小説『都市伝説.com』
作者:海猫()

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 いくら何でもツッコミどころが多過ぎな後日談だ。

 この噂を広めた人間は、斧男に何か恨みでもあるのだろうかと思ってしまう。

 こういうホラー系の都市伝説は、いつだって語り継がれるものだ。いくら不謹慎な内容でも、人の口に戸は立てられないのもわかっている。

 だから、私は彼女たちが噂するのを注意するつもりは無かった。

 彼女たちも、私が注意しないのをわかっているから、こんな話をしたのだろう。教師の中には、くだらないと一蹴する者もいるからだ。

 私は笑みを浮かべて、彼女たちに言う。

「では、そのクラウさんとやらに狙われないように、しばらくは早く帰るようにしなさい。殺人事件など無くても、夜の一人歩きは危険ですから」

「「「はーい。センセー」」」

 良い返事だが、本当に言うことを聞くつもりがあるかどうかはわからない。

 しかし、私は手を振って、彼女たちと別れることにした。




 都内で起こっている陰惨な殺人事件は、黒曜学園の周辺で起こっていた。そのため、黒曜学園でも、生徒たちに早めに帰ることと暗くなってから一人で帰宅しないことと注意が呼びかけられていた。

 八件目の事件が、すぐ近くの私立校の生徒だったこともあり、緊急の生徒総会が開かれた。

 壇上に立って、注意を呼びかけるのは教師ではなく、女生徒だった。

 肩にかかる黒髪に、緑の瞳をした美しい顔立ちの少女だ。輝かしい未来が約束されている世界有数のお嬢様である黒曜(こくよう)翡翠(ひすい)だ。

「バイトなどで、帰宅が遅くなる場合も、保護者に迎えに来てもらうなどして防犯するように。自分は大丈夫などと思わないこと。いつどこで誰が襲われるかもわからないということを忘れないようにしてください」

 翡翠の演説を生徒たちは真面目に聞いていた。

 派手な髪色や服装の生徒が多いが、基本的に育ちが良い生徒ばかりなので、こういう総会の時は、私語などは絶対にない。

 まあ、もし私語でもして、会長の話をさえぎれば、彼女の右腕と有名な黒曜御影(みかげ)に何をされるかわからないという恐怖もあるのだろう。

 実際、総会が終わった後、御影に声をかけられた。

「明留(あくる)先生、少しよろしいですか?」

 人好きのする穏やかな微笑を浮かべた美少年だ。女生徒の間で、よく話題に上る人気の高い生徒だ。

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