小説『都市伝説.com』
作者:海猫()

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第一夜
『完璧を求めるクラウさん』



「連続猟奇殺人事件に新たな被害者が現れました。被害者は都内の高等学校に通う十七歳の少女で、背中を刃物でめった刺しにされ、眼球を持ち去られていたとのことです」

 ニュースから流れる陰惨(いんさん)な事件を聞きながら、私は朝食のパンを咀嚼(そしゃく)していた。

 連続猟奇殺人事件。今年の四月から騒がれている事件だ。被害者は十五歳から十八歳の少女で、確かこれで八人目だろう。

 この事件が猟奇殺人だと騒がれているのは、被害者が全員めった刺しにされて、体の一部を持ち去られているということだ。今回は眼球だったが、腕や足とかもあった。

 警察は躍起になって、犯人を捜しているが、証拠も目撃者も無く、すでに暗礁(あんしょう)に乗り上げているらしい。

 そんな陰惨な事件など、頭の片隅に追いやって、私は身支度を整えると部屋を後にした。

 私は私立黒曜(こくよう)学園という学園で教鞭(きょうべん)を取っている。

 世界的に有名な大富豪である黒曜一族の運営する巨大な学園だ。私はそこの高等部で、英語を教えている。

 ひとつの街を飲み込んだような巨大な学園は、その面積も広大で、正門に入ると、生徒の自転車やバイク置場があり、校舎ではなく、地下鉄への入口となっている建物が設置されている。

 教員用の駐車場は別にあるが、私は電車で通勤しているので、生徒と同じく正門から出勤している。

 学園の地下には、最新のリニアシステムが埋設されたリニアカーが設置され、生徒並びに教員は、この地下鉄を利用して、それぞれの校舎へ向かう。

 高等部だけでも約三百人の生徒がいるそうだ。ひとつの学年でも十クラス存在している。いくら教師でも、自分の受け持つクラスぐらいしか生徒の顔を覚えることができない。いや、受け持っていても覚えるのは難しいかもしれない。

 私は担任や副担任として受け持っているクラスはないので、授業でしか生徒と接触する機会が無い。

 教師だけでも七十人以上いるのだ。教師同士も顔見知り程度で、全員の顔を覚えるのは不可能だった。

 それでも否応無しに目立つ生徒は、存在する。

 まずは生徒会役員たちだ。

 通常なら五人編成の生徒会役員だが、今期の役員は三人だけだった。その三人全員が黒曜一族の人間だ。

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