第四夜
『路地裏の魔王』
『路地裏の魔王』
とある繁華街の路地裏で、不良少年たちが、学生服の少年を取り囲んでいた。
小金を稼ぐつもりでカツアゲをしようとしていたのだ。
しかし、少年は怯える様子も無く、不良たちを見上げて問いかけた。
「お前たちは勇者か?」
その質問に不良たちは顔を見合わせた。しかし、妙に思う間もなく、別の誰かが割って入って来た。
「勇者は私だ! 魔王め! その市民を解放しろ!」
妙な口上に、不良たちがそちらを見ると、包丁を握ったサラリーマンが立っていた。向けられた刃の切っ先が自分たちで無く、少年に向けられているのに気付いて、不良たちはその場から逃げた。
その直後、背後から断末魔の声が聞こえてきた。
ギョッとして振り返ると、包丁を持っていたサラリーマンが血溜まりを作って倒れていた。
魔王と呼ばれた少年の手には、血に染まった鉄パイプが握られていた。
少年は不良たちを振り返って、ニヤッと笑った。そして、もう一度問いかける。
「お前たちは、勇者か?」
実は彼らは、ネットゲームに嵌り、現実と虚構の区別が付かなくなってしまった『廃人』で、魔王を名乗る少年は、ゲーム内で勇者狩りをしていた魔王と呼ばれるプレイヤーだった。
現実と虚構の区別が付かなくなった彼らは、今日も繁華街の路地裏で、魔王に勝負を挑む。
魔王もまた立ち向かう勇者を殺していく。
いつまでも終わることの無い戦いに、薄暗い路地裏で断末魔の悲鳴がやむことは無い。