読み終わって、俺は眉を寄せた。
「これ、悪趣味過ぎないか?」
この話の内容は、最近騒がれている連続猟奇殺人事件なのは明らかだ。しかも、八件目に至っては、最近起こったばかりだ。
「ってーか、『クラウさん』って変な名前だな」
「都市伝説で人名を出す場合は、ありそうな名前か、ありえない名前なのが、暗黙の了解よ」
はぁ〜、そんなルールがあるんだな。ああいう噂の類は、ルールなんてない無法地帯だと思ったんだが。
「これをね、今度黒曜学園の裏サイトに載せようと思うの。今回の噂は黒曜学園を中心に広めるからこそ、意味があるからね」
今更、愛実が何を考えてるかなんて、理解できないのはわかるが、何で黒曜学園を中心に、何だ?
疑問に思っている俺など無視して、愛実はノートパソコンを起動させていた。
「特に改変するようなところはないわよね?」
「いやいや、どう頑張っても、これ以上悪趣味にはならねえよ」
「さっきから悪趣味ってうるさいのよ」
いだだだ! 耳を引っ張るな!
愛実は宣言通り、黒曜学園の裏サイトに、今の悪趣味な都市伝説をアップしたようだ。
この『完璧を求めるクラウさん』は、リアルタイムで起こっている事件を元にしているせいか、愛実の思惑通りあっという間に広まった。
その数日後、噂が広まりきった頃、俺と愛実は会長に呼び出された。
生徒会室に入ると、すぐに御影先輩が紅茶を用意してくれる。
今回は来客用のソファーに案内されたので、何故か、愛実と並んで座っていた。
俺たちの前には会長が座っていた。その左右に御影先輩とベッキー先輩が立っている。
会長の様子から怒っているようではないと判断する。実際、怒ってはいなかった。
「随分と楽しんで活動してるようね」
「先輩の言う通り、事前にどんな噂を流すか、報告したじゃないですか。先輩、止めなかったし」
「止めたって無駄だって知ってるからよ」
会長に言われて、愛実は唇を尖らせた。
「それで、何の用ですか?」
愛実が拗ねつつも用件を聞くと、会長は頬杖を突いて、こちらを見てきた。
「犯人は学園関係者なの?」
俺は口に付けた紅茶を吹き出しそうになった。
寸前で我慢したんだが、ゲホゲホと咳は止められなかった。