「ん〜? あ! あったあった!」
しゃがんで鞄を漁っていたと思うと、何かを取り出した。
それは鍵だった。
「よかった。身につけてたら、また斧男を捜さないといけないトコだったわ」
まあ、流れから推測するに、明留の部屋の鍵、だよな?
「どうするんだ、それ?」
「どうするって……これから先生の家へ行くのよ」
「何で?」
「先生が行方不明になれば、警察も捜査のために部屋に行くかもしれないでしょ。
そこで、先生のコレクションが見つかったら、『クラウさん』だってバレちゃうじゃない。
だから、先生の家に行って、『クラウさん』に通じそうなものを全部処分しておかなくちゃ」
当たり前でしょ?
愛実は、そんな顔をしていた。
最初に御影先輩に忠告された。
『その程度の覚悟なら、本当に愛実(めぐみ)さんと関わるのは止めた方がいいですよ』
次に兄の忠告に、ベッキー先輩はこう付け加えた。
『ごめんね、宝楽君。でも、みーちゃんは君を心配して、ちょっと厳しいことを言っちゃったんだよ?』
そして、中等部時代からこいつと関わっている会長は言った。
『ねえ、宝楽君。あなたが今、愛実から離れる気がないなら、責任持ってずっとそばにいなさい。
まあ、今回の件はお試し期間ってトコね。『クラウさん』の件が片付いたら、結論を出しなさい』
あの三人は、愛実の異常さを知っている。知っているからこそ、俺に忠告したのだ。後悔しないようにと。
ああ、確かに俺はわかってなかった。
共犯者になれ。
そう言った愛実の真意もわかってなかった。
今ならギリギリで逃げられる。冗談じゃない。ふざけるなと怒鳴って逃げ出すこともできる。
ここで、愛実に協力したら、もう俺は後戻りできない。日常には、戻れない。
そして、俺は決断した。