遅かれ早かれ、二人知り合っていたということだ。
「ここからは、私の推測なんですけど」
碧玉が口元に手をやって言う。
「もしかしたら、愛実ちゃんは、宝楽君が非日常の世界と隣り合わせだってことを知ったのかもしれません。今並べた事件は、愛実ちゃんが関わりたかった事件ですし、調べる中で共通点である宝楽君を見つけたのかもしれません」
だから、何か起こって知り合う前に、さっさと知り合って、最初から事件の渦中にいる位置を確保したと言いたいのだろう。
愛実の人となりを知っている私は、彼女の心の動きが簡単に読めた。
どの道、あの二人が出会った時点で、こういう妙な事件が頻繁(ひんぱん)に起こるのだと確保しなければいけないということだろう。
……私も、あの二人をあまり悪くは言えないんだけどね。
私は、御影と碧玉には黙っていたことがある。それが、この『ベッドタウンの斧男』だ。
本当に、随分とC級ホラーテイストにされてしまった話だ。実際は、ヤクザの拷問などなかったというのに。
二年前――
世間では、『妖精事件』が騒がれている時で、愛実とはようやく個人として認められたぐらいの時だ。
当時の私は中等部三年で、愛実は中等部二年だった。
何かと学園で問題を起こす愛実の面倒を見るようになっていた私は、自然と周りから愛実が何かやらかすと呼び出されるようになっていた。
そして、愛実自身からも、何かやらかすと、私に連絡を入れるようになっていた。
その事件が起きたのは、そんな時だ。
始まりは、愛実からのメールだった。
内容は、緊急事態だから、すぐ家に来て欲しいというものだった。愛実の家を知っていた私は、仕方なくメールの内容通り、彼女の家へ向かった。
愛実の両親は、有名な女優と映画監督で、妹ちゃんたちはデビューしたばかりのアイドルだった。
そのため、愛実は家に一人でいることが多かった。
私が家に行くと、愛実はすぐに自分の部屋に来るように言ってきた。
「どうしたの、愛実?」
「すごいの、捕まえちゃったんです! 早く来てください、先輩!!」
嬉しそうに笑いながら、愛実にズルズルと自分の部屋へと引きずられていく。
「すごいのって、一体何なの?」
眉を寄せた私に構わず、愛実は階段を上がっていった。
そして、ドアが開けっ放しにされていた彼女の部屋を覗いて、私は固まった。
そこには、二メートル近い大きな体をしたスキンヘッドの男が、縄で縛り上げられていた。その男のそばには、赤く錆び付いた斧が転がっている。動いて抵抗されないためか、その大男の上に、男性が座っている。