小説『都市伝説.com』
作者:海猫()

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「だから、警察に捕まってほしくないんです。だって、犯人が逮捕されたら、都市伝説にならないじゃないですか」

 いやいや、そういう問題じゃないだろ?

 何だ、この状況?

 どうしたらいいんだ?

「こういった猟奇的な都市伝説の犯人は、捕まったら終わりなんです。未解決のまま、犯人がいなくなる。それがベストなんですよ。ほら、『ベッド下の斧男』が良い例でしょ」

 ……『ベッド下の斧男』?

 って、まさか……!

「だから、先生をここまで誘導したんですよ」

 ああ、やっぱり。ここにあいつがいることを、知ってやがったな、こいつ!

 そこで、ようやく明留は、気配に気づいたらしい。

 ってーか、息遣いが俺たちのところまで聞こえるってことは、明留にだって、当然聞こえてるよな?

 ずっと近くにいる明留(あくる)は、その恐怖に怯えている。歯をカチカチと鳴らしながら、涙目になって、振り返った。

 その瞬間を狙って、斧を振り上げた大男が、容赦なくそれを振り下ろした。

「ぐぎゃっ!?」

 妙な悲鳴を上げて、明留の頭に斧が減り込む。

 二メートル近くあるスキンヘッドの大男は、シューシューと妙な呼吸音を鳴らしながら、動かなくなった明留の足を掴むと、血に塗(まみ)れた斧を担いで、住宅街を歩いて行った。

 言葉もなく、それを見送った後、俺は愛実に視線を移した。

 まあ、当然ながら、楽しそうに笑っている。

「なあ、愛実……」

「何?」

「あれ、何だ?」

「さっき話したじゃない。『ベッドタウンの斧男』よ」


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「えーっと、実在したのか?」

「偶然、あいつを見つけた時はラッキーだと思ったわ。交渉して、新たな都市伝説になるようにお願いしたの」

「明留はどうなるんだ?」

「さあ? 死体は見つかりさえしなければ、どう処理してもいいって言ってあるし」

 愛実は話しながら歩いていく。まだ混乱している俺も、彼女の後をついて行く。

「どこ行くんだ?」

「もう着くわ」

 そう言って、着いた場所は、先ほど明留を追い詰めたところだった。黒い鞄だけが放置されている。

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