小説『都市伝説.com』
作者:海猫()

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「で、ポチが愛実を追いかけて行った方向は?」

「あ、あっちです。俺も行きます」

 私も慌てて立ち上がった。

「私も行きます! 魔王を倒さないと!」

 私が叫ぶと、男がこちらを見てきた。その目には呆れと、軽蔑のような眼差しが込められている。

「おいおい、これも勇者の妄想に取り憑かれた奴か?」

「妄想なんかじゃないわ! 頭の中に声が聞こえるの! 魔王を殺せ! 世界を救えるのはお前しかいないんだって! 私は選ばれた勇者なのよ!」

 そうよ! 妄想なんかじゃない!

 今も、声ははっきり響いている! 魔王を殺せと叫んでいる!

 こんなのが妄想なんて、信じない! 信じないわ!

 だから、だから……!

「殺さないと! 魔王を殺さないと、私は故郷に帰れない! 美鶴に会えない!」

 魔王を倒せば、魔王を殺せば、私は故郷に帰れる! 美鶴と再会できる! だから、殺さないと……!



 気付けば、私は走り出していた。

 隠し持っていたナイフを取り出して、私は魔王の気配を探った。近くにいる。わかる。魔王はここにいる……!


 耳に響いてきたのは、獣みたいな咆哮。


 そして、現実が私の視界に叩きつけられる。


 斧を振りかざした大男と、鉄パイプで応戦する少年。


 その光景は、どこから見ても、大男の方が魔王みたいだ。でも、頭に響く声は、少年こそが魔王だと訴えてくる。


 美鶴に見える。でも、違う。美鶴が魔王なわけない! だから、あれは偽者よ! そうよ! だから、殺さないと!!


「あ、ああああああああっ!!」


 絶叫して二人の間に割って入った。


 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 殺さないと! 


「……留衣!」


 ナイフを振りかざした私の耳に、その声が聞こえた。

 昔と変わらない優しい茶色の瞳、少し頼りない笑顔、私を呼ぶ声……

 ………………ああ、彼は美鶴だ。私が愛した男の子だ。

「美…鶴……」

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