それは留衣なりの宣戦布告だろうか?
そう思ったが、留衣の性格なら、直接文句を言ってくるはずだ。
『あのね、この世界に魔王が現れたの。私は、勇者だから、その魔王を退治しないといけないの。だから、もう普通の生活には戻れない』
「い、いや、ちょっと待て。何を言ってるんだ?」
何だ?
頭の中でガンガンと警告が聞こえる。
おかしい。何だか取り返しの付かない状況になっている気がする。
『頭に声が響くの。魔王を倒せって。だから、私、行かなくちゃ』
「留衣!? 行くってどこにだよ!? おい!? 留衣!?」
クソッ! 電話切られた!
俺は部屋を飛び出した。慌てて階段を駆け下りて、家を飛び出す。
五件隣が留衣の家だ。向かおうとしたときだった。
目の前を何かが通り過ぎた。
壁に突き刺さったそれを見た俺は、血の気が引くのを感じた。
だが、何かを考える暇なんて、くれなかった。
「死ね! 魔王!!」
そんな声と共に、重量のあるものが振り下ろされるような音が聞こえた。
ほとんど、反射だけで避けていた。
地面にめり込んだのは、工事現場とかで見る巨大なハンマーだった。
それが、一分足らずに起こった出来事だ。
地面に尻餅をついた俺は、ハンマーを持つ男を見た。三十代ぐらいのおじさんで、当然面識など無い。
だが、この男、さっき何て言った?
『死ね! 魔王!!』
そう言わなかったか?
また背筋に寒気が走った。
さっき留衣は、何て言った?
魔王を退治しなければいけないとか、言ってなかったか?
魔王?
魔王って……
俺の頭の中にさっきのメールの内容が蘇った。
次のステージ。
そう書いてあった。
まさか、これが、次のステージとか言うつもりか!?