小説『都市伝説.com』
作者:海猫()

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 黒曜(こくよう)一族直系のお嬢様である黒曜翡翠(ひすい)。従姉弟(いとこ)に当たる黒曜御影(みかげ)と黒曜碧玉(へきぎょく)の双子の兄妹。三人とも高等部二年の生徒たちだ。

 高等部では生徒会が全てを取り仕切る。生徒の自主性を尊重するため、教師が生徒会に口を出すことは無い。そのため、現在の高等部は、この三人が取り仕切っていると言っていい。

 高等部で、この三人を知らない者はいないだろう。

 他にも部活動や勉強面で目立つ生徒はいる。しかし、否応無しにというと、生徒会役員の三人が別格だ。

 そして、今年の四月に、新たに目立つ生徒が加わった。

 黒冴(くろさえ)愛実(めぐみ)。一年E組の生徒だ。今年の進学試験で、全科目満点を取った天才だ。去年の進学試験で黒曜翡翠と御影の二人が全科目満点を取っているため、教員のリアクションは低かったが、普通は満点なんて取れるわけが無い。

 天才の集まる黒曜学園でも、特殊に当たる女生徒だ。

 実際、天才にありがちな変わり者だった。

 私は一年E組の英語を担当しているので、黒冴と多少は関わる機会がある。

 彼女が目立つのは、その容姿も原因だった。

 人目を引く美少女。言葉にするのは簡単だ。そこらにいる美少女の比ではない。十人中十人どころか、百人中百人が、彼女を美しいと賞賛すると断言できる。そのぐらいの美少女だ。

 実際、モテるらしく、常に男子生徒に囲まれている姿を目撃している。

 そういう私も、彼女は美しいと思う。異性同性に関係なく、衝撃を与える美貌というのがあるのだと知った。

 しかし、見た目の美しさに反して、中身は変人だった。

 まず授業を一切聞いていない。つまらなそうに外を見ているか、携帯電話かノート型パソコンを弄(いじ)っている。

 私の授業だけかと不安になって、他の教師に相談したが、他の授業でも同じ態度らしい。注意をしても睨まれる。嫌味のつもりで、問題を解かせると、完璧な回答を見せる上に、発音や説明の間違いを指摘される始末。

 たった一ヶ月で、黒冴には関わるなというのが、教師たちの暗黙の了解となっていた。

 そして、最近、その黒冴にもう一人加わった。

 同じ1−Eの笹塚(ささづか)宝楽(たから)という男子生徒だ。

 黒冴と違って、笹塚は極平凡な生徒だ。これと言って目立つ容姿でもなければ、成績も普通。運動も人並みで、それこそクラスの中に埋もれるような平凡な生徒。

 ただ、少しだけ変わっているところがある。

 平凡で平均的な生徒なのだが、クラスメイトの信頼は篤いようだ。皆が気さくに彼に話しかけ、誰とでも仲良くできているようだ。

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