内。


今回、この列車には、幻の鯨、『フグ鯨』が産卵のために『洞窟の砂浜』へと向かう美食屋たちで賑わっていた。


そんな列車の中で、酒を探してどこかに行ってしまった連れを探している一人の美食屋がいた。


黒髪の長髪を後ろに縛ったその男。

そう、我らが主人公、美食屋『アキト』である。









アキトサイド


「まったく、どこ行ったんだ、次郎さん…」

今、俺は「酒を補充してくる」と言ったまま帰ってこない次郎さんを迎えに、列車内を探している。


まぁ、俺も「あぁ、原作でトリコたちに酒を貰うシーンか」と、深く考えないで 送り出したが、トリコが列車を降りたはずの駅から二十分が過ぎても、次郎さんは俺たちの座席に帰ってこなかった。

いくら何でも遅すぎるので、俺はこうして次郎さんを探しているというわけである。

まったく、どこに行ったんだか…。



すると、


「お〜、アキト。ここじゃ、ここじゃ!」

そこには、大量の酒を持った次郎さんの姿があった。


俺は次郎さんの座っている席へと近づく。


「まったく、探しましたよ次郎さん」

「へへへ、すまんのアキト。つい我慢できなくてここで飲み始めてしもうたわい」


まったく、本当に飲んべえなんだからこの人は。


俺がため息をついていると、


「アキトさんじゃありませんか!」

「うん?」


後ろから俺を呼ぶ声がしたので振り向くと、そこにいたのは、以前、依頼で顔見知りになったとある男だった。


「トール…?トールじゃないか!」


俺の驚きの声に、目の前の男、『トール』は笑みを浮かべて口を開いた。





「久しぶりですね、アキトさん」



















「こちらは、次郎さん。俺の師匠の一人だ。そして次郎さん。こいつは美食屋のトール。以前とある依頼で一緒になったことがある」


「そうかそうか。弟子がいろいろ世話になっとるようじゃなトール君」


そんな次郎さんの言葉に、しかしトールはガチガチに緊張してなんとか言葉を絞り出す。

「いいいいいえ!こ、こちらこそアキトさんにはお、おお世話になってばかりで!」


「いくらなんでも緊張しすぎだろトール…」

呆れてそう呟く俺を、しかしトールはどこか信じられないような者を見るような目で睨みつけてきた。


「無茶言わないでくださいよアキトさん。あの伝説の美食屋『ノッキングマスター次郎』殿が目の前にいるんです。緊張しないほうがおかしいですよ!」

小声で文句を言うトール。

ちなみに、なぜ小声で話しているかというと、俺たちの会話を他の奴らに聞かれたくないからだ。

伝説の美食屋の次郎さんはもちろんのこと。いまや俺も、自分で言うのもなんだが、かなりの有名人になってしまっているからな。

正体がばれて、あまり騒がれたくない。


さて、ここで皆にもこいつのことを紹介しようか。


こいつの名前は『トール』。

俺がまだ十代の修業時代の時にIGOから依頼された仕事で知りあった美食屋だ。

最初はネルグ街出身の俺に嫌悪の感情を示していたが、仕事で俺が何度か助けているうちに仲良くなり仕事が終わった後でも連絡を取り合い、何度か飲みに行ったりもしている間柄だ。最近は忙しかったのか、連絡なかったけど、まさかこんなところで会うとなあ…。


「そういえばお前最近どうしたんだ?連絡なかったけど…」

俺がそう言うと、トールは申し訳なさそうに頭を掻いた。

「いやあ、申し訳ない。最近は昇格試験で忙しくて…」

「昇格試験とな?」

「ええ。アキトさんには言いましたよね?私がグルメ警察ポリスに入ったって」

そういや、何年前か一緒に飲んだときにそんな話を聞いた記憶があんな…。

「それから私、特別グルメ機動隊に入隊しまして。試験っていうのは、それの隊長への昇格試験のことです。勉強のすえ、なんとかうかることができました」

「へぇー!すげぇじゃねえか!」

グルメ機動隊っていやぁ、IGO法務局長『グラス』の子飼いの部下たちで、グルメ警察の中でも実力が認められた者しかなれないエリート部隊だったはず。それの隊長に抜擢されるなんて凄いことだ。

俺がそう言うと、トールは顔を赤くして頭を掻く。どうやら照れているらしい。


「いやぁ、俺なんかまだまだ。そう言えばお二人の今日の目的は…やっぱりフグ鯨で?」

「ふぉふぉふぉ。まあの」

「というかこの列車に乗ってる時点で目的なんかそれしかないわな」

俺たちの言葉を聞いたトールは、一端周りを見渡して、誰も見てないことを確認すると、声のボリュームを落とした。


「これは極秘情報なのですが、最近謎の存在により、希少なグルメ食材が奪われるという事件が多発しています。IGOの各ビオトープからも。第4ビオトープがらは「陸ウツボ」に「バーガー貝」。第5ビオトープからは「紅サソリ」。そして第8ビオトープからは養殖に成功した「虹の実」が一つ残らず奪われたようです」

「おいおい。IGOの警備はなにやっんだよ…」

「それを破るほどの強者だということです」


そう言ってトールは懐から一枚の写真を取り出す。

そこにいたのは体は人型だが、嘴のようなものがある鳥のような顔をしている。

あの『ニトロ』とそっくりなこいつはまさか!?


「GTロボ…まさか美食會か?」

「おそらくは…」


『美食會』

この世の食材全てを独占しようとするグルメ時代の平和と秩序を乱すテロリストのような集団だ。俺も修行時代、何度か戦闘になった記憶がある。

そいつらが食材を確保するために使う手段としてよく使われるのが、このGTロボなのだ。

て言っても俺が戦ったGTロボはまだ未完成だったみたいでめっちゃ弱かったけど。でもこれは写真ごしでよくわからないがその時のものとなんか違う感じがする。もしかしたら最新型か?

「今回俺がこの列車に乗ったのも、美食會がフグ鯨を狙う可能性があるため、このGTロボを確保するために派遣されたからなのです」

「なるほどね」
美食會製のGTロボなら、IGOの警備が抜かれたのは納得だ。あそこのロボはいろいろ特殊な機能を備えているはずだからな。

「お二人なら出くわしても問題はないと思いますが、もし出くわしたら」

「わかった。とりあえず動けなくして確保すればいんだな?」

「はい、お願いします」

俺の言葉にほっとしたような顔をして頭を下げるトール。

俺は黙ったまま酒をひたすら飲んでいた次郎さんに話しかける。

「次郎さんもそれでいいですね?」

「おお、わしもかまわんよ。うまい酒が飲めればそれだけで充分じゃ」

「それなら、事が運んだ後にマンサム所長にでも請求すればいいでしょう。あの人もあなたに負けず劣らず飲んべえですしね。きっといい酒を持ってるはずです」

「ならそうするかの」


こうして本人の知らぬ間にマンサム所長の酒コレクションが減ることとなったが、マンサム所長は大して気にせずに、新しい同士(飲み仲間)が見つかったことをまず喜んだという。


そして砂浜の洞窟につくまでの間、俺たちは酒を飲みながら思い出話をしたり、次郎さんの武勇伝などを聞きながら時間を過ごした。

もしこの時、美食四天王の『ココ』がこの場にいてトールの顔を見ていたら、彼にこう言っただろう。












「君には『死相しそう』が見える」と………。

-9-
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