「変な奴」
「……原因は宝楽だと思うけど」
はあ?
俺が首をかしげると、斎姫がおかしそうに笑った。
「宝楽って、意外と性質(タチ)が悪いよね」
どういう意味だ?
結局、斎姫はその疑問に答えてくれなかった。
愛実はそれからすぐに戻って来た。
「ねえ、斎姫、今日も部活行くの?」
「行くけど、何で?」
開口一番そう聞かれて、斎姫が眉を寄せた。俺も愛実が何を考えてるかわからなくて、似たような表情を浮かべる。
「ほら、連続猟奇殺人事件の犯行現場、だんだんこっちに近づいてきてるでしょ。八件目なんてウチの近くの私立校の生徒だったし」
「……もしかして、私の心配してるの? 愛実が?」
嫌われてると自覚しているらしい斎姫が、驚いた声を上げる。俺も愛実は、斎姫を嫌ってると思っていたから、意外だと思った。
知り合いが、そうそう猟奇殺人事件に巻き込まれるとは思えないが、警戒するに越したことはないだろう。
しかし、愛実は腕を組んで、明後日の方向の意見を述べる。
「別にあんたの心配なんてしてないわ。あんたが殺されたら、九人目として都市伝説に加えてあげるわ。
でも、あんたが死ねば、宝楽が悲しむでしょ。だったら、その結果は最悪ってことで認識してあげる」
だから、何で上から目線なんだよ。しかも、俺の親友じゃなけりゃ見捨てるって聞こえるぞ。
「まあ、そういうわけで、家の方向も同じなんだし、一緒に帰ってあげてもいいわよ」
何で斎姫の家を知ってるんだ、こいつ?
実は二人とも仲良いんじゃねえの?
俺の疑問を他所に、斎姫は少し考えてうなずいた。
「そうね。巻き込まれないなんて保障もないんだし、複数で帰った方が安全かもね」
「でしょう。宝楽も一緒だし、いい案だと思うのよね」
だよなぁ。強制的に俺も同行することになるよな。
まあ、こいつらだけにするわけにいかねえし、猟奇殺人事件の被害者は女だけだし、俺がいれば多少の抑止力になるよな。