第二夜
『完璧を求めるクラウさん』裏章
「……『CLF会』?」
革張りの大きな椅子に座った女生徒が、申請書を見て眉を寄せた。
彼女の視線は、俺ではなく、俺の同行者である黒冴(くろさえ)愛実(めぐみ)に向けられている。それでも、何故か、俺の方が悪い気がして、居心地が悪くなる。
愛実に引き摺られるままに、生徒会室へやって来た俺は、生徒会の面々と顔を合わせる羽目になっていた。
さすがは黒曜(こくよう)学園の生徒会室だ。
部屋は物凄く広く、まるで大会社の社長のような大きな机と、その左右に他の役員用の中くらいの机が置かれている。さらに応接用のソファーとガラス張りの机まである。
何よりすごいのは、会長の机の背後の壁が一面ガラス張りというところだ。
この部屋だけだと、どこかの実業家の社長室のような印象を受ける。
現在、ここにいるのは、生徒会長である黒曜翡翠(ひすい)先輩、副会長と会計を兼任している黒曜御影(みかげ)先輩、書記と庶務を兼任している黒曜碧玉(へきぎょく)先輩、そして、愛実と俺の五人だ。
会長は椅子に座ったまま、眉を寄せて申請書を見つめている。
愛実は笑みを浮かべて、会長の机に手をやった。
「CityLegendFictionの頭文字を取って、『CLF会』です! この高等部で、いっぱい都市伝説を捏造しまくります!」
「申請を却下します」
「あっ! 先輩ひどいっ!」
会長が申請書を放ると、愛実が床に落ちる前にそれをキャッチして、机の上に乗せる。
「認めてくれてもいいじゃないですか! 先輩と私の仲でしょう!」
「高等部でもあなたの面倒を見るつもりはないの。大体、中等部の時だって、都市伝説を作るなんて言って、音楽室に火をつけたこと忘れてないわよ」
「はあ!?」
会長の発言に、思わず俺は声を上げてしまった。愛実は唇を尖らせているだけで、弁解する様子はない。
驚いた俺に、会長が同情的な視線を送ってきた。
「笹塚(ささづか)宝楽(たから)君だったわね。愛実の前科はそれ以外にもあるわよ。今のうちに関わり合いになるのを止めた方がいいわ」
「ちょっと、先輩、それは聞き捨てならないわ! 宝楽は私の手足なんだから!」