「お互い、とんでもない子と関わっちゃいましたね」
「そうだな。まあ、後悔する時より楽しいと思う時の方が多いから、タチが悪いんだよな」
神近さんに言われて、なるほどと思う。
確かに、とんでもないことばかりに巻き込まれるけど、どこかで楽しいと思っている自分がいる。だから、愛実とは関わらずにはいられない。
神近さんと別れる頃には、日が傾き、辺りが夕日で赤く染められ始めていた。
一度、学園で戻ってきた時だった。
「翡翠先輩、何をしてるんですか?」
愛実と宝楽君の二人と校門で、ばったり会った。
パタパタと走り寄ってきた愛実が、嬉しそうに言う。
「あ。何か忘れ物ですか? 先輩でも、そんなドジするんですね」
「私だって完璧じゃないわよ」
勘違いさせたままにしておくことにして、私は二人を見つけた。
「そういう二人は、今帰り?」
「これから、繁華街へ行く予定なんです♪」
「生徒会長の前で、堂々と寄り道宣言をするんじゃありません」
私が愛実の頭を軽く叩くと、彼女は唇を尖らせた。
「寄り道っていうか、宝楽に『魔王』を紹介しようと思ったんです」
私は思わず半眼で愛実を見つめてしまった。
「あんた、また何か面倒ごとを起こそうとしてるんじゃないでしょうね?」
「大丈夫ですよ。紹介するだけで、何か起こるわけ無いじゃありませんか」
愛実単体なら納得するけど、不可思議な事件を引き寄せる体質の宝楽君と一緒だと、不安しか浮かばない。
「まあ、面倒ごとは起こさないように、努力しなさいね」
「はーい」
元気良く返事してるけど、怪しいものだわ。
去って行く二人を見送りながら、私はこれから会いに行くという『路地裏の魔王』の都市伝説を思い出していた。